シリアのIS支配下にある地域から投げ込まれ、命を危険に晒すミサイルは、キリス県で大きな緊張を生んでいる。商店の扉は閉まり、住民は子供を学校に行かせなくなった。
国境地帯の街キリスで昨晩、シリア側のIS支配下にある地域からカチューシャロケット砲撃ち込まれ、女性1人が死亡し、弾が当たって負傷していたシリア出身のファドゥル・エミンさん(23)も死亡した。
エミンさんの死により、キリスで1月9日以来、シリアからのロケット砲の爆発による死亡者は17人に上り、そのうち6人はシリア人だ。すべて合わせるとこれまでに58人が命を落とした。街はロケットの脅威に緊張しており、学校からは人がいなくなり、商店はシャッターを閉め、移住の準備を始める市民も出てきている。
■492人のテロリストが死亡
警察の情報筋は、ISに向け放たれた大砲によって、370人のテロリストが死亡したことを発表した。日曜日から月曜日にかけての真夜中1:00頃、 ISの支配地域が連合部隊の攻撃を受けた。これによってISが重大な被害を蒙り、砲床を破壊されたことが明らかになった
軍の情報筋は、トルコ軍が1月9日以降、国境付近のシリア側にあるIS支配地からトルコに行われた攻撃に対しては、同等の報復を行うと述べた。IS支配地域に対し、フルトゥナ砲が集中的に撃ち込まれた。
また、過去三か月半でIS支配地に対し5,330発の大砲を打ち込み、組織の多数の武器庫、宿舎、本部として使っていた建物を破壊したことを明らかにした。
情報網は、この攻撃によって370人のIS構成員が無力化されたと発表した。1月9日から今日までISを標的として167回の空襲を行い、これによって492人のテロリストが死亡したと記録されている。攻撃後、ガーズィアンテプ第5装甲旅団司令部から昨日の朝出発した多数の装甲車が、シリア国境へと送られた。装甲車の一団はIS支配下にあるバブ地域に近い、キリス県エルベイリ郡へ到着した。
■復讐がなされた
アレッポ国境門の北側、トルコへの国境に6キロ、キリスの街へ21キロの地点にあり、砲撃態勢のミサイル発射台があるIS地域が、日中「フルトゥナ」砲の攻撃に見舞われた。
参謀本部の通達によると、集中砲撃が行われた場所にあるミサイル発射台は完全に破壊され、8人のISテロリストが死亡した。警察の情報によると、4月22日のキリスへの攻撃はこのミサイル発射台から行われたという。その攻撃で、マフムト・エムレ・アルスランさん(14)とハティージェ・エブランさん(63)が命を落とした。
■500年の歴史を持つジャーミー、閉鎖
シリア側から昨晩投げ込まれた砲弾が直撃したテッケ・ジャーミーは大きな損害を被った。
敷地内の木々が折れ、墓地が破壊されたジャーミーだが、内部も滅茶苦茶な状態になった。ジャーミーの内部とその敷地は昨日の朝から片付けが始められ、礼拝は行われていない。ジャーミーで調査を行うガーズィアンテプ・ワクフのイーサ・ギュヴェン地区局長とキリス宗務局ムフティーのマフムト・カラテペ氏は、被害状況の確認が始められたことを明らかにした。
カラテペ氏は、爆発はジャーミー内部にも被害を与え、現在安全面のリスクがあると説明し、以下のように語った。
「我々のジャーミーはとても古く、歴史的なものだ。この事件を我々はみな深く悲しんでいる。もともと、近くジャーミーを修復する予定だった。この事件が起こったことで修復をもう少し早めることを決定した。今は被害調査を行っており、ジャーミー内部も破壊されたため礼拝の時も閉じていなければならない。最短期間で修復を終わらせ、礼拝のために再びジャーミーを開きたい」と話した。
■「子供たちは外に出るのを怖がっている」
通りの人気がなくなった街の職員らは、昨日起こった爆発の後片付けに努めた。
攻撃が起きた時はヤルチュン・アクドアン副首相も現地に滞在していたが、攻撃後に不安に駆られた市民らが再び県知事府の前までデモを行った。キリス県は先週の金曜日、街でのすべての活動やデモを1か月間禁止としており、警察は抗議デモを行う人を圧力水と催涙スプレーで散開させた。
ロケット弾のターゲットになるのを恐れる人は家から出ず、小売店のシャッターも下ろしたままだ。シャッターを下ろした小売店は、この問題の一刻も早い解決を願っている。
■学校も人気なく
街で不安に暮らす家族は子供たちを学校に送らなくなった。学校は正式な休みではないにも関わらず、小学校、中学校と高校は空っぽである。登校する生徒もわずかながら見られるが、そうでない生徒たちは恐怖と不安を感じているため、家族の許可を得て学校へ行かないと決めており、「毎日怖い思いをするので学校へ行きたくないと家族に話した、家族も私たちを登校させようとはしなかった」と語った。
街から移住することを考える住民もいる。「キリスは、シリア情勢の悪化前は、静かで落ち着いた安全な街だった。しかし最近の状況によって我々と子供たちは大きな影響を受けている。子供を学校に行かせることが怖い。ドアを閉める音でさえ爆発かと思ってしまう。街から出たいと考えている。子供たちは外に出るのを怖がっているし、仕事はとてもひどい状況にある。国にはこの状況を何とかしてもらいたい。解決策が探し出せないのであれば、すぐに周辺の県に住む親戚を頼って一時的に避難し、キリスに平和が訪れることを我々は遠くから待つだろう」と述べた。彼らは、街で聞こえるすべての音が、また爆発かもしれない、という不安の中で生きているのだ。
■母の死に抗議
先週の金曜日、キリスに落ちたロケット砲によって亡くなった63歳のハテーィジェ・エヴランさんの遺族は、対策が取られていないことに抗議した。爆発の影響により住んでいた家はガラス片と弾丸の欠片が飛び散った状態であり、死亡したハティージェさんの4人の子供の一人、ヴェイセル・エヴランさんはすぐに攻撃が終わることを願い、こう語った。
「母親の死は自分たちを打ちのめしたが、死を防ぐことはできない。ほかの誰にも死んでほしくない。攻撃と死が続いている。もう命が失われることがあってほしくない、誰にも母親を失ってほしくない。みな恐怖で母の弔問にも来ることができない、命の危険があるから外へは出られないと電話をかけてくる。我々をこのような恐怖にさらす権利は誰にもない。」
エヴランさんの娘、ディレキ・エヴランさんもトルコ国旗を手にして「母は殉職した」と述べた。エヴランさんは、皆緊張の中で生活しており、すぐに国の指導者たちにISの攻撃を防ぐために必要な策を取ってもらいたいと述べた。
■エルベイリで5人のISメンバー捕まる
キリスのエルベイリ郡で、ISメンバーとみられる子供3人を連れた5人の外国籍の人物が逮捕された。キリス県が行った発表では、「県警察局によると、我が県のエルベイリ郡で行われた調査で、3人の子供と、衝突地域でIS関係者とみられる大人5人、計8人の外国籍の人物が逮捕された。逮捕された者について、司法と行政の調査が始められた」と述べられた。
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( 翻訳者:内山千尋 )
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