トルコ・イスラエル間の国交正常化をもたらした合意について、イスラエルのメディアはこれをトルコ側の勝利として伝えた。
イスラエルのハアレツ紙は、「6年遅れの合意。イスラエルは同じ条件をマーヴィ・マルマラ号事件のすぐ後に実現できたであろう。トルコは、かつてほどイスラエルを必要としていない。これは極めて必要性の高い合意であった」と報じた。
またイェルサレム・ポスト紙のアリエル・ベン・ソロモン氏は、「今回の合意での勝者はハマスとトルコだ」と分析した。
BBCトルコによると、右派新聞の記者であるソロモン氏は、「イスラエルを直接標的としたテロ攻撃に関与せず、暴力に訴えない政治活動に限っては、イスラエルはトルコにおけるハマスの存在を容認したようにみられる」と述べ、次のように続けた。
「しかしながら、『政治的』なハマスが、イスラエルと外交関係をもつ国においてその存在を認められたことは、このテロ組織をアル・カーイダやISといったスンニー組織と同一視しようとしてきたイスラエルの民衆に対する長年のPR活動の基盤を崩すものだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は2014年の国会演説で、(ハマスを)ISと同一視し、「いくつかの国々が、ISとハマスが同じ根を持つ毒の木の枝であることを理解していないのは自明だ」と述べていた。
■エルドアンにとっての勝利
ソロモン記者は、ワシントンにあるシンクタンク、「民主主義の防衛財団」の研究員ジョナサン・シャンツァー(Jonathan Schanzer)氏がこの合意について、「何一つ本当に変わらないような現状を獲得した」とコメントしたと伝えた。
ソロモン氏は「トルコ領内におけるハマスの軍事活動が禁止された以外は、全てが以前のままだ。ハマスは依然としてトルコ国内の拠点を維持し、トルコはハマスによるガザ地区への支援を継続している、そしてイスラエルはそれをさらに容易にしている」と述べる。同氏はまた、イスラエルがマーヴィ・マルマラ号事件の遺族への何百万ドルもの補償を負担するのと引き換えに、イスラエル将校らへの訴訟取り下げにこぎつけたことを指摘し、「このことを除いては、合意はエルドアンにとって勝利」というシャンツァー氏の言葉を引用した。
■国の名誉が最優先と明言
イスラエルの有力紙『タイムズ・オブ・イスラエル』は合意について、「トルコの外交的勝利」との見出しで報じた。また、情報サイトのYnetは、「降参の条件」と題し、「イスラエル政府がトルコに降参したのは悲しいことだ。ある国に謝罪し、補償金の支払いを受け入れることは、自らの罪を認めることを意味する。トルコとの関係は重要だが、国の名誉も大切だ。エルドアン大統領は、国の名誉が最優先と明言している」と評した。
■野党:「容認できない」
アナドル通信によると、イスラエルの最大野党シオニスト連合のアイザック・ヘルツォーク党首は、マーヴィ・マルマラ号事件の遺族らへの補償金支払いは容認できないものだという。
ヘルツォーク党首は文書発表において、「トルコとの関係を正常化することは重要な政治的目標だが、イスラエル兵を攻撃した者の遺族へ補償金を支払うことは容認できない」と述べた。
■「イスラエルへの侮辱だ」
ネタニヤフ首相率いるリクード党の重要人物で、元閣僚のギデオン・サアル氏は、イスラエルのラジオ番組に出演し、「トルコの活動家が補償金支払いを期待するこの合意は、イスラエルを侮辱するものだ」とコメントした。
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( 翻訳者:今城尚彦 )
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