アタテュルク空港で殺戮を行ったロシア国籍の容疑者らに攻撃の指令を下し、今回の事件を組織した人物が、国際指名手配されていた、「片腕」の異名を持つチェチェン出身のアフメト・チャタイェフ容疑者である可能性が高いことが分かった。アンカラにおける爆発事件以降その名が知られるようになったチャタイェフ容疑者は、国連安全保障理事会の記録によると、130名のIS戦闘員を束ねている。
ロシアのコーカサス地域治安当局は、何年もの間指名手配しその情報を提示していたチャタイェフ容疑者について、「直近では2012年、我々はジョージアの国境地域においてグルジア人監視員によって捕らえられたチャタイェフ容疑者の身柄を要求した。しかしジョージア政府は、テロ犯罪により我々が捜索していたこの人物の引き渡しを拒否する旨を伝えてきた。チャタイェフ容疑者は、我々の情報によれば、コーカサス首長国を主張する勢力のリーダー、ドク・ウマロフ(訳注:故人。チェチェン独立を目指す武装勢力の元指導者)のヨーロッパにおける代理人である」と述べた。
■行く手を追うイスタンブル警察
自爆テロ犯らが滞在していたアクサライのホルホルにある住宅から得られた情報をもとに、イスタンブルにおけるISメンバーの潜伏先を捜索するテロ対策本部が、アフメト・チャタイェフ容疑者を追っている。「片腕」チャタイェフがテロ攻撃の直前に国外に逃亡した可能性もあるとして、国境門の記録が一つ一つ調査されている。
一昨日(6月29日)には、テロ対策本部の隊員らが3人の外国籍保有者を含む13人を逮捕したほか、昨日早朝にはバシャクシェヒルの各地で一斉捜査が行われた。この捜査により、外国籍者11名が逮捕された。これらの容疑者は特にアフメト・チャタイェフと関連して取り調べが行われ、引き出された情報をもとに家宅捜査が継続されれているという。ホルホルにおける自爆テロ犯らの滞在先があった地域のすべての監視カメラとMOBESE安全システムの映像を精査している警察は、アフメト・チャタイェフ容疑者が当該地域を訪れていたかどうかについても調べている。
チェチェン人の間で最も重要とされる指導者の1人、シャミル・バシャエフの生まれ故郷であるヴェデノ村出身のアフメト・チャタイェフ容疑者は、人生の大半において過激派組織に身を置いた。ロシアで収監された2000年代初頭、刑務所にいた際に脱疽化した腕を切断し、「片腕」と呼ばれるようになったチャタイェフ容疑者は、2003年に刑務所からの脱走に成功した。その後チェチェン人であることからロシアで政治的圧力を受けていると訴え、オーストリアで居住許可を取得した。
チャタイェフ容疑者は、2000年代にロシアの刑務所に収監されていた際、脱疽化した腕を切断した。2012年にジョージアの特殊部隊がダゲスタン国境において謎の民兵組織と衝突した。衝突の際に負傷した人物の1人がチャタイェフであった。チャタイェフはこれにより、腕のみならず片足も失った。ジョージアはチャタイェフを釈放したという…
■ブラックリストに掲載
「アフメト・エル・シシャーニー」という名前も使っていたチャタイェフ容疑者は、2014年末にシリアへと渡ったという情報がある一方、イスタンブルへ来て組織(コーカサス首長国)のイスタンブル首長として活動していたとの情報もある。アメリカ財務省は昨年会見を行い、北コーカサス地域においてロシアに対し攻撃を仕掛けた3名(うち2名はIS関係者、また1名はコーカサス首長国関係者)をブラックリストに加えたことを明らかにした。彼らのうち1名が「片腕」アフメト・チャタイェフであった。ロシア側の資料によると、コーカサスで活動しているサラフィー派を謳う団体はカフカス首長国の一員であった。ISがトルコやそのほか多くの国で行ったように、コーカサスにおいてもサラフィー派の動きを確立し、ISと同様の路線を歩む組織の人物を、自らの組織に取り組むことで、片腕自身もまた名前が知られるようになった。短期間のうちに、ISにとっての、コーカサスにおけるもっとも影響力のある人物の1人となったのである。
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( 翻訳者:木全朋恵 )
( 記事ID:40792 )