■チュニジアのヴァージン諸島は数々の民俗的音楽祭を迎える
【チュニジア:サーリフ・ムハンマド・スウィースィー】
夏の間、アラブ諸国や外国から数千人もの旅行者がチュニジアのヴァージン諸島〔訳注:チュニジアの北西沖にあるガリテ諸島のこと〕を目指す。魅力的な自然や、旅行者を迎えて継続的に開催される音楽祭を満喫するためである。
この島々は、かつて逃亡したハンニバルをかくまい、不滅の指導者ファラハート・ハッシャードがフランスの入植者との闘争を始めた場所でもある。それは、ハッシャードが“赤い手”〔ラ・マン・ルージュ〕に暗殺される前のことであり、彼はここにアラブ地域において最も重要な労働者集団を残した。また、ハビーブ・ブルギーバが海路でリビアそしてカイロへと旅立ち、チュニジアの問題を知らせようとする前の長い間隠れていたのもこの島々だった。
この島々は夏の間、数千人が目指す場所になっている。あちこちで音楽祭が行われ、ナツメヤシの木の下で、漁師たちの網の間で、音楽やリズムが広がる。また、「2016年アラブ文化の首都スファックス」〔訳注:スファックスはチュニジア南東部の町〕のプログラムに関連して、この島々で多くのプログラムが行われる。その一つでは大勢の群集が集まり、タブラ〔訳注:アラブの太鼓〕の音によって祝われ、タブラの結婚式と呼ばれる集まりが行われる。
■タブラの結婚式
“アラブ文化の首都”のプログラムにおいて最も中心的な「通り道と訪問地」計画の枠組みの中で、独創性と審美性を組み合わせ、人類的・文明的遺産に深く本源的に根づいた音楽祭が開催された。そこに集まった人々は、数々の芸術作品の展示や展覧会、さらにはこの島々の遺産とそれが人類史に深く関わることを周知させるために全力を注いだプログラムを目にすることになる。
(中略)
中でも数千人の観客を集め、大きな影響があったイベントが、「タブラの結婚式」と題する夕方の集いである。そこではカルカナ諸島〔訳注:チュニジア東部沖の島で、スファックスの対岸に位置する〕やチュニジア南部からやってきた民俗音楽団が民俗的な歌や民衆伝統の曲を披露して、技を競いあった。
カルカナ諸島のタブラには長い物語がある。そこには長い歴史を持つ人々と重みがあり、子どもが大人になる前に覚える数々の物語がある。「カルカナのタブラ打ち」の名は地平を轟かせ、その名声は世界中の国々の多くへと伝わっている。カルカナのタブラは、単に、結婚式や家族や国の集まりで、地域的・伝統的かつ歴史に根ざしたリズムを打ち出し、「ズクラ」(ガイタ)〔訳注:アラブのオーボエ〕の音を伴って幸せや喜びの雰囲気を醸し出すだけのリズム楽器ではない。カルカナのタブラはそれら以上に、すべての「カルカナっ子」の日常生活そのものなのであり、はるか昔からこの地の人々の歴史と生に関わってきた。それは、人間と芸術の間の相思相愛関係を意味するものとなり、その関係の土台を築いている。
(後略)
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( 翻訳者:熊谷真結子 )
( 記事ID:41279 )