■ドルの価格
【ワヒード・アブドゥルマジード】
恣意的な方法によるドル価格の固定化政策をやめた後、エジプトポンドに対するドル価格の高騰が大きな懸念を伴う広範な論議を引き起こすのは、当然のことである。この論議を有益なものにするためには、現在のドル価格はそもそも真の価格なのか、という質問から始めるのがよいだろう。
これは概して、価格の問題における中心的な質問だ。ドルの真の価格、という言葉で意味されるのは、市場に供給されるドルの量に対する需要の大きさが定める実際的な状況のことである。通貨政策を転換した直後に〔実質的な〕ドル価格はほぼ下落したにもかかわらず、現行の経済データ上での価格は、自然にドル価格が下がるようなデータ上の変化が起きるまでの間、真の価格とみなされる。つまり、経済的ではない方法によりドル価格に影響を与える2つの状況からは〔時間的に〕距離がある。その2つとは、市場動向に逆行する中央銀行の介入と、投機の増加であり、この2つはほとんどの場合結びついている。中央銀行が経済状況や市場動向を無視して、現実的ではないドル価格を課したとき、ドルの供給は減少する。そこでドルを持っている人は、貯めこみにかかるか、あるいは、人工的な公定レートと自然な市場価格の差を利用して投機しようとするのだ。
したがって、現行のドル価格は真の価格であるが、現行の経済状況下でドルの供給が増えれば、その価格は限られた程度で下がっていく。一方、ドル価格の大幅な後退が発生すると、この点での具体的な改善が必要となる。商業収支における赤字の実質的な減少が生じるからである。この赤字の減少は、今年9月のような、ひと月やふた月の限られた割合の減少では不十分である。商業収支に関する中央動員統計局(CAPMAS)の最新レポートによれば、当該月の赤字は27.1%の割合で減少したが、赤字は依然として非常に大きな額のままである(2260万エジプトポンド)。
多方向に向かわず、一つの方向性に絞って、大幅で迅速かつ持続的に赤字を減少をさせるために、私たちは経済政策の優先順位をいま一度考え直す必要がある。生産に集中させ、ニューエコノミーやデジタルエコノミーに関連するサービスに関心を向けることで、不活発な人的能力を巨大な生産的エネルギーに変える必要がある。同様に、数十万の零細・小規模事業、数千の中規模事業をカバーする包括的な機関を設置し、こうした方向性と矛盾する事業をすべて見直し、経済が活力を取り戻すまでそれら〔の実施〕を延期することを最優先することが求められるだろう。
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( 翻訳者:増田まい )
( 記事ID:41776 )