新憲法がもたらすもの
2017年04月15日付 Cumhuriyet 紙


トルコは明日(16日)、歴史上最も危険な選挙を行う。憲法改正法案がもし賛成多数になれば、大統領には「国家元首」だけでなく、「最高司令官」、そして政党の「党首」として一度に3つもの肩書が付与されることになる。そして、側近、大臣や官僚を単独で任命することができるようになるのだ。

市民らの投票に委ねられた憲法改正法案は、大統領に「国家元首」、「司令官」、「政党の党首」として、一度に3つもの肩書を付与することになる。大統領は、側近、大臣や官僚らを単独で任命することになる。「中立な立場」というルールの裁判官・検察官高等委員会(HSYK)や憲法裁判所のメンバーらは、完全に自身の側近らを選ぶだろう。国会においても自身が望む過半数に届かなければ、大統領自身とともに再選挙を行う可能性もある。大統領、側近や大臣らが法の裁きを受けることは不可能になるだろう。

■中立な司法の終焉

法案の第1項により、「司法の独立」というルールに対して「司法の中立」というルールも追加される。憲法裁判所の17名という人数は、軍事最高裁判所や軍事高等行政裁判所の廃止により、15名に減数される。そしてこの高等裁判所の15名のメンバーの内、12名を大統領が決定することになる。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)は、裁判官・検察官委員会(HSK)として改正されるだけでなく、メンバー数も22名から15名に減数される。そしてメンバーの内6名を大統領が、7名を国会が決定する。委員長となる法務大臣や法務省の次官は、無条件にメンバーとなる。国会で行われる投票では、5分の3(367票)以上の賛成票が必要となる。公正発展党(AKP)は単独では足りなくても、他の政党に協力を求めて彼らが望むメンバーを選任させることになるだろう。

■独断での非常事態宣言(OHAL)の権限

大統領は、「戦争、または戦争を必要とする事態の発生、動員、反乱、国民や共和国に対する武力行使や活動といった企て、国や国民の一体性を内部、あるいは外部から危険にさらすような深刻な行動の拡大、憲法の規律、あるいは基本的な権利や自由を廃するような広範な暴力活動の出現、暴力事件による公共秩序の深刻な損壊、自然災害、あるいは危機的な伝染病、または深刻な経済危機が発生した場合、国全体、あるいは一部地域においてその期間が6ヶ月を超えない期間」、非常事態(OHAL)を宣言することができる。OHALの決定は、トルコ大国民議会(TBMM)によって承認される。大統領は、非常事態枠内で大統領令を出すことができる。

■決定権と統治

大統領は、行政当局に関する事柄においても大統領令を出すことができるようになる。憲法第2章の第1、第2部に記載されている基本的な権利や人権、そして義務といった項目と、第4部に記載されている政治的な権利と義務、そして憲法で、法律で規定されることが想定されている事項に関しては、大統領令を出すことはできない。大統領令とは異なる条文が法律に記載されている場合は、法律の条文が適用されることになる。TBMMが同じ事案で法律を制定する場合、大統領の決定権は無効となる。そのため、大統領は、大統領令以外にも政令を出すことができるようになるだろう。

■一人で三役

今後選任される大統領は、「国家元首」だけでなく、「最高司令官」、そして政党の党首という肩書を使用できるようになる。大統領は選任後、国会議員選出資格を有する者たちの中から、1人あるいは複数の人間を自身の側近に割り当てることができる。大統領として選任された人物と、大統領の側近や大臣として登用された人物らの国会議員としての資格はなくなる。

■選挙はやり直し可能に

総選挙と大統領選は5年に1度、同時に行われる。大統領は、いかなる基準や条件もなく総選挙のやり直しを決定することができるようになり、その場合は再度2つの選挙が同時に行われることになる。国会が選挙の実施を決定するには、5分の3(367票)以上の賛成票が必要となる。大統領が擁する政党が国会で多数を占めている場合、国会が投票によって決定を下すことは不可能と考えられる。

■不可侵の盾

大統領、側近や大臣らに関して犯罪の疑いが出た場合、TBMM定数の半数(301人)以上による提言により証人喚問の実施を要求できるようになる。証人喚問委員会を設置するためには、5分の3(367票)の賛成、高等法院への移送決定をだすためには3分の2(400票)の賛成が必要となる。高等法院の判決が出れば、15名のメンバーの内12名が大統領によって登用される憲法裁判所において審理が行われる。

■憲法改正後初の選挙は2019年に

憲法改正を問う国民投票が承認され、且つ早期に選挙が予定されていない現状において、初めて同時に行われることになる大統領選と国会の総選挙は2019年11月3日に実現される見込みだ。タイイプ・エルドアン大統領は、再び政党とタッグを組むことになるだろう。さらには、AKPの党首になる可能性さえある。HYSKの選挙も、新たに設けられた基準に則り、30日以内に行われることになるだろう。

■予算案が国会を通過しなければ

予算案は、大統領府から国会に提出される。この予算案が国会を通過しなかった場合、新たな予算案が承認されるまで、前年度の予算案が再検討の割合によって増額されて適用されることになる。

■国会の権限に対する大鎌

国会議員の数が550人から600人に増員される一方、国会議員の被選挙権は25歳から18歳に引き下げられる。国会の権限は、国会の調査や通常国会、国会審議、そして書面による質問によって制限されている。一般質問と口頭による質問は廃止される。首相府が廃止されるため、内閣から法案が提出されることはなくなる。法案は国会議員らによって提出されることになる。しかし、実際には大統領と国会で大多数を占める集団が望まないような法案が提出されることや、それがTBMMを通過することなど不可能だろう。一般質問が廃止されるため、国会議員らが大臣らに関して監査する権限もなくなるだろう。

■15年の大統領任期

大統領の任期は5年となる。1人の人物が最大で2回選任されることが可能となる。しかし、大統領としての2回目の任期中に、国会により選挙のやり直しが決定された場合、大統領も再度候補者となる。大統領の擁する政党が国会で5分の3以上の多数を保持し、2期目の最後の年に国会で選挙が決定されると、任期は15年にまで延びることになる。大統領候補者を出せるのは、国会会派、直近の総選挙で単独、あるいは合同で総有効投票数の5%以上を獲得した政党と、10万人以上の選挙人である。

■新システムは州制度への道を開くか?

省の創設、廃止、任務と権限、組織構造と中央並びに地方組織の創設が大統領府の権限によって規定されることになる。今回の改正は、反対派から「州制度への道を開く」という形で解釈される。さらに大統領は、すべての上級公務員らを単独で任命でき、且つ罷免できる。そしてこれらの任命に関する規則や手順は、大統領府の権限によって改正されることになるだろう。

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:42486 )