エルドアンのスーダン・チュニジア・チャド歴訪にアラブ世界懸念
2017年12月29日付 Cumhuriyet 紙
エルドアン大統領のスーダン・チュニジア・チャド訪問に対し、サウジアラビアを筆頭とするアラブ世界で懸念を生んでいる。トルコのエルサレムに関する政策とオスマン帝国に関する言及についてアラブ世界が懸念を表していることに対し、サウジアラビアを訪問したビナリ・ユルドゥルム首相は問題の鎮静化に努めた。エルドアン大統領のアフリカ諸国訪問の間、スーダンとチュニジアでは抗議運動が発生したが、親政権派のメディアでは取り上げられなかった。
タイイプ・エルドアン大統領のスーダン・チャド・チュニジア訪問は、2014年の大統領就任から数えて5回目のアフリカ訪問だった。エルドアン大統領は12月24日~27日の日程でアフリカ諸国を訪問し、一方同じ時期にビナリ・ユルドゥルム首相はサウジアラビアを訪問した。アラブ世界の庇護者として知られるサウジアラビアへの訪問は、そもそも紅海沿岸地域の問題の鎮静化というエルドアン大統領の狙いが絡んでいる。しかし、このような努力にもかかわらず、アラブ世界では疑問符が尽きない。
エジプトの政権交代以降、アラブ世界とトルコ政府との間では見解の相違が続いており、ここ最近ではエルサレム問題に関連したトルコの政策によって両者に緊張が生まれている。オスマン帝国時代に関する言及に加え、エルドアン大統領は「エルサレムへ行くなら、メディナを守れない。メディナへ行けば、メッカを守れない。メッカへ行けば、カアバ神殿を失ってしまう」と述べ、アラブ地域に対するトルコの関心を表したことで、サウジアラビア政府に大きな不快感を与えたとされている。サウジアラビアなどの湾岸諸国は、トルコとの間で歴史的・宗教的関係ではなく、共通の利益に基づく関係を発展させていくことを望んでいる。
以下は、エルドアン大統領とユルドゥルム大統領の訪問を注視するアラブ世界が、トルコの外交政策に関して表した懸念の言葉である。
■スーダン・アル=バシール大統領へ開かれた扉
アル=バシール大統領がダルフールでムスリムに対して行った大量虐殺政策を、トルコは無視してきた。2008年にイスタンブルで行われたサミットの際、アル=バシール大統領に対して国際刑事裁判所の逮捕命令が出されたのに伴い、トルコは最終段階でアル=バシール大統領に「来ない」ようメッセージを伝え、今年イスラム協力機構でアル=バシール大統領をもてなした。エルドアン大統領はこの度、国際刑事裁判所からトルコに対してアル=バシール大統領の逮捕に関し書類が送られてきたと明らかにし「このようなことはもはや馬鹿げている」としたうえで、トルコが国際司法裁判所のメンバーでないと述べた。しかし、国際刑事裁判所の決定が履行されるよう、国連安全保障理事会は決議を採択し、全ての国家に呼びかけを行った。
■反乱派と撮影
エルドアン大統領はアル=バシール大統領への訪問は、公正発展党(AKP)が長年言及している「反乱派に反対」というスローガンに反していた。なぜならエルドアン大統領は、反乱派と非難してエジプトのシーシ大統領との握手を拒んだにもかかわらず、1989年のクーデター後に政権を掌握したアル=バシール大統領との握手を躊躇わなかったためだ。スーダンの野党は、アル=バシール大統領の政策に反対して、選挙への参加を拒んでいる。
■スーダンで、オスマン帝国へ抗議
エルドアン大統領のスーダン訪問は平穏無事とはいかなかった。スーダンの最大野党として知られる人民国民会議は、オスマン帝国のスーダンにおける政策について、エルドアン大統領の謝罪が必要だとする声明を発した。この声明は、セヴァキン(スアキン)島のトルコへの割譲に関して言及している。
■軍事同盟
スーダン訪問に関してアラブ世界に最も疑問を引き起こしたのは、スーダン・トルコ・カタールの参謀総長らが会談を行ったことだ。エルドアン大統領と同じく、カタール軍司令官も先週アフリカを訪問した。エルドアン大統領は、スーダンがトルコにとってのアフリカの扉となりえると述べたが、スーダンはあらゆる隣国と問題を抱えている。南スーダン、エチオピア、エジプトとの間の問題は知られている。またトルコが南スーダンに軍を派遣しているにもかかわらず、エルドアン大統領が現地を訪問しなかったことは注意を引いた。アラブ世界では、エルドアン大統領のアフリカ訪問は、サウジアラビア包囲網を形成するプロセスだと認識されており、ソマリアとカタールに続きトルコがスーダンのセヴァキン島に軍事基地を建設することが懸念されている。同島はオスマン帝国にとって、同地域の戦略的基地だった。
■エルドアン大統領に対するジャーナリストの抗議運動
チュニジアのジャーナリストらはエルドアン大統領来訪の前日、トルコで囚われている同業のジャーナリストらを支援するという目的で、大統領官邸の前でエルドアン大統領のジャーナリストや報道機関に対する態度に抗議するデモを行った。
■軍事協定
エルドアン大統領はチュニジアとの間でも軍事協定に調印した。防衛面での協力を想定したこの協定では、チュニジアの軍人がトルコで教育を受けることになっており、防衛面での投資がなされる予定だ。
■UAEからトルコ・イランへのメッセージ
アラブ首長国連邦(UAE)のエンヴェル・ガルガシュ外交担当大臣は、トルコ並びにイランに対する厳しいメッセージを発した。ガルダシュ大臣は一昨日Twitterで「アラブ世界は危機的状況に陥っており、その解決は我々を取り囲んでいるこの地域に対する野望に対して協力して抵抗することにかかっている。宗派ごとの運動やパルチザンは選ぶべき選択肢ではない。アラブ世界は、イランやトルコには支配されない」と述べている。この状況で、アラブ地域における地政学的な争いに際して、サウジアラビア・エジプトと同盟を組む重要性について言及した。アラブ連盟を強化するよう主張した。ガルダシュ大臣のこのメッセージが、ビナーリ・ユルドゥルム首相のサウジアラビア訪問と同じ時期に出されたということに注意すべきである。目下UAEとトルコ間の緊張は、カタール危機によって一層増している。さらに、先週UAEのアブドゥッラー・ビン・ザイェド・エル=ナーヤン外相が、メディナの英雄であるファフレディン・パシャについて「盗賊」と述べたことが、トルコで激しい反発を呼んでいる。
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( 翻訳者:神谷亮平 )
( 記事ID:44052 )