アメリカの望みどおりに・・・ーブルンソン事件
2018年10月13日付 Cumhuriyet 紙


トルコ・アメリカ間で外交的・経済的危機を引き起こす原因となった、テロ組織の非メンバーでありながら支援を行い、軍事的スパイを行った罪で懲役35年を求刑されたアメリカ人司祭のアンドリュー・クレイグ・ブルンソン氏の裁判が、第4回目の審議において判決を下された。目撃者が証言を翻したこの裁判では、ブルンソン被告の自宅拘留及び国外への渡航禁止が解除された。3年1ヶ月と15日間の禁固刑が宣告されたブルンソン司祭は、これまで刑務所で過ごした期間を考慮された結果釈放となった。ブルンソン司祭は夜遅くにトルコを離れ、ドイツへ飛び立った。

テロ組織の名の下に犯罪を行い、スパイ行為をした罪で裁判にかけられ約2年にわたり身柄を拘留されていたが、「健康上の問題」により7月25日から自宅拘留に移されていたアメリカ人司祭のアンドリュー・クレイグ・ブルンソン氏が、今日第4回目の審議において判決を下された。

テロ組織の非メンバーでありながら支援を行い、軍事的スパイを行った罪で35年の懲役を求刑されていたブルンソン司祭の裁判は、アリアー収容所内の裁判所で開かれた。ブルンソン司祭はアルサンジャクにある自宅から早朝に移送され、厳重な警備体制のもと裁判所へ連行された。アメリカのジェフェリー・ホヴニール代理公使も傍聴した裁判は、約2時間遅れの11時半から開始された。

裁判前、ブルンソン司祭と妻のノリーンさんは約30分間手を胸に当て、遠くからまるで互いの手を握り合うような仕草をしていた。

■「初めて聞いた」

裁判では最初に、ジョン・ファウラー氏の車でPKKのメンバーを教会で治療したという主張に関し、障害者スポーツのトルコ代表であるブシュラ・ウン選手が証人喚問に立った。ウン選手は、ジョン・ファウラー氏とは車椅子テニス代表チームのコーチであるディアンナ・ファウラー氏の配偶者として知り合ったこと、ブルンソン司祭とは全く面識がなかったこと、本主張の内容も初めて耳にしたことを証言した。ファウラー夫妻が行った教会も、新聞記事を見て知ったと証言した。ブルンソン司祭についても、PKKメンバーとは全く無関係であると強く主張した。

■以前の証言を撤回

前回の審議で検察側の証人として立ち、礼拝所にギュレン派(FETÖ)メンバーが訪れたこと、そしてユルマズ・デミルジャン氏を目撃したと証言したレヴェント・カルカン氏は、今回バルケシルから音声映像通信システム(SEGBİS)を通じて証言を行った。しかし、デミルジャン氏はカルカン氏の証言を偽りであるとし、彼にFETÖに関するいかなる話もしていないこと、そのような人々が家を訪れたこともないと主張した。これを受けて、カルカン氏も以前の証言を撤回した。同じく証言台に立ったヴォルカン・シュレル氏も、「アジト」というコードネームのスィラチ・アカイが「爆弾に関する教育を受けた」ことや「PKKのメンバーである」としたカルカン氏の主張を偽りであると主張した。カルカン氏は、これらの証言を彼から聞いたことであると改めて記憶をたどるとともに、次のように述べた。「面白いことに、私もこれらをレヴェント氏から聞いたのです。レヴェント氏とは、ギョズテペ・スポーツクラブで調理師をしていたときに知り合いました。彼に言われて教会にも行きました。レヴェント氏は私に、『ここにいる人間はテロリストだから、顔を見てはいけない』と言いました。いかなる信仰を持っていようと、私たちは愛国者であることは変わりません。私も生活が圧迫されれば、不満を生み出しかねない人間です。だから彼は私に警告したのです。」自身の主張を再度事実無根であるとされたカルカン氏は、「とても驚いている」と述べるにとどまり、自身の主張を弁護するつもりはないと発言した。

■PKKメンバーであるとの主張を否定

以前、ブルンソン司祭が管理するディリリシ教会の車でPKKメンバーへの支援が行われたと主張した「セルハト」というコードネームの教会員の証言を受けて証人喚問に立ったイェニデン・ドウシュ教会のスティーヴン・チャック司祭は、セルハト氏が両教会から「追放された」と述べた。同司祭は「2017年1月に警察から教会への接近禁止命令が出されていました。彼はその時も、私たちを『後悔することになるだろう。勝つのは私だ』と言って脅迫してきました」と続けて証言した。そしてスルチから流れてきたPKKの戦闘員らが治療を受けたという証言に関しては、いかなる情報も持っていないと述べた。ブルンソン司祭も、セルハト氏が両教会から追放されていたため、(PKKメンバーを治療したという)主張は偽りであると述べた。

■弁護士はすべての罪状を棄却

休憩後、裁判の延期を目的とした検察側によるすべての請求が棄却された。裁判の中断請求、再拘留請求、証言の追加請求及び証人喚問の請求は、裁判所によって却下された。検察は、すでに用意済みであるとして証言を提出した。そして、被告が起訴状に則って処罰されること、しかし自宅拘留及び国外への渡航禁止を含む司法管轄条項は解除されることを要求した。ブルンソン司祭と弁護士は、最終弁論のための準備期間を要求しなかった。イスマイル・ジェム・ハラヴルト弁護士は、全罪状を棄却するとともに改めて無実を主張した。

■「私は無実」

ブルンソン司祭も「私は無実です。私は神を愛しています。トルコがとても好きです」と述べた。オクタイ・タブル裁判長は判決で、ブルンソン司祭を「テロ組織を支援した」罪で懲役5年に処すと言い渡した。その後この刑罰を半減させ、半減させた懲役を増やして3年9ヶ月とした。最終的に審議状況を考慮し、3年1ヶ月と15日間と宣告した。逮捕・拘留期間を鑑みて、国外への渡航禁止並びに自宅拘留の解除が言い渡された。

判決には、当初から主張されていた「スパイ行為」に関する刑罰への言及は含まれなかった。

■弁護士の会見「」

判決についてコメントしたブルンソン司祭の弁護を務めたイスマイル・ジェム・ハラヴルト弁護士は、次のように発言した。「これは山がねずみを生んだようなものです。私のクライアントがこれほど被害を受けることも、トルコがこれほど犠牲を払うことも、そしてこれほど土米関係が緊迫する必要性も全くなかったのです。今回の判決にも納得していません。控訴するつもりです。上訴の権利を使用します。このような制限を受けることなく、そして身柄を拘留されることなく裁判にかけられていたならば、このような危機に発展することもなかったでしょう。」さらにハラヴルト弁護士は、ブルンソン司祭がアメリカに向かう意向であることも話した。

ブルンソン司祭の弁護士は、「電気手錠は外された」と述べた。

■米国防総省「軍用機で移送」

米国防総省が行った会見によると、ブルンソン司祭はアメリカへ軍用機にて移送される予定であるという。アメリカのマイク・ペンス副大統領は、ブルンソン司祭が釈放された後に発信したツイートでトランプ大統領へ感謝を述べた。ペンス副大統領は、「アンドリュー・ブルンソン司祭が家に帰っている!トランプ大統領が見せた力強いリーダーシップと、何百万人ものアメリカ国民の祈りのおかげで、無実で敬虔なこの人物はまもなく家に戻ることになる!」とツイートした。

ロイター通信にコメントを寄せたブルンソン司祭の家族の弁護人の一人、ジェイ・セクロウ弁護士は、ブルンソン司祭が飛行機に乗りアメリカへ変える予定であると伝えた。

ロイター通信にコメントしたセクロウ弁護士は、アメリカのドナルド・トランプ大統領や議会のメンバー、そしてブルンソン司祭釈放のためにトルコへ圧力をかけ続けてくれたリーダーたちへ感謝すると述べた。

セクロウ弁護士は今回の判決について、「ブルンソン司祭とその家族にとって大きな勝利」と評した。

■警察が自宅前で

ブルンソン司祭の自宅前では警察による厳戒態勢が敷かれたため、記者らは記者クラブ前で待機した。

■「これは大きな一歩」

裁判が開始される数時間前、アメリカから新たな声明が発表された。マイク・ポンペオ米国務長官はワシントンにある国防問題ユダヤ人研究所(JINSA)の年次夕食会で行った会見において、トルコで自宅拘留中のアンドリュー・ブルンソン司祭が今日行われる裁判で釈放されることは、トルコが踏み出す歩みとして正しいものとなるだろうと発言した。ポンペオ米国務長官は、「これは必然の歩みだ。トルコが行うべきは、人道的な措置でなければならない…早い段階でブルンソン司祭と彼の妻もアメリカへ戻ってこれるよう願っている」と話した。ブルンソン司祭の釈放が、米土関係にとってどのような意味を持つか質問されたポンペオ米国務長官は、「これは大きな一歩である」と述べた。

■エルドアン大統領「判決は司法が下すもの」

タイイプ・エルドアン大統領はハンガリーから帰国する機内において、記者らの質問に答えた。今日開かれるブルンソン司祭の裁判に関し、エルドアン大統領は以下のように発言した。「トルコ共和国が法治国家であるという理由から、私は司法の判断に介入する立場にはない。私は民主的な共和国であり、法治国家であるトルコ共和国の大統領である。したがって、司法がいかなる判決を下そうと、その決定に従わなければならない。この事件に関わる当事者らも、司法判断に従わざるをえない。つまり、そういうことだ。」

■自宅を訪問

世界中が注目する裁判の開始前、アメリカ側から相次いで声明が発表される中、最終的にはアメリカのジェフェリー・M・ホヴニール在アンカラ大使館代理公使がブルンソン司祭の自宅を訪問した。

ブルンソン司祭の弁護を行うイスマイル・ジェム・ハラヴルト弁護士も、許可を得てブルンソン司祭が拘留されている部屋に入り、裁判で行う請求や弁論内容の準備を行った。裁判にはアメリカから代理人の一団が傍聴に訪れることが予想されており、特に外国人記者らも今回の裁判に関心を寄せていることが注目された。

アメリカ国籍のアンドリュー・クレイグ・ブルンソン司祭の裁判を見守るため、裁判が行われるアリアー収容所を訪れたニューヨーク・キリスト教会の司祭の一人であるウィリアム・デヴリン司祭は、ブルンソン司祭の釈放を待ち望んでいると話した。

■空港へ向かう

午後9時45分、ブルンソン司祭はイズミルの自宅から離れ、アメリカへ向かうために空港へと旅立った。

妻のノーリン・ブルンソンさんとともにアドゥナン・メンデレス空港に到着したブルンソン司祭には、アメリカのジェフェリー・M・ホヴニール在アンカラ大使館代理公使も含む関係者らが護衛についたと伝えられた。

■ブルンソン司祭がトルコを出国

イズミルのアドゥナン・メンデレス空港からプライベートジェット機でトルコを出国したアンドリュー・クレイグ・ブルンソン司祭は、その後ドイツへ向かったと伝えられた。

イスマイル・ジェム・ハラヴルト弁護士は空港で記者らに対し、クライアントのブルンソン司祭がドイツへ向かったこと、そして2日間ドイツで滞在した後にアメリカへ向かう予定であるとの情報を伝えた。

トルコからドイツへ渡ったブルンソン司祭を、ドイツの空港ではリチャード・グレネル在ドイツアメリカ大使が出迎えた。

アメリカへ直行せずにまずはドイツへ向かったブルンソン司祭とその妻を、リチャード・グレネル在ドイツアメリカ大使が出迎えた。ブルンソン司祭は、ドイツで行われた健康状態のチェックで良好と判断され、本日中にもアメリカへ帰国する予定であると伝えられた。ブルンソン司祭はアンドリュー基地へ向かった後、オヴァルオフィスを訪問する予定だ。ソーシャルメディアのアカウントでブルンソン司祭を出迎えたときの写真を公開したグレネル大使は、「トランプ大統領のおかげで彼は帰ることができた。アメリカ国旗をブルンソン司祭に手渡すと、彼はすぐに国旗にキスをした」と伝えた。

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:45544 )