米土関係は深刻な試練のときを迎えている。危機状態は日々深まっている。さらに、双方が頑なに立場を変えようとしない現状では、問題は新たな局面に到達し、且つ他の分野にまで飛び火する可能性がある。最近、相互の見解が相次いでいることは、もちろん偶然ではない。米国側は選挙期間においては沈黙を守り、控えめな評価をするよう気遣いを見せた。そして今、一斉射撃のように非難を強め始めたのである。
二国間で解決が待たれる問題のリストは、非常に長い。その内の一部は適切に管理されない場合、「永続的なダメージ」の原因となりうるだろう。問題のリストを見てみると、ギュレン派(FETÖ)問題については未だ議論が棚上げされている状態だ。他にも最近では全く話題にも上がっていないが、ハルクバンク裁判の問題もある。これらは直接トルコの内政に関わる問題だ。
一方で、両国がシリアに期待することは非対称的で互換性もない。現時点での条件に固執すれば、どちらの期待も両立するようになることはまず不可能だろう。米国がシリア政策をイスラエルの安全保障の文脈上におけるイラン戦略の重要な一部として捉えたことにより、問題はさらに複雑化してしまった。こうしたアプローチは、米国がPKKと取引を継続させるであろうことを示している。しかも、物事の性質上、シリアで秩序を確立させるには長い年月がかかるだろう。もっと言えば、米国が予測する秩序に対してトルコが同意することも、短期間で実現することはほぼ不可能だろう。
ポンペオ米国務長官はトルコのチャヴシュオール外相との会談前に、威嚇的で外交的な傾向にそぐわない形式で書かれた声明を発表した。トルコに対して一方的な軍事行動の件で警告するととともに、このような行動が「破壊的な」結果を招くだろうと述べた。
米国との間に危機を招く可能性のあるもう一つの問題は、トランプ米大統領が制裁措置を行った3カ国に関するものだ。この問題においても、トルコと米国の間には見解の不一致がある。それはイラン、ベネズエラ、ロシアに関してだ。イランへの制裁措置から6ヶ月間の猶予を得ていたトルコの状況は、今後変化していくことになるだろう。今後は米国がどのような態度を取るか、見ていくことになる。また、トルコはベネズエラの問題においても米国とは別のキャンプ地に駐留している。そして、問題リストで最も解決が難しい部分こそ、ロシアとの関係にかかわることだ。
トルコが防空手段の必要性から地対空ミサイルシステムS400をロシアから購入したことは、米国との関係を一段と悪化させたように見える。この事態を受けてペンス米副大統領は、ソーシャルメディアから威嚇的な言葉でトルコにメッセージを発信した。「歴史上、最も成功した同盟の重要なパートナーであり続けたいのか。それとも、NATO同盟を弱体化させる無責任な決定をすることにより、このパートナー関係の安全性を危険にさらすのか。トルコは選択しなければならない。」
この発言に対する返答が先延ばしされることはなかった。オクタイ副大統領は、相互関係の範疇で同様に次のような返答をした。「アメリカも選択しなければならない。トルコとの同盟関係を維持するのか、それともテロ勢力に加担することでNATO同盟国の防衛体制に一撃を加え、この友好関係を危険にさらしたいのか。」
これらの発言は、われわれにとって双方が最も「危機的」と捉え、且つ議論が必要な問題を示しているという観点から重要だ。この構図には入っていないが、激しく且つ「グレー」なこの論争を端の部分から喜んで眺めているのがプーチン大統領だ。本ののど部分から眺めれば、米国を始めとするNATO加盟国らのハイブリッドな争いが一体どういったものなのか、どのような措置が必要なのか、一発も銃弾を打つことなく70年にわたる同盟関係にどのように損害を与えることができるのか、これらをプーチン大統領はよく示している。
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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:46587 )