トルコ、EUの加盟交渉進展レポートに反発
2019年05月29日付 Hurriyet 紙

ファールク・カイマクジュ副外務大臣兼EU常駐代表は、EU委員会の「トルコレポート」に関して、「報告書に記載されている不当でバランスを欠いた批判を受け容れることは出来ない」と述べた。

カイマクジュ氏は、EUの理事会において、今年10月に任期が満了する現在の欧州委員会が2019年拡張案の内容として今日発表した最新の「トルコレポート」に関して、報道陣に見解を述べた。
カイマクジュ氏の主な発言は以下の通りだ。

トルコは、この報告書に記載された、首尾一貫した合理的な批判の数々については注意を払い、改革に貢献する建設的な要素として用いる。しかしながら報告書に記載されている不当でバランスを欠いた批判を受け容れることはできない。

報告書はEU自身の現在の危機を反映している。欧州議会選挙において見受けられたように、ポピュリストの波がヨーロッパの大衆に受け入れられている。
この思想は、EUの諸機関にも流れ込んでいる。創設イデオロギーから遠ざかっている印象を与えるEUは、自身の問題に由来する偏見のために、我が国に残念ながら公平なアプローチを行うことができず、トルコにおける現在の状況を正しく把握することができていない。

トルコの対EU関係は完全加入がその基本にある。トルコがEU加盟の諸条件を満たした時には、加盟できなければならない。

報告書には、トルコはヨーロッパの値観から遠ざかっているという支離滅裂で空虚な記述がある。トルコは全くもって健全だ。トルコはヨーロッパの一部である。トルコはヨーロッパである。

報告書で、テロ組織PKKがEUのテロ組織リストに名を連ねており、フェトフッラー系テロ組織(FETÖ)がトルコからテロ組織とみなされていると今年も強調されているのは重要なことだ。

しかしながら、文書中では概してFETÖがまるで市民組織であるかのように、「ギュレン運動」と呼称されているのは認めることができない。ギュレン運動のいかにも卑劣で、いかにも悩ましく倫理を欠いた、テロやクーデターに至る活動を、よりしっかりと認識し始めたところだ。よって、EU委員会がこの問題についてさらに毅然とした文面を作成することを我々は期待していた。

■「トルコはプロセスを順守している国だ」

ヨーロッパが直面した試練や拡大の問題は、EUにとってその重要性をもう一度明るみにしたものだ。加盟国間で見解の一致がないにも関わらず、拡大戦略を重視していることに満足している。

トルコは、委員会が北マケドニアとアルバニアの加盟交渉の一刻も早い開始に向けて、再度見解を表明したことを大変嬉しく思う。

同時に、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで実現した前向きな進展と並行して、我々は一刻も早く正式な加盟候補国とし宣言されることを支持する。

より安全で、より繁栄した力強いEUのために、拡大戦略が重要な役割を負っている。トルコがこの意味で大きな重要性を持つ国だ。

トルコは、加盟交渉においてEUから妨害を受け、それにも関わらずプロセスを順守している国だ。EUをヨーロッパの価値とトルコから遠ざけようとするポピュリストの動きがいくつかある。EUでこのような傾向が重んじられてはならない。

交渉プロセスにおいて政治的妨害がなかったら、今日のトルコは容易に25から30の題目について検討を開始し、終わらせることができるだろう。トルコには力ある民間部門と組織があり、さらに市民意識も成熟している。

キプロスとギリシアに関するEUの偏った不当なスタンスは、トルコから見れば特に意味のないことであり、報告書にある南キプロス共和国(GKRY)とギリシアの理論を擁護するいう主張は、トルコが受け入れることができないものだ。

EUのいかなる加盟国にも、第三国と共に国境を定める権利や権威はない。南キプロス共和国もしくはギリシアが求めたからといって、いかなる国の国境もEUによって定まることなどない。

トルコはキプロスと東エーゲ海の問題について、国際法を順守して行動している。EUも良識ある態度をとらなければならない。

キプロス問題の解決なしに、南キプロス共和国がEUに加入するのは大きな間違いだ。EUがこの問題で建設的に振舞いたいのなら、加盟諸国にもそうするよう働きかけるべきだ。

■「EUは、トルコが直面している脅威を理解しているとは程遠い」

とりわけ政治的クライテリア(一連の基準)ならびに司法と基本的権利に関する箇所が、報告書の明確な枠組みの主張を反映したもの以上のものではない。トルコは、直面している全脅威にも関わらず、自由と治安の均衡を保つために、甚大な努力を重ねてきたし、いまも努力している。

トルコは、この治安対策を国際法に則って講じている。EUは、我が国が直面している脅威の存在を認めているが、その脅威の規模と講じられた対策がどれほど必要なものであったという理解からは程遠く見受けられる。

トルコが民主主義の秩序を、法治国家を、国民の基本的人権と自由、そして平和を維持するために行った闘争を批判するのではなく、ヨーロッパの同盟国がトルコを支援することを期待する。トルコは加盟プロセスとは関係なく、前進していく決意だ。

司法権をはじめとして全政府機関に蔓延し、法治国家と官僚制度の観点から大きな脅威を作り出す卑劣なFETÖテロ組織に対してトルコが行った闘争が理解されることは、これほど困難なものであってはならない。

報告書の中で、効果的な国内法の手段という戒厳令法(OHAL)審議会の性質を貶める、根拠のない解釈をしているのは、欧州人権委員会の見解に反するものだ。

「忘れられてはならないことだが、2017年6月12日のキョクサル・トルコ訴訟の判決において欧州人権裁判所は、OHAL審議会を効力を持つ国内法の手段として認めたのだ。

■「高等選挙委員会(YSK)の決定に敬意を払わなければならない」

報告書においてOHALが解除された後の政治改革プロセスに向けたトルコの重要な歩みと改革における意思について、十分強調されなかったことは褒められた態度ではない。これについては明日、司法改革戦略が発表されるだろう。その後に、準備が最終段階に入った人権活動計画も発表する。

司法改革戦略の最初の一手として、トルコ公正アカデミーの再建、裁判官と検察官へ対するトルコ司法倫理通達の公開、人権保障委員会の担当分野の拡大といった多くの重要な改革が行われた。

よって、我々が司法の機能、表現の自由、そして不正行為との闘いの分野でもたらされた偏った批判を受け入れることはない。私が列挙した事柄は、我が国がOHALが解除された直後に、忌まわしい3つのテロ組織と戦いながら、どれほど力強い形で改革の議題に取り組んだのかを示すものだ。しかしながら、我が国の力強い意志は、私たちが望んだ形で報告書に反映されていない。これは欧州委員会が西ヨーロッパのポピュリストの波からどれほど影響を受けたのかということを示している。

トルコ国民の意思によって施行に入った大統領制が、まだ二年にも満たない中、更にその適用プロセスが完全には観察されないまま批判を受けたのは、偏見のあるスタンスである。この姿勢は、トルコ人有権者の意思に対する敬意を反映しないものだ。

大統領には、基本的権利、自由、そして法で定められた事柄に触れる権限はない。また、新たな制度では、旧制度とは異なり、大統領が責任を問われる立場になる。

報告書には、(昨年)6月24日の大統領選挙と国会議員総選挙、そして今年3月31日の地方総選挙に関する事柄もいくつか記載されていた。
これらの選挙が高い投票率で行われたことを強調したい。

3月31日の統一地方選挙に対する批判を、民主的な選挙の伝統が根付いているトルコとしては認めることができない。3月31日の統一地方選挙は欧州地方自治体会議による監視下にあり、派遣された委員はYSKの有能さに感銘をうけたと語っていた。
法の優位を信じる者は全員、YSKの決定に敬意を表しなければならない。

■「トルコの東エーゲ海における活動は、法的権利に基づいている」

報告書では移民問題も取り上げられている。EUは合計60億ユーロ(3+3)を支出するとしているが、我々が期待していた迅速さと柔軟性を示せていない。トルコが今日までに移民危機に費やした費用は、少なくとも370億ドルと見られている。

EUは「加盟国の結束」の名の元に、国際法と原則に反するアプローチをとっており、これはEUの弱体化と名誉失墜の原因となるだろう。EUのキプロス問題に関しての評価においても、島における現実を注視し、解決を促す役割を果たし、2国間の問題をEUの問題にすり替えないことが、何よりもまず自身の独立性、一貫性、そして信頼性の観点から必要だろう。

しかしながら、EUは南キプロス共和国が行ったことにはまるで見ないふりをして、報告書にはトルコの東エーゲ海における炭化水素探索活動を批判する表現が含まれてた。

東エーゲ海におけるトルコの炭化水素資源に関する活動は、国際法に基づく法的権利に基づいたものだ。地域で最長の海岸線を有する国として、我々は自国の大陸棚における権利と利益も、また北キプロストルコ共和国のキプロス島周辺における主権も守る。私たちはこのために必要なありとあらゆる手段を講じることに今日まで臆することはなかったし、今後もそうだろう。トルコは、島に住む両者の政治的平等と、二つの地域性を基本とした恒久的解決を望んでいる。
ギリシアの論理に基づいた一方的な見方はキプロス問題の解決に寄与しない上に、東エーゲの安定にも危険を及ぼしかねない。EUは二者間の問題をEUに持ち込むという重要な過ちを犯してしまった。この過ちが、他の数々の問題にも道を開いている。

トルコ政府が表明した財政緊縮政策が功を奏し、市場に再び信用を確立することができた。報告書の経済クライテリアには、トルコが関係していないものがいくつかある。

報告書では、トルコ経済のEU圏内での競争圧力と市場原理におけるキャパシティは高いレベルにあると強調されている。しかしながらトルコが前年に行った幾つかの臨時政策と予防策は、市場経済のクライテリアの観点から批判された。

我が国は商業と投資の観点から、EU市場とはかなり高いレベルで一体となっている。このため、トルコはEUで起こる経済問題と世界市場の影響をそれぞれ被っている。

■「交渉が開始されないことへの説明がない」

トルコが加盟プロセスにおいて直面した政治的な妨害の数々にも関わらず、我々にはEUのアキ・コミュール(法の総体系)に適応する努力を継続するという決意がある。

自らを共通の価値の上に結成された規範パワーであると主張するEUだが、トルコとの交渉において23章の司法権と基本権ならびに24章の司法、自由、安全条項についての交渉開始については説明がない。似たような形で、EUが一方で関税同盟の更新プロセスを妨害し、その一方で関税同盟と直接関係する30章の外交関係について、関税同盟のために後退があると主張しているのはまったく不当な行為だ。我が国は20-25 年間、加盟国ではなく、不均衡があるにも関わらず、EUとの関税同盟の適用し続けている。ヨーロッパの友好国に、この件について良識的、理性的に思考し、双方ともに利益がある関税同盟の更新交渉プロセスを開始するよう呼び掛けたい。

2019年の拡大パケットと、とりわけトルコ報告書における最も明らかな欠落は、このプロセスにおけるEUの責任と公約が明記されていないことだ。トルコ-EU関係における困難が乗り越えられることは、ただトルコとEUにとってではなく、私たちの地域、国際体制と国際平和の観点からも重要な意味をもつだろう。

欧州議会選挙に関しては、1979年以来行われた各選挙の投票率は低いが、直近の選挙における投票率は50%を超えた。

新たなヨーロッパ議会に対して私たちが期待することは、均衡のとれたトルコ-EU共同議会が作られ、外交委員会によってトルコの公平性が評価されることで、これらは私たちにとって非常に重要である。

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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:46867 )