国連の超法規的・恣意的処刑に関する特別報告者のアニエス・カラマール氏は、サウジアラビアの新聞記者のジェマル・カシュクチュ氏殺害事件に関し報告書を作成し、その中で「カシュクチュ氏は、国際法に依ればサウジアラビアに責任があり、意図的に(計画されて)実行された超法規的な暗殺の犠牲者である」という表現を用いた。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR) 国連広報センターは、今日、101ページに及ぶ報告書を発表し、「国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)は、カシュクチュ氏の殺害に関する犯罪を決着すべき捜査を開始しなければならない」という評価を行った。
報告書では、いかなる国に対しても直ちに(国連)事務総長が殺人事件に関する国際的な捜査を開始することが出来ると強調し、国連人権委員会に対して、カシュクチュ氏の殺人事件の結果と、総じて民間人が国外において標的とされる事に関して「Arria-Formula会議」(国連安全保障理事会の非公式集会)の会合が開催されて一同に会すよう呼びかけが行われた。
報告書は、国連人権委員会もしくは国連事務総長に対しても、新聞記者と人権擁護活動者が計画的に殺害されることに関し罰則調査を行うことが出来るメカニズムが構築される必要があると呼びかけた。
■カシュクチュ氏の家族に対して賠償を
また、サウジアラビアの当局者に対して、カシュクチュ氏の家族に公に謝罪をするよう呼びかけ、「説明責任とは、サウジアラビア政府が暗殺実行上の責任を負っていることを認める必要がある。これは同時に政府がカシュクチュ氏の家族に対して賠償金を支払う必要があるという事も含んでいる」という表現が用いた。
■「サウジアラビアはトルコ政府に対して謝罪をしなければならない」
報告書では、「サウジアラビアは、外交特権の乱用と自国以外の領土で権力を行使して法律を侵害したことにより、トルコ政府に謝罪をしなければならない」 という表現が用いられた。国連は、報告書で、サウジアラビアはさらにカシュクチュ氏が暮らしたアメリカ合衆国に対しても謝罪すべきと誘った。
国連は、カシュクチュ氏の殺人事件に関する報告書の中で、サウジアラビアで囚われの身となっていて、平和裡に自身の見解と信条を表明した人々が解放され、暴行、殺害にいたる力の行使及び行方不明になった人物に関する訴えが第三者により調査が行われるよう、サウジアラビアに対して呼びかけた。
報告書は、カシュクチュ氏殺害のアクター、組織、暗殺を可能とした諸条件が詳細に調査される必要があると強調し、「サウジアラビアは、再発防止を確かとするため公的な報告書を作成して、必要とされる改革を明らかにしなければならない」とした。また、この件で国連の関連する諸組織がサウジアラビアの責任者に対して協力が可能と提案した。
報告書ではサウジアラビアにおける訴追が不十分であるということに言及し、「サウジアラビアは現行の裁判を休止すべきである。国連が進める別の犯罪捜査に協力し、将来必要になるであろう訴追の場所と仕組みの件で下された決定が実行されなければならい」と表現された。
■カシュクチュ通り
カシュクチュ氏に関する報告書では、トルコに対し国連事務総長が真相究明調査を開始するために国連が公式の要請を行わなければならないという呼びかけられた。
報告書では、トルコに対してサウジアラビアのイスタンブル総領事館前に報道の自由を象徴する像を建立するよう呼びかけ、この代替案として総領事館のある通りの名前を「カシュクチュ通り」という形に変えるよう述べられた。
■「FBIは調査を開始しなければならない」
報告書はカシュクチュ氏の殺人事件の調査に関してアメリカ合衆国に対しても呼びかけを行い、「アメリカ合衆国はまだ開始していないのであれば、カシュクチュ氏の殺人事件に関しFBIの調査を開始しなければならず、もしそれが適当であるならばアメリカ国内の罰則を適用しなければならない」と表現した。
報告書では、「アメリカ合衆国は、2016年のグローバル・マグニツキー法に照らし合わせて、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の(殺人事件に対しての)責任の有無に関し決定を行わなければならず、この決定にどのように至ったのかということに関し情報を開示しなければならない」という呼びかけが行われた。
■サルマン皇太子への制裁
報告書では、他の国々に対し、カシュクチュ氏殺人事件の件で説明責任が担保されるために必要な全ての国際的な見解、呼びかけ、決定を支援するよう呼びかけた。
また、諸加盟国がカシュクチュ氏殺害に関与していたと訴えられている人物たちに対して制裁を実施し、その制裁にはサウジアラビアのサルマン皇太子も含む必要があるとして、「カシュクチュ氏の殺害事件に関する制裁はサルマン皇太子と彼の国外の個人財産も含む必要がある」と述べられた。
報告書では、諸加盟国に対してはまた、とりわけ開発が進んだ数々の監視装置の輸出、販売、改造、使用、サービス提供の問題で、人権に適う管理体制が実施されるまでサウジアラビア及びその他の政府に対して直ちに提供休止しなければならない、と警告がなされた。
■国際企業に対して呼びかけ
報告書では、国際企業にもカチュク氏の殺人事件に間接的、もしくは直接的な関係を持っていた人物と組織と仕事をすることを避けるよう要求された。
世界経済フォーラムの年次総会において毎年開催されるダボス会議においてジャマル・カショギ氏とその他の殺人事件で犠牲となった新聞記者の名前を冠したパネル・セッションの提案が行われた。
■「カチュク氏殺害はサウジアラビアに責任がある」
報告書ではまた、「カチュク氏の殺害は、サウジアラビアが責任を負う司法を無視した行為である。カシュクチュ氏を誘拐しようとしたことも国際人権法によれば、その侵害にあたる」という表現が用いられた。
「カシュクチュ氏は、国際法によればサウジアラビアに責任があり、意図的に(計画を立てて)行われた不法な刑の執行の犠牲者となった」と述べられた報告書では政府の責任も示唆された。
報告書では、国際法の観点から、カシュクチュ氏殺害がどの政府の高官の命令によるものなのか、誘拐に際し一人もしくはそれ以上の企図者がいたのかどうか、カシュクチュ氏が偶発的に殺害されたのかどうか、その高官たちが彼ら自身のイニシアティブによって動いたのかどうか、各コネクションと見なくとも、ある政府の責任が存在している、と強調された。
カシュクチュ氏殺害と領事館の関与に関して、ウイーン協定、及び平和時に自国領の外で権力の行使を禁ずる国連の条件を侵害するとして、「サウジアラビアは、新聞記者を殺害し、国連の基本原則のひとつである表現の自由を守るという原則に反する行為を行った」と論評した。
カシュクチュ氏殺害の諸条件が、サウジアラビアが承認している「拷問に対する合意」条項に照らして、拷問行為に当たり、カシュクチュ氏の遺体を未だに発見できていないことも、強制的な抹消に当たるとした。
報告書では、「特別報告者は、カショギ皇太子も含めサウジアラビアの上級責任者の個人責任もより一層調べるに値する、信頼できる証拠があることを確認した」という表現を用いた。
サウジアラビアの責任者達が殺人事件に関してイスタンブルで行った調査に関して特別報告者のカラマール氏に報告がなかったと訴え、 サウジアラビア関係者が行った発表で言及した何人かの人物及び訴追された11人の身元が一致しなかったと述べられた。また、「サウジアラビア関係者が未だにカシュクチュ氏の遺体がどこにあるのかということを明らかにしていない」と論評した。
報告書では、「カシュクチュ氏殺害に関する調査でサウジアラビアがトルコ当局と協力することは国際的な義務である」という表現が用いられた。
カラマール氏の報告書では、「特別報告者が、事件現場が完全に、更には司法解剖のような形で清掃されたという信頼に足る証拠が見つかった。これらは、サウジアラビアの調査が良識的に施行されず、このことが公正[な調査]を妨げているという意味になるという事を示している」という見解が示された。
報告書では、国外で生活をしている反体制派の状況に関連して、「居住していたりもしくは亡命をしている国々は、人権に敬意を払い、彼らを逃亡国からの暴力から守らなければならない」と書かれた。
報告書は、サウジアラビアが殺人事件に関する捜査と補償といった問題で政府の責任を取り上げる点で躊躇いがあったとし、こうした措置が国際法の要件を満たしていないとした。
特別報告者が、サウジアラビアで11名の容疑者が訴追されたことに関し不安を覚えて、審理の休止を求めたとし、サウジアラビア政府がカシュクチュ氏殺害の問題でその責任を世論に伝える点で失敗に終わっていると強調された。
報告書は、サウジアラビアがカシュクチュ氏の家族、友人、同僚たちにカシュクチュ氏の死と殺害の形に関して謝罪を行わなかったと強調し、「特別報告者は、ジェマル・カシュクチュ氏の子供たちに対して金銭的な和解の提案があったとの情報を手にしたが、この提案が国際人権法に照らし合わせて[妥当な]補償額に当たるのか否かということは疑い深い」という表現を用いた。
また、サウジアラビア国王サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズの諜報機関が再構築されることに関する発表が十分でないとし、サウジアラビアに期待されたのは、様々な見解や信条を平和裡に表現するも囚われの身となった人々が釈放されること、暴行と死に至らしめる暴力が行使されたことが公的または非公式の場で調査されること、故意に抹消された人々に関するあらゆる訴えを取り上げて調査を行い、行方不明になった人物がどこにいるのかということを社会に伝えるということ、であったと強調した。
報告書では、「特別報告者は、カシュクチュ氏の殺害が諸政府の普遍的な司法権[の動員]を要する国際的な犯罪であると信じている」という表現が用いられた。
報告書は、カシュクチュ氏の殺人事件に関して司法過程が信頼できるものではないと強調し、「サウジアラビアで施行されている司法が信頼できる説明責任のありどころを提示するものではない」と評価した。
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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:46997 )