アメリカで、アルメニア人らが、1915年の事件の時期に関して家族を代表して賠償と土地の返還を求め起こしていた裁判で、カリフォルニア州控訴裁判所は、訴えを退けた。
アルメニア系アメリカ人のガルビス・ダヴォヤン氏とハライル・ トゥラビアン氏によって2010年7月29日に、アレックス・バカリアン氏、アナイス・ハルトゥニアン氏、リタ・マフデシアン氏によって2010年12月10日に、それぞれカリフォルニア州行政裁判所でトルコ共和国政府と中央銀行、農業銀行に対して開かれていた2つの損害賠償請求訴訟は、控訴裁判所で棄却された。
アメリカの裁判所で9年続くことになった裁判を起こしたアルメニア系アメリカ人らは、オスマン帝国によって1915年の事件の際に家族の資産と土地が奪われたこと、国庫と政府系銀行が不当な利益を得たことを訴えていた。この2つの訴訟では、国際法と人権に対する侵害の観点から、子孫が被った損害の賠償が求められていた。
トルコ側の銀行によって行われた弁論は、主権免除の原則に基づいて行われた。弁論では、アメリカの法律システムにある1976年の「外国主権免除法」により、裁くことはできないと主張された。原告側は、この法律の収用および貿易活動に関する特別条項が適用されるべきであり、これによって外国の政府や銀行に対する訴訟も可能であると主張した。
■9年を経てトルコの正しさが証明
カリフォルニア州行政裁判所は、2013年3月に下した判決で、要約すると、原告の訴えは裁判の事案には該当しないとし、本質的に政治的問題であるという結論に達していた。しかし、トルコに利するこの判決は、離散アルメニア人たちを止めることはなかった。
アメリカのアルメニア人らの弁護士は、この判決を、2013年4月に控訴裁判所に控訴した。カリフォルニア州第9控訴裁判所は、2つの訴訟を1つにまとめた。トルコを代表して外務省のもとで行われれた9年間の法廷での戦いの最後に、カリフォルニア州控訴裁判所は、トルコ側の主張を認めた。裁判所は2019年8月8日に、アルメニア人らの控訴裁判所への控訴を、この事案は「時効に達した」として棄却した。こうして、第1審の判決が認められた。
控訴裁判所は、第1審の裁判所が示した「政治問題の原則」ではなく、「時効」を理由として判決を下した。これは、トルコにとってより力強い判決となった。
控訴裁判所は判決でさらに、戦時に生まれた苦難の時効は公正を理由に停止されうるが、原告に関してこのような被害の主張は成り立たないこと、なぜなら原告は主張された「虐殺」の実際の犠牲者ではなく、大多数の祖先は何十年も前にアメリカに移住し定住しているからであるという点を説明した。
裁判所は、アルメニア人たちの歴史的な訴えに関して、いかなる調査も行わず、この訴えの要求を満場一致で棄却した。
■判決は確定
裁判を開いたアルメニア系アメリカ人たちには、再審理を同じ代表団または11人の裁判官からなる新たな代表団によって再開するために、2019年8月22日まで要求する機会があった。
しかし原告らはこのような要求を行わなかった。原告のアルメニア人たちは、この要求を行わず、判決が非常に健全な法の原則に基づいて、満場一致で下されたことが認められた。
法律家らは、本来原告らはこの件を2019年11月6日までアメリカ合衆国高等裁判所に上告する権利があるが、何らかの結果を手にする可能性はないと思われると述べている。
■インジルリキ基地の土地が問題に
訴訟を開いたアルメニア系アメリカ人らの弁護士は記者会見を行い、判決について、「アルメニア系アメリカ人にとって悲しいことだ」と話した。
アルメニアのニュースサイトでは、司法における敗北を政治的な理由に結び付けようとし、「この判決は、アメリカがNATOの同盟者であるトルコとの関係正常化を模索し続けており、この訴訟で問題となっている土地の一部であるインジルリキ基地が論争となっている時期に下された」ものであると解説していた。
しかしながら、アメリカ政府は司法プロセスに関与していないことが知られている。
■1つの転換点、前例となりうる判決
アメリカの控訴裁判所で判決が下されたプロセスについてアナトリア通信にコメントした外交関係の情報筋の人物は、一部のアルメニア人の周囲の人々が何十年もの間夢見ていた要求が成果を得られなかったと指摘した。
情報筋は、今回の判決が1915年の事件に関するアルメニア人の主張と要求という点から見て、1つの転換点であると強調した。
情報筋の人物は、トルコからの資産返還を受けようとする人々や賠償を奪い取ろうという考えを持つ人々が、何年もの間闘っていることを指摘し、裁判所が下した今回の判決は、同様の要求に対しトルコに味方する前例となる判決になるだろうと強調した。
この判決が、カリフォルニアのように離散アルメニア人たちが非常に力を持っており、自分たちの利益のために法律さえ改正しうる場所で下されたことは、さらに重要に思われる。
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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:47413 )