子供の自殺と女性の殺害は増加する
2019年12月09日付 Cumhuriyet 紙

刑務所からの逃亡犯はジェレン・オズデミルさんを自宅前で殺害した….。裁判所は、シューレ・ジェトさんを21階から投げ落とした殺人犯の絶対的終身刑を、「素行の良さ」を理由に相対的終身刑に軽減した。トルコはこの二人の女性の殺害を大いに議論したが、本当に近づいている大きな危険を見逃した。公正発展党(AKP)の、児童婚を容認することに繋がる法的是正で男女の年齢差を15歳と認めたのは、結果として大きな社会的混乱を招く性質をもっている。イスタンブル大学の刑法・刑事訴訟法学科のアーデム・ソゼル教授によれば、この法是正は、子供の自殺と女性の殺害を増やすことに繋がるという。

-性犯罪被害者の少女が加害者との結婚を条件に罪を免除する法案作業の中で、女性の議員からの10歳の[年齢差の]要望が拒否された。私たちに説明してほしい。誰が何を欲しているのか。

一部の人は、少女が性犯罪の加害者と10歳、あるいは、15歳の年齢差があった場合、性的犯罪者を許すようにと言う。少女達のことを通じて、人道的・科学的・道徳的ではない取引とデマが行われている。しかし、目下、誰が何を欲しているかを知るには、遠い過去と近い過去を振り返る必要がある。旧刑法はイタリアのザナルデッリ法から作られた。この法は当時のカトリック信仰が色濃く反映した条項も取り入れられた。性犯罪加害者と結婚すると、性犯罪の加害者とその加担者も全て無罪になると見なすこの条項も、このイタリアの法律から取り入れられた。つまり、「トルコで生まれた」ものではない。この条項の基本となる考え方は次のようである。少女あるいは成人女性は性的被害にあうとひどい形で汚される。尊厳を汚された被害者は、社会で敬意のある地位を得られず、もはや誰も彼女を求め、結婚して家庭を設けない。ならば、被害者を加害者と結婚させて、被害者に既婚者という地位を与え、「汚れ」をきれいにしてしまおう、とする。酷いトラウマの中にいる被害者を生涯苦しませ続け、人間としての尊厳を強く踏みにじった加害者と結婚させる法は、2005年のトルコ刑法改正によって廃止された。遠い過去はこうである。

-では、近い過去は。

加害者との結婚が2005年に廃止された。しかし、法律上17歳未満の子供の結婚は禁じられているにもかかわらず、双方が子供、また、少女と成人が宗教婚あるいは他の名目で結婚が行われ続けている。これらを若年婚、あるいは、児童結婚と呼ぶのは正しくない。なぜならば、 法律的に正当な結婚ではないからだ。この種の結婚は2種類に分けることが重要だ。ひとつは、少女も少年も例えば15歳の際、双方の家族により「あなたたちを結婚させた」と一緒にさせられる。ともに生活することになった子供たちは、夫婦になったと考えて性的関係を持つ。ここでは子供の性犯罪の罪には問われない。

―なぜ。

なぜなら、双方が子供であり、強要、脅迫、だまし、暴力は存在しない。子供たちの罪はない。このような状態では、責任は、保護者とこれを知っていて見ないふりをする関係当局者だろう。しかし、最高裁は、こうした事件で15歳の男子に性犯罪の罪で罰するという判決を下した。男子を罰したこの判例は、法律、法、道理に反する。これを解決する方法が、性犯罪加害者[と被害者]とを結婚させることを復活する様なことであってはならない。解決するには、同年代の子供たちの間で強要なしで行われた性的関係は罪に問わないと法律に明記することである。この問題の専門家である法律家、精神科医、心理学者たちは、こぞってこのことを提案している。しかし、私たちは、子供たちに法的に認められない、いわゆる結婚に目をつむる者達、これを行う保護者、これに目をつむった当局者について全く言及しない。これとは逆に、いわゆる結婚させられた、あるいは、恋愛感情を抱き強制なしに同年代の女子と性的関係を持った14歳あるいは15歳の男子たちを罰している。

-現在まで性犯罪に関する法律の変更は行われていた。様々な専門的分野の人物が支持しているこの提案がなぜ法制化されないのか。

保護者が宗教婚または別の名称で結婚させた子供たちの間の性的関係が合法と見られているからである。しかし、15歳の二人の男女高校生が、恋人となり性的関係を持った場合、これは罪であり、不道徳である。そのため、罰せられるべきであるという意見もある。この意見は以前からあり、新しいものではない。法制化作業で様々な政党の政治家から、罰さないならば、「高校生を抑えられない」といった奇妙な発言を聞いた。でも道徳に反しているといえよう。刑法は道徳に反する全ての間違った行為を罰するわけではない。例えば、嘘をつくことも道徳に反している。皆がすぐに口にすることだが。しかし、詐欺行為までいかなければ罰せられない。全ての罪が道徳に反する。しかし、全ての不道徳が罪ではない。

-第一の状況は上述のように明白です。若い子供たちの間で合意の上ならば性犯罪ではない、とおっしゃいます。では第二の状況は。

第二の状況は、概ね12歳から16歳の少女が成人と夫婦の様に同居を強いられる件である。そもそも性犯罪はこの点にある。結婚を条件に免罪を求めるということは、少女に性犯罪を働くことである。しかし、このことを正当化するために、以前触れた、合意の上で子供たちの間で結ばれた性的関係を、最高裁の誤った判例に基づいて、処罰するということを優先させている。しかし、前述のように、子供たちに罪はない。最高裁の間違った判例も、性犯罪を結婚を条件に許すことを解決とはしない。そもそも当事者達のことを考えてはいない。そもそも問われるべきは、12歳から16歳の性犯罪被害にあった少女が、宗教婚などの名目で同居することや、結婚を条件として免罪することを合法化していることである。実際、近い過去にある試みが行われた。

-そのことについて説明してほしい。

2016年トルコ大国民議会の本会議で与野党が合意した「刑事裁判法とその関連法令の改正法案」について審議していた際、深夜に当時の大臣が、突然、主意書を提出した。子供たち間の性犯罪に際し、結婚を条件に過去にそ及して免罪を導入するよう望んだ。提案が承認されれば、2016年11月16日までの性犯罪について、被害者と加害者が結婚すれば、係争中の裁判の判決を先延ばしにし、判決がすでに下された裁判については刑の執行を延期する決定が下されるはずであった。この法改正は、基本的に罪の免除を前提としていた。しかし、認められた提案が法制化する際に、与党の支持層である女性たち、政府に近しい女性・民主協会(KADEM)といった女性団体を筆頭に、野党とあらゆる社会層からとても大きな否定的な反発を受けた。レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領は、差別を助長するこの提案を議案から外すと述べた。家族相も、「もはや議案ではない」と述べた。

-そして再び議題となった。性犯罪被害者の少女と加害者の間に10歳あるいは15歳の年齢差があれば、結婚させて罪を免除するという議論が始まった。法的な婚姻の継続、訴えを起こさない、という点も議論されている。

これは、はっきり言うと、加害者との結婚の復活を意味している。頻繁に起こっている例を挙げよう。12歳の少女が15歳年の離れた親類に誘拐され性犯罪にあった。家族は宗教婚をさせる。少女は、その結果、妊娠する。医者はこれを伝える。どの国家機関関係者も法律に照らし合わせることをしない。どの組織も目をつむる。誰も12、3歳の少女が、あってはならないが、性犯罪加害者と一緒に暮らしているのはどういうことか、と声を上げない。少女を保護もせず、出産や性犯罪被害を認めるのか。ここで唯一できることは裁判を起こすことである。裁判中に2人目、3人目を生み、少女が成人になると結婚する。全く務めを果たさない機関や政治関係者は、「子供たちもいることだし、もう許そう」と言い始める。訴えが起きていないという基準は、法律の範疇外である。12歳から13歳の少女が30歳の男性と宗教婚という名目で同居を強いられる中、保護者と関係当局は一部始終を傍観している中、当事者の子供が訴えるかは問題であろうか。法的な婚姻の継続を基 準とするのも、とても誤っている。果たしてそれは結婚なのか。合法的あるいは非合法的な結婚[という判断]は、法的に可能ではない。

■免罪を求めている

-このような環境で免罪を語るのは正しいのでしょうか。民族主義者行動党(MHP)の提案を待つというのはどう思いますか。

社会の側の反発、恐らく免罪の中にどのような犯罪を含めるのかという点で合意がないので提案を待つことになった。しかし、このことは免罪が行われないということを意味しない。性犯罪者との結婚を通じて児童へ性犯罪を働いた多くの人物を免罪しようとしている。しかも、こうした免罪は、「正式ではない結婚」、「若年結婚」といった理由をつけて行われ、社会の側が免罪に反対するのを妨げようとしている。トルコにとって目下、問題とすべきは、性犯罪者と結婚させるのを妨げることでなければならない。

■性犯罪者との結婚の範疇が広がっている

-性犯罪者と結婚させることになる。社会の認識はこうです。でも、ここでも公正発展党(AKP)の執行部は「そんなことはない。暫定的条項が加えられ、期限を設けるだけ」と発表している。目的は何でしょう。

暫定条項、期限を設けることに何の重要性もない。12-16歳の少女が10-15歳ほどの年齢差のある男性に性的暴行を受け、宗教婚を通じて家族によって「正式ではない結婚をさせられる」、あるいは、まるで「若年結婚」のための法律を作ろうとしているからだ。性的犯罪に基づいてこの種の「非正式婚」または「若年婚」を継続することからして、問題の条項は暫定的なものではない。特に強要を通じて実行された性犯罪はこれらを何らかの形で活用するだろう。実際のところ周知のように、様々な方法を通じて家族に接触し、被害者は供述を変え、「無理矢理ではなかった、結婚するはずだった」と発言する。性犯罪者との結婚を復活せよと発言することは、12歳の少女が23歳のおじさんの息子に誘拐され、暴行を受けたことを、「合意のもと逃げ、関係を結んだ」と判断する法律が通ることで、性犯罪者と結婚させる範疇が広がることになる。

■診断書の内容が蓋をさせられている

-どのような結果となりますか。

民法での結婚年齢は紙の上だけのものになる。12-16歳の少女達に、成人が宗教婚または他の名称で同居を強いることが恒久的なものとなる。たぶん法律作成者の意図はここにある。なぜなら、一方では医師達が少女の妊娠を性犯罪によるものと伝える責任を撤廃しようとしているからである。皆さんはこの点に注意して欲しい。裁判所は、精神科医に性犯罪事件を隠すよう診断書を書くよう要請している。つまり現行法があるにも関わらず、法律の運用上では実際の所、性犯罪者と結婚させようとしているのだ。医師は、決して裁判所から要請だからといって性的犯罪を隠蔽する診断書を書いてはならない。児童が犯罪被害に関わる事実に気付いたら必ず通知しなければならない。国の隅々までしっかりと管理されている今日のトルコでは、公務に就く人々を通じて、当該の「非正式の婚姻」に目をつぶらず、関与、監督、啓蒙といった方法を通じて、大規模に妨げられることは明白である。こうしたことを行わず、15歳に満たない少女達を、性犯罪を働いた成人男性と正式に結婚させる方向に仕向けるのは、我々が支持する多くの国際合意に背くことになる。児童の権利や憲法上児童を保護する法的是正が何の意味を持とうか。児童への性的犯罪上で法律が守るべきものは、子供達の性を守り、性的発育やその貴き価値を守ることである。

-犯罪後に結婚させることは、被害を除くものではない、ということですか。

その通り。児童の精神の健全性や発達などといった点で、結婚を通じて免罪にしたり、無罪にする事は、性的犯罪の被害者である児童の権利を再度苛むものであり、こうした犯罪者や共犯者を褒めそやし、司法の活動を揺るがす結果を生むことになろう。児童に対し性的犯罪が働かれた際には、社会では大きな反発が生まれ、重罪化に向けた法的な取り組みが行われる中、一方では上述のような暫定条項により包括的な免罪を生み出すような法是正に向かうのは、大きな矛盾だ。

■傷物

-13-14歳で成人男性と夫婦のように暮らすよう強いられる児童は、単に性的のみならず、他の種類の暴力の被害者でもある。こうした状況の中で、少女は自ら命を絶ったり、時には暴力に耐えきれず犯罪者を殺して、今度は本人が刑務所に入ることになる。しばしば非道な感情上の動機で女性に暴力がふるわれるこの国で、性的犯罪に際し結婚させるというやり方は、こうした犯罪を行う考え方を承認することになる点に留意すべきである。なぜなら、こうしたことの背後には、女性を持ち物とみたり、性的満足のためのものと見なす考え方が横たわっているのである。性的犯罪者と結婚させるというのも、こうした考えからきている。児童のことを、権利の持ち主であり、物的・精神的存在を発達させる権利を持つものとはせずに、性犯罪者により汚された傷物とみなしている。トルコ、特に少女達にはこうした未来が約束されているのか。

■若年結婚と呼ぶな

-政治上の議論は次のようです。「今、真の婚姻関係があり、そこには子供も、母親もいる。若年結婚だとして、夫を職場から引き連れて刑務所に放り込んでいる。このことを見過ごせようか。」

まさに性的犯罪者との結婚を合法と見ているから、このようなことが言えるのである。法律や民法に照らしても、「若年婚」は成立しない。「若年婚」とは事実をねじ曲げ、児童への性的犯罪を覆い隠すための捏造された用語である。12-16歳の少女を、10-15歳の年齢差のある成人男性と、宗教婚または別の名称で一緒にさせることを、「若年婚」と位置づけるべきではない。こうした理由を挙げる者達は、そもそも「12歳の少女に15歳年の離れた男性が暴行を働いても、宗教婚をさせれば、性犯罪ではない」と言いたいのだ。発育途中にある児童の、その歳では同意は問題とならない。実際にトルコ刑法は、15歳未満児童の性的関係については合意の妥当性を認めていない。例えば、成人男性が13歳の少女と性的関係を結べば、強制や脅迫などに関わりなく、これは「性的暴行」という性犯罪にあたる。

■筆頭野党は積極的に反対してはいないよう

-刑法の専門家として提案はありますか。

現時点でやるべきことは、同年代の児童が相互の間で強制や暴力による脅迫、騙しを伴わない性的行為を処罰しないという法是正を行うことである。このため与党、野党を含めた全政党は、児童の権利を共通の出口として行動を起こすべきである。しかし私の見る所、筆頭野党の一部は、性的犯罪者との結婚に特に反対していないかのようである。勘違いかもしれないが、筆頭野党は2016年のように積極的に反対しているようには見えない。単に法律家のみではなく、児童精神科医、心理カウンセラーといったあらゆる関係者が一堂に会して共同で案を作成することを提案したい。基本原則は、この種の案では犯人と被害者の結婚といったことを一切含まないことである。是正案は、3-4歳といった一定の年齢差がある「同年代の児童間で強制、脅迫、騙しなしに」結んだ性的行為の問題を含むべきである。こうした是正案は過去にも影響を及ぼしうる。法律に反した最高裁の判例を理由に処罰を受けた児童たちの問題も解決する。しかし現状のような閉じられた扉の後には、12-16歳の性的被害者の少女達を、10歳または15歳年の離れた性的犯罪者と結婚させるといった取り引きも、子供の自殺や女性の殺害を増やすことになろう。

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:48223 )