アタテュルク像を守れ!サムスンで市民、寝ずの番
2022年02月05日付 Hurriyet 紙


アタテュルク像をロープで引き倒そうとした犯人に対し、サムスンの街は眠らなかった。市民は91年前に作られたアタテュルク公園の銅像の前に集まり見張りを続け、「必要とあれば一日だけでなく、一月いや一年寝ない。犯人は重罪に処されるべきだ」と反感をあらわにした。

偉大な指揮官アタテュルクが独立戦争を開始した地サムスンは3日、大事件の舞台となった。サムスン広域市イルクアドゥム区カレ街のアタテュルク公園に2人組がジープで現れると、アタテュルク像にロープを巻き、車で引っ張り始めた。周辺住民がこれに反応すると、2人組はロープをその場に捨て逃走した。容疑者はすぐ逮捕されたが、サムスン市民は稚拙な襲撃に対して一つに団結した。

■「まばたきすらしなかった」

事件をうけ銅像の周りに集まった市民は、夜通し寝ずに公園で過ごした。アタテュルク像の見張りは昨日も続いた。見張り番に加わったヤスィン・サルカシュさんは、事件にショックを受けたといい、「友人の若者と朝まで瞬きもせずに番をした。必要とあれば一日だけでなく、一月いや一年寝ない」と話した。バハル・ウルチャイさんは、「アタテュルクはただの人ではない。彼自身の思想を象徴する存在だ。事件は彼の思想に対するものだろう。我々は、強い抗議を示すために朝までここで見張った」と話した。

■国会議長「闇の手」

ムスタファ・シェントプ国会議長はツイッター上で、サムスンとエディルネで相次いだ像襲撃を非難した。「トルコ人として我々が共有するアタテュルクの記憶に対してサムスンで行われた反国家的破壊工作を激しく非難する。エディルネ県ウズンキョプル市のアタテュルク像にも襲撃が及んだ。過去と同様に闇の手が破壊工作を試みている」。公正発展党のオメル・チェリキ報道官は、事件について「神聖不可侵たるアタテュルクの記憶に対する襲撃と破壊工作を非難する。昔からこうした不敬と破壊工作の基本的な目的は国民に怒りを生み、トルコに害を与えることだ」と投稿した。

■キャーズム・パシャが作らせた

サムスンのアタテュルク像は、アタテュルクがサムスンで独立戦争を開始したことを記念して作られた。当時のサムスン県知事はアタテュルクの盟友キャーズム・イナンチュ・パシャだった。キャーズム・パシャは、オーストリア人建築士・彫刻家のハインリヒ・クリッペルの手になるアンカラとイスタンブルの像をいたく気に入り、サムスンの銅像をクリッペルに発注した。3年後の1931年8月、像は完成した。「名誉の像」の名がつけられたこの作品は、同年10月29日にサムスンの今の地に建てられた。銅像は翌1932年1月15日に公開され、以来サムスンのシンボルとなった。クリッペルは1938年までトルコに滞在し、アフヨンとコンヤにも銅像を作った。クリッペル作の像はオーストリアにも多い。

<写真3 1931年の像完成に際してアトリエでポーズをとるクリッペルら>

■容疑者は逮捕

稚拙な襲撃に対して警察が捜査を開始し、犯人が逃走に使用した車のナンバープレートを特定した。警察はナンバープレートから捜査を開始し、バトゥハン・フィダン容疑者とジェラリ・ラフマン・フィダン容疑者を逮捕した。二人はいとこ同士であることが判明している。両容疑者は、覚せい剤使用による11件、覚せい剤の流通による2件、傷害による9件、過失傷害による3件、酒気帯び運転による2件の前科を持つことが明らかになった。内務省のイスマイル・チャタクル報道官は、「両容疑者は非常に多くの前科持ちで、犯罪マシンのようだ。一人は夜にアルコール飲料を買ったことも認めている」と述べた。両容疑者は検察による取り調べの後、「アタテュルクに対する犯罪に関する法律」(法律第5816号)違反で起訴された。最大で懲役5年が科される。

■銅像を見て「引き倒してみたい」

両容疑者の供述内容が取材で分かった。事件の主犯ジェラリ・ラフマン・フィダン容疑者はこう話したという。「何かしらの組織に指示されたわけではない。自分の意思でやった。アタテュルク像を引き倒す以外の考えはなかった。アタテュルク像の存在に対し抗議する。ロープは兄の店で買った。バトゥハンの手は借りていない」。一方バトゥハン・フィダン容疑者は次のように供述しているという。「私はアタテュルクを尊敬している。アタテュルク像に対しても反感はない。事件の前日、レストランでジェラリ・ラフマンが冗談交じりにアタテュルク像を見せながら『これを車につなげて引き倒してみたい』と言った。事件の日、ジェラリは私が酒を買った後、車でやって来た。一緒にコーヒーを飲んだ。ジェラリは『これで胸がすっきりする』と言ってロープを像の上から通すと再び車に乗った。エンジンをかけたがロープがちぎれ、そこから逃げた」。

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( 翻訳者:麻生充仁 )
( 記事ID:52450 )