ウクライナにトルコ人留学生がこんなに多いのはなぜか
2022年03月04日付 Cumhuriyet 紙
2月24日のロシアの侵攻開始後、ウクライナに住むトルコ人らが国外退避を試みている。この過程で、ウクライナに多くのトルコ人学生がいることが明らかになった。では、トルコ人学生はなぜウクライナを選ぶのだろうか?ギュンジェ・アクパムクが調査した。
2月24日のロシアの侵攻開始後、ウクライナに住むトルコ人らが国外退避を試みている。この過程で、ウクライナに多くのトルコ人学生がいることが明らかになった。
ウクライナへ行く学生に学習相談を行うELT(注)のイスマイル・ダヌシュマン氏が公的機関のデータを用いて述べた所によると、現在ウクライナでは約5千人のトルコ人学生が学んでいる。2021年9月にウクライナで留学を始めた学生の数は1700人近い。
トルコからウクライナに行く学生のために学習相談を行うAtlas(注)のエスラ・アイドゥン氏は「トルコからウクライナに留学に行く学生は一般的にハルキウ、キエフ、オデッサを選ぶ」と話す。
リヴィウとスームィにも多くのトルコ人学生がいることが知られている。
トルコ人が留学のためウクライナを選ぶには多くの理由がある。
これらの筆頭が、学生らがトルコで行われる大学入試を受けずに、高校卒業証明をもってウクライナで希望する学問分野で学べることである。
エスラ・アイドゥン氏は、「学生らは試験を受けずに、ウクライナで望む分野を学ぶことができ、魅力的なのもこの点である」と話す。
先の数週間でトルコで高等教育機関試験(YKS)の合格最低点が撤廃されたにも関わらず、過去に最低点を越えられなかった学生らにとって、ウクライナは良い選択肢であった。
イスマイル・ダヌシュマン氏も、ウクライナが好まれる最も重要な理由の一つとして、大学の受け入れ条件が非常に簡単であるのを指摘している。
「ウクライナへ行く学生たちが最も多く出願するのが、医学、歯学、工学部である。」
「トルコ、またEU諸国では、これらの学部に入るためには一定の基準を満たす必要がある一方で、ウクライナでは言語能力が十分である学生はこれらの学部により簡単に受け入れられる。」
また、ウクライナではウクライナ語やロシア語同様に、英語学習の機会もある。非常に多くの大学に、外国語を学ぶための準備講座がある。
■生活費が安い
2番目に重要な条件は、ウクライナでは学費、寮費、生活費が他のヨーロッパ諸国と比べて非常に手頃なことである。
イスマイル・ダヌシュマン氏は、「トルコ人学生が留学先にウクライナを選ぶ最大の理由が、準備講座や学部・大学院の授業料が、教育を受けられるアメリカ、イギリス、カナダ、もしくはヨーロッパ諸国と比べて非常に安いことである」と述べ、次のように付け加えている。
「ウクライナでの学費は年間1000~4500ドルの間で推移している。」
ダヌシュマン氏は、ウクライナでの生活費がトルコと比べても手頃であると明かにしている。受け入れ条件と低コストであることが、他の国から来る学生たちにとって利点であり、そのためウクライナでは他の国々の学生も多く暮らしている。
ダヌシュマン氏は、「ウクライナへ、トルコ以外にアラブ諸国から非常に多くの学生が留学していると把握している。アゼルバイジャンや中央アジアの国々から言葉の点で容易であるため(ロシア語も話せる)、非常に多くの学生が留学している。イランからも、近年は多くの学生が流入していると聞いている」と話す。
■医学を学ぶ学生はトルコでも医師になれる
ウクライナの多くの高等教育機関で取得した学位はトルコでも認められている。医師、弁護士、建築士のような職業に、教育を受けた国以外で就く場合には、一部の職業認定試験を受けることが必要である。
ダヌシュマン氏は、ヨーロッパで受けた医学の教育課程は、トルコでは一部の大学を除き認可されており、EU加盟国の医学部を卒業して既にトルコで医師になった学生がいると明かし、このため認定の申請を行う必要があると明らかにしている。
「高等教育機構(YÖK)が近年導入した異なるシステムでは、学生が国外で医学教育を受けトルコで認定を受けるためには、YÖKから認可された大学で学ぶことが条件になった。以前は[世界のトップ]500大学のうち一校で、その後は1000大学のうち一校で学ぶ必要があった。」
エスラ・アイドゥン氏は、「YÖKが認定した学校で学んだ学生らがトルコに帰国すると、レベル判定試験を受け、100点中40点を取れば認定を受けることができる」と述べ、次のように付け加える
「また、ウクライナでの学位は青色学位であるため、EU諸国でも有効である。例えば、ウクライナで医学を学ぶ学生はトルコでもEU諸国でも医師になれる。」
しかしながらイスマイル・ダヌシュマン氏は、受け入れ条件が簡単であるにも関わらず、多くの学生が学ぶ際に困難を被ったため医学を諦め他の分野に移ったと明かにしている。
■学生らは国外退避を試みている
ロシア軍は先週、3方向からウクライナに侵攻した。
最初の日、ロシア人分離主義者らが事実上支配するドンバス地区で激しい衝突が発生した。この地域に位置するウクライナ第二の都市ハルキウで、衝突とロシアによる空爆が1週間続いている。
同時にロシアは、南方からクリミア経由で行った侵攻の結果、ヘルソン市を制圧した。
北部では、ロシア軍がベラルーシ経由でウクライナの首都キエフに向かって進攻している。都市は数日間爆撃されている。
国連のデータによると、100万人以上の人々がウクライナから退避した。この中には、侵攻が始まってから今までに国を離れようとしているトルコ国民も含まれる。在ウクライナ・トルコ大使館は、トルコへの帰還を望む国民のために呼びかけを行っている。
(注)ELT intenational education and student exchange services inc.
(注) Atlas private educational services.
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( 翻訳者:関口ひなた )
( 記事ID:52802 )