Timur Soykanコラム:破壊のポリティクス
2023年02月12日付 その他 紙

「今は政治をするときではない」と彼らは言う。彼らの政治こそがこの国を瓦礫の山にしてしまったというのに。

1999年8月17日から導入された震災税(deprem vergisi)で集めた384億ドルで、彼らはスーペルストラーダ〔注:大型幹線道路の一種〕や、メガプロジェクトを次々に行った。建築会社は儲かった。「我々が道路を作った」と票集めを行い、短期的な政治的利益でボロ儲けし続けた。

こういうことを言うと、彼らは声を張り上げるのだ。「今は政治をするときではない」と。

科学者たちや各商工会議所が警告したにもかかわらず、彼らは断層の上に高速道路や空港を建設した。地震の被害を受ける可能性にあった土地を開発用に開放した。ハタイ県のアミキ湖を干上がらせ、そこに空港を建設する事業に反対した人々を彼らは「テロリスト」と呼んだ。彼らは開発の許可を出すことで票集めをした。

こういうことを説明しようとすると、彼らは怒鳴る。「今は政治をするときではない。」

トルコが地震国であること、災害が近づいていることは誰もが知っていた。科学者たちはずっと警告を発していた。しかし彼らは無茶なプロジェクトに夢中になっていた。エルドアンは「なにがなんでもイスタンブル運河〔注:黒海とマルマラ海を結ぶ長大な運河計画〕を完成させる」ことにこだわっていた。「地震で倒壊の恐れがある住宅を改修しよう」という呼びかけに耳を傾けることはなかった。

こういうことを思い出させようとすると、彼らは叫ぶ。「今は政治をするときではない。」

〔政権にとって〕震災への長期的な対策に旨みはない。そのため汚職の蛇口にカネがじゃぶじゃぶと流されることはなかった。その代わり、子供騙しのような震災時避難訓練を行ってお茶を濁した。これはつまり、災害を、死を受け入れたということを意味する。

こう言うと彼らは声を張り上げるのだ。「今は政治をするときではない。」

またワンマン体制による無能さと中央集権的なメンタリティは、国家の反射神経を破壊していた。火災や地震においてすら「大統領のご指示により〜」と話し始める人々ばかりが、〔官庁の〕役職を与えられていた。もはやイニシアティブをとることができる官僚は残っていなかった。有能な官僚は、自分たちを脅かす存在として排除される。

彼らが国家を崩壊させたのだと言うと彼らは怒鳴る。「今は政治をするときではない。」

大地震が起きた後の捜索・救援・支援活動も、ワンマン体制のコピーだった。過剰に中央集権が進んだ専制的なシステムは、地震発生とともにダウンしてしまった。捜索・救援チームや備品、支援物資は、地震で壊滅した都市に何日も届かなかった。〔この時こそが〕最も重要な時間帯だったというのに。何千人もの人々が瓦礫の下から生きて救出されたかも知れなかったのだ。

この痛みに叫ぶ私たちに彼らは声を張り上げるのだ。「今は政治をするときではない」と。

1999年8月〔にコジャエリ県イズミットで発生した〕地震では、何千人もの兵士が地震が発生後すみやかに〔被災地に〕配備され、捜索・救援・治安維持活動に従事した。〔これにより〕何千人もの命が救われた。しかし2月6日の地震では政権のプライドが邪魔をし、発生当初兵士に〔出動〕命令は出されなかった。軍のロジスティクスや装備、人員があれば、壊滅した都市において救世主になれたかも知れないというのに。

これに声をあげる私たちに対し彼らは叫ぶのだ。「今は政治をするときではない」と。

大統領は最初に会見を行ったきり何時間もカメラの前に姿を現さなかった。AFAD〔災害緊急事対策庁〕のオルハン・タタール地震・リスク軽減総局長は、〔地震発生から〕20時間以内に被害を受けた全地域に〔救援隊が〕到着したと述べていたが、彼は嘘をついていた。この時点ではまだ、ハタイ県やアドゥヤマン県などには一人たりとも捜索・救援隊は到着していなかったし、実際の到着はさらに何日も遅れる可能性があった。

このことは彼らも知っている。そして彼らは声を張り上げるのだ。「今は政治をするときではない」と。

彼らは、被災者たちが声を上げるための手段であったソーシャルメディアを禁止した。Twitterは〔アクセスを〕遮断された。Twitterでの呼びかけによって、多くの人々に救援が届いていたというのに。

この殺人的な言論統制に怒りがわき起こると彼らは怒鳴った。「今は政治をやるときではない」と。

ラジオ・テレビ最高会議(RTÜK)は、各テレビ局が行おうとしていた仮設住宅キャンプ支援の番組に放映許可を出さなかった。〔過去の〕汚職の数々によって人々は彼らを信用していなかった。そのうえ人々が信頼して寄付をしたAhbapをはじめとした支援団体を標的にする一方で、「集まった支援〔物資・金〕を没収せよ」キャンペーンを始めたのだ。

いまだに司法の手で裁かれていない何十もの汚職を列挙されると、またしても彼らは叫んだ。「今は政治をするときではない。」

通信〔障害〕が大きな問題となった。〔国営通信会社である〕テュルク・テレコムは賄賂によって数十億ドルの赤字が発生していたため、トルコの通信インフラは極めて脆弱であった。

このことについて念押しすると彼らはまた声を張り上げた。
「今は政治をするときではない。」

毛布、水、テント、衛生用品といったものは何日も被災地に届かなかったし、捜索・救援活動が行えていなかった何千もの倒壊した建物があった。しかしカメラの前に姿を現した大統領府のTwitterアカウントでは、エルドアンがどの市と電話で連絡をとったかが列挙された。〔この時〕共和人民党の市には電話をしていなかったことが反発を呼ぶと、何時間も後にそういった市に電話をかけた。

エルドアン大統領は、震災対応の不手際を批判した人々に侮辱の集中砲火を浴びせた。誰が「フェイクニュースを広めていた者ども」なのかをしっかり帳簿につけたとし、時がきたらその帳簿を開けてやると彼は話した。その顔は憎しみに満ちていた。〔さらに〕被災者と対話した際は「運命」であることを強調した。

公正発展党(AKP)のオメル・チェリキ報道官は、共和連合〔与党AKPと民族主義者行動党による選挙連合〕が被災地に入っていることを強調していた。

しかしAKPのヌルセル・コジャバシュ・レイハンルオール元カフラマンマラシュ選出議員がやっていたことといえば、被災地支援のためにやってきたエクレム・イマームオール〔イスタンブル広域市長〕を攻撃して自己顕示を行うことだった。この間、ボドルム市から送られた支援物資のトラックに掲げられた横断幕の上に「ムーラ郡」という文字が被せられたのを目撃した。イズミル郡からきた支援トラックの上に「AKPメネメン支部」と書かれた横断幕を被せ、その前で記念写真を撮る人々を目撃した。彼らにとっての政治というものはこういうことであった。

いくら書いても書ききれないし、私たちの痛みは癒えない。私たちがかろうじて息をしていられるのは、この国の人々の素晴らしい助け合いのおかげだ。

一方では、非情なる資本主義の強欲な建築業者や、彼らと手を組む官僚や政治家たちがいる。彼らの目先の利益が何千もの人々を殺したのだ。もう一方には、心を一つにした何百万もの素晴らしい人々が命のために闘っている。

瓦礫と化したこの略奪秩序の中で死んでいくか、それとも手を取り合ってこの瓦礫から脱出するか——私たちにはどちらかしかないのだ。

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( 翻訳者:今城尚彦 )
( 記事ID:55015 )