日本の100年の取組み「日本人は住んでいる家を信頼している」
2023年02月22日付 Milliyet 紙


トルコで11県を襲った地震災害の復旧作業が続けられる中、多くの人が自分の住んでいる建物に耐震性があるのかどうか気にしている。では、世界最大規模の地震の内約八割が発生する環太平洋地震帯に位置し、この問題において世界中が手本にする日本ではどのようなやり方で、どのような対策が取られているのだろうか?日本のシステムとトルコのシステムの違いは何か?トルコ在住の日本人一級建築士、森脇義則氏はMilliyet.com.trの取材に対し、地震でも崩れない100年続くシステムを説明した。

オウズジャン・アトゥス記者/Milliyet.com.tr―カフラマンマラシュで発生したマグニチュード7.7及び7.6の地震はトルコ全土を揺らした。地震によって甚大な被害を受けた11県をはじめとし、トルコ全土で協力して復旧作業が続けられる中、人々の頭には1999年のギョルジュク地震後の経験が思い浮かんでいる。トルコが地震の現実を刻み付けられた8月17日からほとんど四半世紀を経て起きたこの災害によって生じた物的・人的被害はかなり大きい。トルコと同じ地震国である日本が特に最近再び話題になっている。専門家たちは、大地震が起きても日本の建物はしっかり立っていることに注意を引いた。SNSでは、ある母親が二人の子供に日本とトルコの建物の違いを伝える動画が話題になった。では、日本のシステムはどの点でトルコのシステムと異なるのだろうか?トルコの建築における誤り、欠陥は何だろうか?

長年トルコに在住し、余生をトルコで過ごしたいと述べる日本人一級建築士の森脇義則氏は、地震をはじめとした自然災害に対する日本とトルコの見方を、自身の見解で比較した。森脇氏は、トルコは規則の点では日本とほとんど同じ状況にあると述べ、日本が地震を切り抜けるために取り組んでいるシステムに関する詳細も共有した。



■「関東大震災は重要な出来事だった」

―日本は地震に対していつから対策を始め、何年後に成功したのですか?

「日本は、地球の地震の内八割以上が発生する環太平洋地震帯に位置する国々の一つだ。日本の地震対策活動の歴史は、1923年に発生した関東大震災として知られるマグニチュード7.9の地震にさかのぼると言って良いだろう。日本は、この地震で10万人以上の人命を失った。この地震で倒壊した建物と、地震後に発生した火災が、多くの人々の命を奪った原因だった。その後、日本は何度もかなり破壊力のある地震によって激しく揺れたが、関東大震災の後味わった苦しみから取り組まれ始め、段々と発展した対策が、日本に今日までの平穏と本格的な地震対策をもたらした。」

「日本は世界各地で発生した地震もかなり緻密に調査している。例えば1999年にトルコで発生した地震では、日本も援助に駆け付けたが、それだけにとどまらない。このような地震が日本で起きた場合、どのような事態を招くのか分析するため、日本からトルコに専門家がやって来て、地震に関する調査をし、日本とトルコ両方にとっての教訓を得た。つまり日本は世界各地で地震が発生した際援助するだけでなく、その後被災地で専門家と調査を行い、被災国と自国両方のために新たな教訓を得ている。この状況は、現在トルコで発生した地震にも当てはまる。日本の大学の関連学部に籍を置く専門家たちがトルコに来る準備をしており、この活動が始まれば私もその一員になる可能性が高い。」

<写真下>2011年に日本で発生したマグニチュード9.1の地震の後発生した津波は、日本での多くの犠牲の原因となった。

■「国民の自覚が必要」

―日本もトルコも、最大の現実は地震です。地震対策に必要な第一歩は何だと思いますか?

地震から逃げることは、日本も、トルコも、地震帯に位置するどの場所でも不可能である。この状況に対して、丈夫な建物を建築することに加えてもう一つの重要な課題は、国民を自覚させることである。マルマラ地方で起きると予想されている地震があり、これに関連して常にいくつかの計算が行われている。倒壊の推定、死者数の推定が常になされている。しかし、これらに加えて幼稚園から大学まで社会のすべての人が地震の現実に対して自覚することが必要である。

地震に対して常に備える必要がある。中央政府、地方行政、家庭、つまり社会のすべての構成員が地震だけでなく、あらゆる災害に対して意識を持ち、備える必要がある。災害に対して独立した省を設立することで、これらの状況との戦いをより計画的に行える可能性がある。私もこの問題に全力を注いでいる。私は長い間トルコに住んでおり、余生もここで過ごすつもりだ。そのため、この問題において人々の自覚を促すことにも尽力する。

■「基準は似ている、実行に欠陥がある」

―日本とトルコの耐震基準にはどのような違いがあると思いますか?

トルコの耐震基準は、絶えず変化している。重要な変更の一つは、1998年に行われたものである。その後、2007年と2018年に再び耐震基準の更新と変更が行われた。特に2018年の変更によって、トルコのは耐震基準は日本で実行されているものと高い割合で似たものとなった。つまり、基準の点においてはトルコに欠陥はないと言うことができる。しかし、日本とトルコを分けるのは実行における欠陥である。

■「日本人は住んでいる家を信頼している」

―日本人は住んでいる家の建設業者に疑いを持ちますか?つまり、屋内で「この家は私の頭上に崩れてくる」という恐怖を持って暮らしていますか?基準違反の罰は何ですか?

この問題において日本では、厳重な制御メカニズムと長年の人々の自覚があるため、このような欠陥はあり得ない。建設現場の設置や工事の着工は、すべての資格・免許を取得して初めて取り組むことができる。また、建物を建てた後、自治体や消防団など多くの機関によってそれぞれ点検され、その過程で建物が災害に対して十分な耐性を持つかどうか見極められ、これらの過程を経て居住許可が出される。

建物を建てる際、地震の影響を抑える様々な方法やシステムが用いられている。頻繁に、効果的な点検が行われ、同時に人々が災害に対し意識的な行動をとることから「日本でこれらの対策をとらずに建築したらどうなるのか?」という問題を問う必要はない。そのため、人々が家の耐久性に疑いを持つというのはかなり稀な状態である。

■「トルコで高層ビルに住むなど考えもしなかった」

―日本では家を建てる際、どのような工程があるのでしょうか。建築材料や耐震システムなど、家に不可欠な要素は何ですか?要するに、日本にあってトルコにないものは何ですか?


日本では建物を建てる際コンクリートや鉄だけでは足りない。工場で生産されるプレハブ建築や鉄鋼建築も、日本でよく見られる建築資材の一部である。これらの工法はトルコで、もしくは世界各地でも採用できる方法だが、価格がやや高価である。しかし、必要な場合には一部の建物でこれらを適用する必要がある。例えば、私は長年トルコに住んでいるが、一部の高層ビルがコンクリートと鉄だけで建てられているのを見たことがある。このため、トルコで高層ビルに住もうといった考えは全くない。私は低層建築をより好んでいる。

■「トルコの地震は地表付近で発生した」

―日本では地震後の過程はどのようなものでしょうか?

日本では、地震発生後すぐに警報システムが作動し、携帯電話を含むあらゆる通信手段で人々に知らされる。地震の波はそれぞれ異なる。P波は非常に速く伝わる。よりゆっくり伝わるS波は、記録装置では二次的に見られる。これらの波が測定された後警報システムが作動する。日本はこの点ではやや幸運である。なぜなら、地震が大抵は非常に深い場所で発生するためである。トルコでの地震は、例えば最近起きたものを見ると、地表付近で発生している。つまり警報を発するのに十分な時間がなかったと言える。しかし、恐らくイズミルで起きた地震においては役に立ったかもしれない。

早期警報システムは、災害の後起こりうるリスクを最小限に抑えるのに役立つ。警報を受けた運転手は注意を払い、天然ガスシステムを閉鎖し、地震後の火災や爆発の発生を防ぐ。こういった利点がある。トルコと日本の間では、地震をはじめとする自然災害に関する協力のための会議が開かれている。パンデミックの影響で会議はしばしば中断されたが、地震帯に位置する国々はそれぞれの経験や対策を共有している。このシステムも、会議の議題の一つである。

 

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( 翻訳者:田原紗樹 )
( 記事ID:55092 )