(続き)
◆解き放たれた鳩
「まさに今日、たくさんの鳩がテヘランとサーヴェから連れてこられて、ここに放たれました。鳩たちがここに定住するには、ここに放たれるだけで十分です。」彼(ここに勤めている、アフマド・ハターイヤーン・ハリーラーバード氏)はこのように言い、続けた。「テヘランから来た人々のうちの1人が、自分が連れてきた鳩を大切にしていたことは明らかです。あの人が一羽一羽にどのように別れの挨拶をしていたか見たはずです。」
エマーム・レザーへの誓願のためにここで鳩を放つ人たちが多くいる一方で、彼らは鳩飼いというわけではない。「多くの人は願掛けを行うために遠くから来て、鳩はマシュハドで購入します。」アーザーディー中庭の使用人はこう言った。「この鳩たちを売っている場所は、キャフタルフォルーシュ(直訳:鳩売り)小道と呼ばれています。2箇所のキャフタルフォルーシュ小道があり、参詣者は聖域に近いキャフタルフォルーシュ小道にいくか、一際多くの人で賑わう店舗の並ぶナスルショッピングモールの向かいにあるグーチャーン門(トウヒード広場の旧名)に行きます。」彼は自身も一度そこに行ったことがあると話した。「一部の鳩の値段は20万トマーン(日本円で600円程度)にも及びます。もちろん、買い手は売り手に気をつけなければなりません。なぜなら、一部の鳩売り商は、店先にある鳩の止まり木となるものに店の質の良い鳩たちを慣らしてあるからです。そのため、これらの鳩たちはどこで放たれようとも、戻ってきてその止まり木に止まるのです。」
アーザーディー中庭からは、エマーム廟の黄金のドームの一角がよく見える。ドームには鳩がいる形跡はなく、ただ時折、鳩がドームの隣から飛んで来て、その先に止まる。この中庭に、鳩は多くない。そこで、我々に同行していた鳥類学者の言葉に従い、この聖域のメインの中庭に行くことにした。
若い女性が小麦でいっぱいのナイロンの袋をサッガーハーネの上に投げている。ここはエンゲラーブ中庭で、この聖域の中で最も多くの鳩の群れを見ることができる。ザーレさん(上記の若い女性)はテヘランからの旅行者で、エマーム・レザー廟への参詣のためにマシュハドに来たのはこれで4回目だ。彼女はこう話す。「ここにくると毎回、一握り分の小麦をまきます。この子(鳩)たちは、清らかで何の罪もない。いつもエマーム廟のそばにいるんです。」
エンゲラーブ中庭は鳩で溢れている。最も鳩が群集している場所は、黄金のイーヴァーンの向かいで、サッガーハーネの小さなドームの上にいるのを見ることができる。しかし、少し注意すると、ラヴァークの至る所や中庭の隅、参詣者たちの足元にまで鳩たちがいることに気づく。もちろん、この中庭の至る所では、エサを探すのに最適な場所としてここを選んだハシグロアオフバトやカラスも見ることができる。この中庭にはたくさんの鳩がいるにも関わらず、ここは聖域における鳩の主な居場所ではない。使用人は中庭の出口の方を指差し、鳩たちの棲家を教えてくれた。「ラザヴィー公園の隣にある、「バスト・トゥースィー(聖域敷地内の一部)」です。」
−(3)に続く−
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( 翻訳者:NK )
( 記事ID:55936 )