イスタンブルのエセンユルトで一日過ごしてみたら
2023年08月07日付 Cumhuriyet 紙


創設期には社会的な自治体の在り方と組織的な産業地区とによって連想されたイスタンブル県エセンユルト区は、現在では、暴力、麻薬、強盗といった犯罪多発地域の一つとなった。区で目に飛び込んだ最初のものは、厳しい警察の取り締まりである。

イスタンブル県エセンユルト区は、近年増加する暴力事件によって話題になっている。麻薬取引、殺人、女性への暴力、不法移民と地元住民の間の緊張状態といった理由で多くの刑事事件が発生している。我が国で最も大きい区の一つであるエセンユルト区は、犯罪の象徴となっている状態である。それにしてもこの段階までどのように来てしまったのか。エセンユルト区で地元行政、警察、市民団体、長年この区で住んでいる住民達と話した。私たちは、区で1日を過ごしながら、観察した。

郊外に拡がるエセンユルト産業地帯は、多くの労働者と多くの人口によって有名となった。しかし、深刻なインフラ不足は問題である。エセンユルト区は、56の県よりも大きいにもかかわらず、区には200床の公立病院しかない。共和人民党所属エセンユルト区のヒュセイン・エルギン区長は、エセンユルト区の現在の状態が公正発展党の計画であると述べて、「人々の可能性を狭めながら、僅かな支援を行なって、公正発展党は住民を公正発展党に依存させる状態にするのを望んでいる。」と述べた。

■女性の死体

エルギン区長は暴力事件に関しては次のように述べた。「アナトリアから来た人も外国人の移民たちも何年もの間ここに送り込まれた。都市部の郊外で安かった。産業はある。しかし、公正発展党はここで建築許可を行なって巨大な高層ビルを建てた。エセンユルト区には50階建ての住宅がある。一つの集合住宅地区に5000戸ある。満室になり一戸あたり2人ずつ暮らしていたならば、1万人である、その数は。この集合住宅地区はアナトリアの諸郡と同等の人数を擁する。こうした郡を郡知事が治める一方、ここでは集合住宅地の複数の管理者がいる。交通機動隊でさえいない、エセンユルト区では。しばしば、高所から女性が落ちる。死因としては自殺として処理される。毎日集合住宅地の女性が自殺をしたという情報が入る。自殺したのか投げられたのか、わからない。警察に自殺の結果亡くなった女性の数を請求しても、この情報を私たちには提供しない。
■血の復讐も移動

人口の密集は人々の忍耐の水準を落とすと述べたエルギン区長は、「人口の密集度合いに関するフィールドワークを行った。区で人々の全員が同時に通りに出るならば、次から次へと3人が止まる必要がある。多層階の建物に人々を閉じ込めた。病院は不十分、学校も不十分、交通渋滞の問題がある。ここのインフラは50万人で設計されている。しかし、すでに130万人が住んでいる。この状態で人々は共有することはできない。単に移民だけでなく、アナトリアからの移住者もグループ化している。さらに、ここに移住してくるときに血の復讐といった自分の故郷での諍いまでここに持ってくる。この状況もまた犯罪を生んでいる。巨大な不平等も存在している。エセンユルト区の一角は大きな富裕層を含む一方で、他方では貧困の最下層を見られる。そこでの眩い生活を夢見ている若者は犯罪に向かってしまう。」と述べた。

■警察:自分達のことも恐れない

エセンユルト広場には警察車両、暴動鎮圧装甲車が配置されている。自動小銃を持った警官たちは、徒歩あるいは車両に乗って巡回している。警官の一人はエセンユルトを次のように語る。「目の前で犯罪を働く。連日、傷害、強盗、あるいはひったくり事件が発生している。ひったくりでは、ナイフで切りつけて逃げようとする。移民だけじゃない。ここの住民もやってきて、外国人のポケットのドルをひったくる。自分達のことも恐れない。」

■警官の兄貴たちも知っている

広場でシリア通りの近くにある茶店で話をしたエセンユルト出身のÜ.Aは、警官たちが犯罪に目を瞑っていると明らかにした。犯罪が常態化しているとして、「ここでは若者たちは職がない。工場に就職できた者は運がいい。ただ大半が非合法、法的ではない仕事に就いている。見てると、働いて生涯にわたって買うことができない車を麻薬を売って数年で手に入れている。若者は実際に『警官の兄貴たちは俺たちのことを知っている』」という。

■貧困の怒り

エセンユルト出身のまた別の市民H.Bのコメントはこうだ。

「ここでは貧困に満ちている。人々はひもじさの中で生きたくなく、刑務所に入るのも視野に入れている。いささかであれ、政府自身がここに犯罪や薬の売人を送り込んだみたいだ。人々が貧困の怒りを蓄積させて、自分達に向けないようにと。管理できる社会を作りたいようだ。一方で酷い乱開発がここらに蔓延った。そのため、統制が効かないほど拡大した。たくさんの家が建設されて、安く家主なりたいと望む者たち、経済力のない人々がここへやって来た。今はここでも家賃が高騰した。麻薬だけではなく、売春も行われている、博打も武器売買も。思い浮かぶ全てのことがここで行われている。犯罪に関わりのない人々はここを出て行きたがっている。なんで止まる理由が。」

■「自由になれると考えたようだ」

エセンユルトの子供や若者にとって社会施設の存在もかなり限られている。エセンユルト選択肢のある文化協会のユスフ・ウル会長は、特に移民のリハビリには文化活動が重要と訴えている。同会長は、シリア、パキスタンといった国から移民してきた女性の状況に触れ、「移民女性たちはトルコで自由になれると考えたようだ。夫が変わるものと。ここでは彼女らの夫は協会のアトリエに来るのを許さない。当初はトルコの女性たちも彼女らに援助するものと思ったようだ。16歳になったばかりで結婚させられようとした子供のために、介入して妨げた」と言って、女性たちが経験する困難を語った。

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:56106 )