(続き)
◆弱った鳩たちの居場所
ここ[バスト・トゥースィー(聖域敷地内の一部)]では鳩たちの周囲に囲いがあり、ここで鳩が飛ぶ姿を見ることはめったにない。いたずら好きな男の子がここにやってくると、鳩たちは一斉に端の方へ向かって羽ばたくが、飛び立ちはしない。男の子はそのうちの1羽を網にかけ、首尾よく一度の挙動で捕まえてしまう。しかしそれでも鳩たちはここの止まり木から飛び立つことはない。社務員がやって来ると、白い鳩を男の子の手から取り上げ、またこの区域内に放す。
ここに勤め始めて3年が経つと言う彼に、「なぜ鳩は飛び立たなかったのですか?どうしてあの鳩をまたここに戻したのですか?」と私が尋ねると、彼はこう答える。「ここにいる鳩たちの大半は、年老いているか、体が弱く病気なのです。健康な鳩がここに留まることはありません。周囲が囲われていることに怖れを感じるのです。」
頭上を見上げると、この若い社務員が間違ったことを言っていないことをより強く確信する。一群の鳩がこの場所の電灯の上にとまり、また別の鳩の群れは飛び回っている。整列してうとうとしたり、エサを食べたりしているこの区域内の鳩たちとは全く違う。若い社務員は言う。「この鳩たちを夜間ここに放しておくことはできません。暗くなったら、鳩が猫の餌食にならないよう、責任者が彼らを鳥籠に集めて連れて行きます。朝になると、再度、鳩たちをここに戻すのです。」鳩たちが夜を過ごす場所は、もう少し向こうの、複数ある支柱の一つの内側に設えられており、それには掛け金と錠の付いた金属製の扉が付いている。
この場所の向かいの窓の上には、「願掛け用寄進物[小麦]を購入する方は所定用紙を用意してください」と書いてある。ここは鳩にあげるための小麦売り場であり、願掛け寄進用の小麦販売担当者がデスクの向こうに座っている。「200トマーン、500トマーン、1000トマーン…3種類の購入用紙があります。それに応じた量の小麦を鳩のために購入できます。」
彼はそう言って、小麦の袋でいっぱいの自分の周囲を指差す。彼によれば、倉庫もまた端から端まで小麦の袋でいっぱいだそうだ。「願掛けをする人たちがこれらの小麦を運び込み、ここに寄進するのです。現在、倉庫には全く空いている場所がなく、常に満杯です。」
しかし、この問題にも解決策がある。バスト・トゥースィーの責任者であり、エマーム・レザー(彼に平穏あれ)廟に勤めて20年になるアフマド・モハンマディヤーン氏はこう話す。「今は、小麦の収穫時期です。ですので、このように倉庫もいっぱいになっています。冬になれば、エマーム・レザーに寄進しようにも小麦がありません。寒い冬の間も鳩たちがエサを食べられるように、私たちは小麦を蓄えておくのです。」
−(4)に続く−
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( 翻訳者:NK )
( 記事ID:56149 )