ハマスが、同地域史上類を見ないイスラエル攻撃をおこなった。数千発ものロケット弾が発射され、国境を突破した過激派がイスラエル市民を銃撃、多数の人質を取った。その後、イスラエルはガザ地区民間人に死の雨を降らせ始めた。どうして今日のような事態に至ったのだろうか。
■ 1-ハマスはなぜイスラエルを攻撃したのか?
2006年からパレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスは、過去数十年にわたる、ガザ地区、パレスチナ人民、エルサレムそしてアル・アクサ・モスクに対する抑圧と暴力に終止符を打つために行動を起こしたと主張している。今回の攻撃は、一週間にわたって祝われる仮庵の祭りの最終日と重なった。この日は、50年前にアラブ諸国がイスラエルに対して第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)を始めた日でもある。ハマスが、イスラエル中が賑わう祝祭期間中に行動を起こしたことは注目すべきだろう。
■ 2-度重なるアクサ・モスクへの干渉との関係は?
イスラエルで最右翼政権が樹立するとアル・アクサ・モスクへの干渉が増加した。たとえば、ユダヤ教の祝祭中に右翼過激派が禁止に反してアル・アクサ複合施設で祝賀行事を行おうと押し寄せ、それにより東エルサレムのパレスチナ人商店主らは店を締めねばならなかった。さらに超国家主義のユダヤ人は、アル・アクサ・モスクはソロモン神殿の上に建てられているのだから、モスクを取り壊して神殿を建てるべきだと主張している。ハマスが自らの攻撃を「アクサの大洪水」と呼んだのはこのためにちがいない。
■ 3-イスラエルの準備不足が攻撃を招いたのか?
イスラエルは防空システム「アイアン・ドーム」によってパレスチナ側からのミサイル攻撃への盾を築いているが、ブルドーザーやパラモーターを使って国境を越えてきたパレスチナ武装勢力に対しては準備不足という事態に陥ったとみられる。アイアン・ドームはたしかに一斉に降り注いだミサイル数百発の一部を破壊することに成功した。とはいえ、ハマス過激派が国境を越えて都市を攻撃し、民間人を誘拐する行為はイスラエルが目を覆いたくなる光景だ。
■ 4-この危機的状況はどう展開していくのか?
ハマスの攻撃の最初の数時間は、攻撃が計画的なものだったことを示している。封鎖されたガザから数千発のロケット弾が発射されたことは、外国からの支援があることを意味しうる。ハマスの保有弾薬(ミサイル)量、ヨルダン川西岸ファタハ政権の関与する可能性の有無、レバノンのヒズボラやシリアの親イラン民兵組織の関与する可能性の有無などが、今後の行方を左右する要素となるだろう。ハマスがイスラエルの民間人を誘拐し、人間の盾として利用する可能性があるならイスラエルは反撃せざるを得なくなる。いずれにしてもイスラエルからの報復は厳しいものとなるだろう。
■ 5-地域への影響は?
ハマスの攻撃は、イスラエルがサウジアラビアとの国交正常化に向けて交渉を続けている真っ最中に起きた。 米国は、イスラエルがアラブ諸国と和平を結び、インドからの輸送網を通じて湾岸諸国が商業的にイスラエルとつながるよう運動している一方、サウジアラビアはパレスチナにとって有利となる譲歩を目論んでいた。イランは国交正常化に反対する一方で、1967年の国境線の地域に、エルサレムを首都とするパレスチナ国家を樹立することを主張している。それゆえに、今回の危機が国境を越えて影響を及ぼす可能性がある。
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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:56450 )