イスラエル―ハマスの戦争におけるヒズボラのジレンマ
2023年10月25日付 Hurriyet 紙
中東は連日、言うなれば火の海と化している状況にある。イスラエルのガザへの爆撃が続く一方、北部ではヒズボラとの衝突が起きている。第二戦線の発生が地域的な戦争を引き起こしうる恐怖が鮮明に感じられる中、ヒズボラが抱えるジレンマが歴史の行方を左右するように見受けられる。
ハマスの攻撃の後、イスラエルはまずガザを標的とした。封鎖されているガザを空・陸から砲爆撃したイスラエルは、陸上作戦を準備する一方で、レバノン国境でヒズボラの武装勢力とも衝突している。
地域での衝突は連日双方の砲撃やロケットの打ち合いと共に続く中、世界は「ヒズボラは戦争に参加するのか」という問いへの答えを探している。
イスラエルの南レバノン侵攻とほぼ同時に誕生したにもかかわらず、ヒズボラは非パレスチナの主要な抵抗組織としてのアイデンティティを保った。
シーア派であるこのグループは、救世主としていつでも現れると信じられているイマーム・マフディ(第12代イマーム)への期待に触発されている。
しかし、同時にスンナ派の中にも多くの支持者がいる。
イラン同様に、ヒズボラは宗教関係者や軍指揮官のネットワークによって指揮されている。
3月14日同盟に対するレバノンの3月8日同盟の一部であるヒズボラは、民兵組織であると同時に政治的勢力としての姿も見せている。
ヒズボラのメンバーのほとんどは社会下層部出身であり、指導部は社会上層、つまり宗教関係者や実業家の支援を受けるベイルートのエリート層から構成されている。
1982年に設立されたヒズボラの歴史の相当部分は、イスラエルに対する闘いからなっている。
当然ながら、ヒズボラがイスラエルに対して第二次戦線を開くかどうかは、最近の最も注目される話題の1つである。
レバノンの経済危機と宗派対立がヒズボラが2006年当時に広範な人々から受けた支持が今日存在していないことを示している、としばしば述べられている。
テルアビブ大学国家安全保障研究機関(INSS)の総局長であるマヌエル・トラジュテンバーグ教授は、ヒズボラはあるジレンマに直面していると指摘する。
同教授は「もし行動を起こさなければ、抵抗の枢軸内での地位が低下する。これは彼らにとって深刻なジレンマだ」と述べ、ベイルートの指導者たちと現場のヒズボラのメンバーたちとの間に緊張が生まれていると主張した。
ヒズボラのナンバー2であるナーイム・カッサムは、アメリカやヨーロッパにもガザで民間人が死亡していることの責任があると述べ、自分達がガザ防衛の中心におり、ガザ、ヨルダン川西岸地区、レバノン、そして全地域でイスラエルと闘うつもりだと強調した。カッサムは、昨日ツイッターに投稿したメッセージの中で「戦争で我々が必要とされたなら、我々の指は引き金の上にある。」と述べた。
トラジュテンバーグ教授は「現場の指揮官たちは、とても長い間計画し、訓練を受け、準備が出来ているため、行動を起こしたがっている」と述べ、次のように続けた。「指導部との間に緊張が走っていることは知っている、これは危険なことだ。」
アミティ大学のマンジャリ・シン教授は、このジレンマに関して「ヒズボラの決断を左右する2つの懸念がある。1つは、この戦争がイスラエル―ハマスを中心とする衝突であり続け、ヒズボラの参戦が、ハマスの協力者というだけの状態になることだ。ヒズボラがこの役割を担う準備が出来ているかどうかは確かではない。第二に、このようなシナリオではアメリカが西側連合と共に地上攻撃でイスラエルへ支援を提供するために動くことは確実である。」と述べた。
シン教授は「ヒズボラは非常に洗練された武器と、ガリラヤ北部からイスラエルを攻撃するために必要な装備を持っていようとも、イスラエルの友好国も戦争に参加すれば、このような攻撃も大きな結果はもたらさないだろう」と述べ、したがってヒズボラが全面的な攻撃を行う可能性はあまり見られないと指摘した。
テルアビブ大学国家安全保障研究機関の上級研究員で、元イスラエル国防軍軍事諜報部分析官であるオルナ・ミズラヒ氏は、過日、北部での戦争の可能性に関して詳細な分析を発表した。
「戦争が続けば、北部で緊張が激化する危険性は高まる。ヒズボラはイランの指導の下、戦争期間中は確実に北部での衝突のレベルを高く保とうとする。南部の動向は、特にイスラエル国防軍の地上作戦が始まった時に進展するだろう。」
ワシントンDCのシンクタンクである大西洋評議会でヒズボラの専門家であるニコラス・ブランフォード氏は、アルジャジーラに対してコメントし、まさにアクサ・フラッド作戦の際と同様に、ヒズボラが戦時にイスラエルに潜入するために訓練を受けた特殊部隊を設けていると述べた。
このような攻撃はアメリカのジョー・バイデン大統領を含むアメリカ政府関係者が必死に避けようとしているより広範な地域的紛争へ導くだろう。
第一次世界大戦は、紛争を望まないアクターたちがいかにして大きな紛争に直面したかを示す最も顕著な例だろう。
現在の状況では、紛争がガザとイスラエルの範囲で留まる可能性が未だ高い。しかし、これが急速に変化することも十分あり得る。
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( 翻訳者:伊永勇人 )
( 記事ID:56592 )