イスラエル—ハマス問題の影で、アメリカのハーバード、ペンシルベニア、MITの3つの大学が反ユダヤ主義の主張によって危機に陥っている。ユダヤ人の虐殺に対して明確な態度を取らなかったため、ペンシルベニアの学長は辞任に追い込まれた。他の2大学の学長も圧力を受けている。親パレスチナの活動家たちが大学で掲げた、イスラエルを無視する「川から海までの自由」というスローガンは反ユダヤ主義とみなされている。
イスラエルが10月7日からガザで続けている虐殺に対して、アメリカの最も優れた教育機関とされるアイビー・リーグの大学キャンパスで続く抗議運動で、戦争に反対する学生たちによって掲げられたスローガンが国を揺るがした。
■「ユダヤ人虐殺」問題
反ユダヤ主義と反ユダヤ人活動が行われたため、ハーバード、ペンシルベニア、マサチューセッツ工科大学の学長は、先週アメリカ下院教育・労働委員会で証言するために招かれた。共和党議員のエリセ・ステファニク氏は、ペンシルベニア大学のエリザベス・マギル学長に「ユダヤ人の大量虐殺を呼び掛けることはいじめに見なされるか、それとも嫌がらせに見なされるか」と問うと、マギル学長は「個人に向けられ、暴力的で広範囲のモノであれば嫌がらせだ」と述べた。ステファニク氏は、「つまりあなたの答えは、はいですね」と問い詰めた。学長は「これは文脈に依存する決断です、議員」と述べ、アメリカの政治、全米の学界は騒然となった。
■スローガンを掲げることは禁止なのか
親パレスチナの活動家たちが数カ月にわたって掲げ続けてきた「川から海まで、パレスチナは自由になる」というスローガンは、いくつかの面から反ユダヤ主義的であり、大量虐殺を呼び掛ける意味を持つという主張がなされた。世界で最も広く包括的な表現の自由を有すると称されるアメリカで、たった1つのスローガンを掲げることが罪なのかどうかについて議論が続いている。
■ロビーが立ち上がる
週の間、親イスラエルロビー、議員、学会から反発を受けたマギル氏は土曜日に辞任を余儀なくされた。マギル氏は辞任声明の中で、「この素晴らしい大学の学長を務められたことは私の栄誉でした。ペンシルベニア大学の重要な使命を推進するために教授、学生、スタッフ、卒業生、そして地域の人々と働けて光栄です」と述べた。マギル氏の後任は未だ明らかではないが、ジュリー・プラット北米ユダヤ人連盟会長がペンシルベニア大学理事会の暫定会長に就任した。プラット氏は以前副会長を務めており、学内の反ユダヤ主義問題に焦点を当てることが予想される。
■他の学長も標的に
同じ議会委員会の公聴会に出席し、同じ質問に答えるように求められたハーバード大学のクローディン・ゲイ学長もイスラエルロビーから非難を受けている。ユダヤ人の大量虐殺に呼び掛けることが、大学の規則に反するかどうかということを問われた際、ゲイ氏も同じように、「反するかもしれない、文脈による」と答えた。ゲイ氏への圧力が雪崩のように高まる中、ハーバードに勤める500人以上の教授が学長を擁護した。議会で証言したアイビー・リーグのマサチューセッツ工科大学のサリー・コーンブルース学長もロビーの標的である。
■アメリカメディアが学長たちを非難「仮面が剝がれた」
3人の学長が議会委員会で述べた発言は、アメリカ世論を席巻し続けている。直近では、ウォールストリート・ジャーナル紙の社説で、3人の学長は「アメリカの価値観を損なっている」と非難されたアメリカの進歩的政治サークルのメンバーであるとして批難した。学長の議会公聴会での発言で「両義的」な態度を見せ、公聴会がアメリカ学会の「知的、政治的堕落の仮面を剥いだ」と述べた。アメリカの高等教育機関のいくつかが「アメリカの原則を損なう見解を助長している」と主張し、この問題に「早急な対処が必要だ」と主張された。
1危機はどのように始まったのか
イスラエルとハマスの間の戦争が始まって間もなく、ハーバード、スタンフォード、マサチューセッツ工科大学、ペンシルベニアのようなアメリカの最も優れた学校を含む、いくつかの高等教育機関で、ガザ地区に対するイスラエル軍の不当な攻撃に抗議する学生デモが組織され始めた。デモにおいて学生たちがイスラエルを大量虐殺で非難する横断幕やプラカードを使用したことが、大学の大口寄付者たちに不快感を与えた。特にイスラエルと関係のある大手基金や企業の経営者たちは、大学当局がイスラエルを「明確に」支持していないと非難し、寄付を撤回すると脅した。
2主張はどこから出てきたのか
11月中旬にアメリカ教育省は、7つの学校について、「反ユダヤ主義・反イスラム主義」を含むとされる行動に関する苦情を受け、調査が始められたと発表した。反ユダヤ主義の苦情の主な理由については、パレスチナの抵抗組織と同様の「川から海までの自由なパレスチナ」や「反乱」のスローガンが、「ユダヤ人虐殺」の呼びかけを行っているという解釈である。これらのスローガンが、イスラエル国家の存在を抹消することを表現していると考えられている。
3学長たちはなぜ証言したのか
ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長、ペンシルベニア大学のエリザベス・マギル学長、マサチューセッツ工科大学のサリー・コーンブルース学長が12月5日に、アメリカ議会の教育・労働力委員会に出席し、キャンパスにおける反ユダヤ主義の非難に対して発言した。共和党のエリス・ステファニク下院議員は、ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長に、「ユダヤ人の大量虐殺を呼び掛けることは、ハーバード大学のいじめや嫌がらせに関する規則に反するか」と質問した。ゲイ氏は、「文脈によっては反するかもしれない」と答えた。ステファニク議員は、「文脈とはなんだ」と2度目の質問をした。これに対してゲイ氏は、「ある個人が標的にされているならば」と答えた。すると議員は、「ユダヤ人学生、ユダヤ人個人が標的となっている」と続けた。ペンシルベニア大学のマギル学長は、ステファニク議員の質問に対して、表現が行動に移されれば、学校の規則に違反することになると述べて返答した。そして学長たちは、この質問の後、自分たちがユダヤ人虐殺を支持するような立場であることに気付いた。
4これからどうなるのか
ハーバード大学のゲイ学長とペンシルベニア大学のマギル学長は厳しい反発の後、議会公聴会での発言を謝罪し、マギル氏は圧力の結果、土曜日に学長を辞任した。議会で学長たちに質問した共和党議員のエリス・ステファニク氏は、マギル氏の辞任の後、「1人辞任した。あと2人だ」と投稿したが、他の2人の学長の行く末に興味が注がれている。ハーバード大学史上初の黒人女性の学長であるゲイ氏は同僚たちから支持されている一方、マサチューセッツ工科大学のコーンブルース学長にはより強い圧力がかかっているという。一方、ハーバード大学の4人の学部生がパレスチナ支持のデモを組織したという理由で懲戒手続きが始められることが発表された。
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( 翻訳者:伊永勇人 )
( 記事ID:56901 )