反政府シリア国民軍(SMO)は、シリアでユーフラテス西部のテロ組織PKK/YPGの排除を行っている。テロ組織をトルコ国境から18km離れたテル・リファトから撤退させたSMOは、今回PKK/YPGをマンビジから撤退させようと、戦っている。
シリアで反政府勢力が先週始めた大規模作戦によって、現場の状況を短期間で大きく変えることに成功した。アレッポが政権軍およびテロ組織PKK/YPGから奪還された後、タハリール・アル=シャーム主体の一部のグループが南のハマ県に向かい、シリア国民軍はマンビジへと進軍した。現地で大きな動きが見られる3つ目の地域は、PKK/YPG勢力が政権軍およびイランの民兵と衝突しているデリゾールの郊外地域だ。
■三方から包囲
「自由の夜明け」作戦により、テロ組織がアレッポとテル・リファト、シャフバの間に形成しようとしていたテロ回廊の設立を阻止したシリア国民軍(SMO)は、このルートを遮断した後、テル・リファトをテロ勢力から解放した。昨日、PKK/YPGがフラト川西岸で最後に保持していた拠点であるマンビジに向かった反体制派が、南側からフラト川に到達し、都市を三方向から包囲したとの情報が入った。また、テロリストが地域を放棄する可能性があるとの報告もある。
マンビジ西部では、テロ拠点の背後に侵入攻撃が行われたとされている。マンビジがテロ勢力から完全に解放されることは、2019年10月に署名されたソチ合意が実現することも意味する。この合意では、PKK/YPGがテル・リファトとマンビジから撤退することが想定されている。
■ハマで激しい戦闘
HTŞ(タハリール・アル=シャーム)や他のシリア反体制派グループがアレッポ制圧後に向かったハマ方面では、戦闘が続いている。政権軍がアレッポから移動させた部隊が、ハマ北部に構築した防衛線で激しい戦闘が発生しているとの情報がある。イギリス拠点のシリア人権監視団(SOHR)は、ロシアおよびシリア軍の航空機がハマの農村地帯とイドリブに対して集中的な空爆を実施していると報じた。
■デリゾールも活発化
現地で動きが見られるもう一つの地点はデリゾールの農村地帯だ。SOHRによると、ここでは政権軍およびイラン民兵とPKK/YPG勢力の間で激しい戦闘が繰り広げられており、アメリカ主導の国際連合軍がPKK/YPGに航空支援を行っているという。デリゾールの農村地帯にある7つの村で戦闘が激化しており、現在のところPKK/YPG側に進展は見られないと伝えられている。
■5万人が避難を余儀なくされる
一方、シリアで久しぶりに激化した戦闘は、多くの民間人が避難を余儀なくされる事態を引き起こしている。国連の発表によれば、過去1週間で少なくとも5万人の民間人が避難を余儀なくされており、この数がさらに増加する懸念があるという。また、国連は戦闘によって医療施設、教育機関、市場といった民間人の生活に不可欠な施設も被害を受けていると警告し、緊張緩和を呼びかけた。シリア人権監視団(SOHR)のデータによると、戦闘開始以来、少なくとも457人が死亡し、そのうち72人が民間人である。
■イランとイラクからアサド政権への支援なし
シリアのアサド政権を支持する姿勢を示しているイランとイラクだが、バッシャール・アサド政権への直接的な支援にはこれまで決定的な動きを見せていない。イラク国境からシリアに進入したイラン支援の民兵グループがいるとの報道もあるが、その支援が戦況を変えるほどの影響を持つかどうかは不透明だ。
一方、最大の支援者であるレバノンのヒズボラは、イスラエルとの衝突により関与を控えているため、アサド政権はイランやイラクからの支援に頼らざるを得ない状況にある。イラク政府はシリアの戦闘への介入に慎重な姿勢を示し、国境を閉鎖して部隊を増強し、国境の安全確保を最優先している。しかし、国内ではカタイブ・ヒズボラのような有力なシーア派グループがスダニ首相に対し「アサドを支援せよ」という圧力を強めている。
また、5年前と比較して影響力を低下させたロシアは、タルトゥス海軍基地に駐留している軍艦を沿岸から離脱させ始めたと報じられている。
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( 翻訳者:橋本響 )
( 記事ID:59175 )