シリアでクルディスタン労働者党(PKK)やクルド人民防衛隊(YPG)と戦うことに関して、非常に重要なプロセスが舞台裏で動いている。シリアにいるPKKやYPG、トルコにいるPKKを非武装化するために重要な作業が行われている。
トルコではクルド問題の解決とテロ組織PKKの排除に関して、何度も解決プロセスが進められてきた。
◾️解決プロセス
[時の指導者]オザル、エルバカン、エルドアン氏らの時代に解決プロセスが行われたが、解決には至らなかった。最初の解決プロセスはイギリス、2番目は米国が妨害した。PKKは毎回、未解決を望み、プロセスを妨害する勢力の味方に付いた。時にはトルコの分裂を望み、時にはシリアに衛星国家を建設するという妄執に取り憑かれた。彼らはイギリスや米国が自分たちの国家建設を認めるものと信じた。いつ何時もトルコを中心とする議題となることはなかった。カンディル[カンディル山脈:PKKの中心地として知られるイラク・イラン国境にある山脈]はこの目標を諦めたわけではない。しかし、[警]鐘は彼らのために鳴っている。
◾️パワーバランスの変化
(勢力間の)情勢が変化したからである。PKKやYPGは政治的支援を失った。シリアで新たなパワーバランスが出現した。シリアでは戦場がものを言う。戦場でもトルコは発言権を持つ。PKK-YPGはシリア駐留のアメリカ中央軍(US-CENTCOM)の司令官はマガーク氏の計画に沿って、6月と8月に自治政権のため2つの動きを行った。しかし、トルコが距離をとったことを受けて、後退しなければならなくなった。アサドが統治し、米国が影響力を及ぼしたシリアでは、自治を成し遂げられなかった。12月8日以降、シリアでパワーバランスが変化した。バアス政権が崩壊し、アサドが亡命した。シリアの反政府勢力が国を掌握した。ロシアやイランの役割が弱まり、トルコの影響力が高まった。
◾️シリアのカギ
米国で選出されたトランプ氏が述べたように、「シリアのカギはトルコにある」。トランプ氏は「エルドアンは非常に賢い。アサド政権転覆の裏にはトルコがいる。」と話した。トランプ氏が指摘したトルコは、戦場でも交渉の場でも強い。トルコがいるシリアではPKK-YPGの居場所はない。PKK-YPGの足下の絨毯は片づけられた。
◾️PKK-YPGに居場所はない
新たなシリアがある。PKK-YPGがその情勢の中では上手くいかず、新たなシリアで成功を遂げることは不可能である。PKK-YPGは狩りに向かう際に狩られた。もはや新たなシリアがあり、新たな情勢とそれがもたらす条件がある。
新たなシリアでPKK-YPGに居場所はない。PKK-YPGは、米国の支援を入れ込むことで新たなシリアでの居場所を求めて奮闘している。しかし、そのノートは閉じられた。
◾️PKKの混乱
PKKもこれに気づいている。カンディルは混乱した。指導者のムラト・カラユランは「我々はシリアに存在しないことを公式に宣言する。」という発表をしなければならなくなった。PKKやYPGは新シリア政権と接点を持つため、ダマスカスへ代表団を派遣したが、ジャウラーニー氏との会談は成功しなかった。
[シリア民主軍の]マズルーム・コバニーは「YPGの勢力は米国の監視下で非武装化せよ。この地域は兵士から一掃されるべきだ。シリア北部のアレッポ郊外のコバニーでは非武装化された地域を築く準備ができたと聞いている。」と発表した。
◾️新たなシリアの未来
PKKやYPGの取り組みは新たな作戦を避けることだ。そのために時間を稼ごうとしている。新たなシリアで彼らの場所を作ろうと画策している。アメリカをミッションに就かせようと呼び掛けている。新たなシリアの現実がある。新たなシリアの現実の中心にはトルコがいる。トルコ政府は眠らない。トルコはすべてを分かっている。素晴らしいのは、シリアの新政権もこれを認識していることだ。
◾️ジャウラーニー氏の警告
ジャウラーニー氏は「ハセケとラッカ[という場所にいる勢力]には二つの解決策がある。彼らが撤退するか、軍事作戦で地域を我々が解放するかだ。もしPKK-YPGと戦闘が生じるとするならば、我々は準備ができている。しかし、血が流れないで解決することを我々は願っている。」と述べた。
これは重要な警告だった。
テル・リファトとマンビジは、シリア国民軍によってPKKやYPGから解放された。デリゾールはPKK-YPGから奪取された。テロ組織はラッカとハセケで示威行動をしている。抵抗しようとしている。しかし、PKK-YPGへ与えられた時間は終わった。テロ組織がラッカやハセケから撤退することが期待されている。しかし、PKK-YPGが抵抗しようと立ち上がれば、軍事作戦が行われる。血が流れることになるだろう。
◾️PKK-YPGの非武装化
PKK-YPGは、武器を捨てシリア軍に加わるか、掃討されるのかのどちらかになるだろう。選ぶのは彼らである。どの選択を取ったとしても相応の結果が伴うだろう。
PKK-YPGの非武装化に関して、計画がある。この計画に基づくカレンダーが作成されている状況だ。
ジャウラーニー氏は、「武装勢力は解体される、彼らは国防省の一員となるよう訓練され、全員が法律に従うことになる。」と述べた。
トルコのヤシャル・ギュレル国防大臣は、「シリア国外から来た組織メンバーはシリアから出国することになる。シリア人は非武装化することになる。」と明言した。
◾️計画
この計画は以下の通りだ。
1-3月に暫定政府が樹立される。
2-暫定政府はシリアでのすべての武装勢力へ非武装化を呼びかける。
3-非武装化の過程で監視とチェックの体制が作られる。
4-PKKやYPGの中でシリア人ではない者は出国する。
5-PKKやYPGの司令幹部はシリアを出国する。
6-武器を捨てたPKK-YPG戦闘員はシリア軍に加わる。
◾️その地域はどうなるか
ここで、二つの点が注意を引くだろう。
PKK-YPGが武器を捨てる。シリア軍へ加わる。では、PKK-YPGが統治していた地域はどうなるか?
マズルーム・コバニーはこの地域が米国の監視下に入ることを望む。米国の管理下ということはPKKの存続を意味する。これが米国とPKK-YPGの計画だ。トルコと新たなシリア政権の計画は異なる。この地域はシリア政権とトルコの管理下になるだろう。もし、この地域がPKK-YPGの管理下のままだとしたら、他の武装組織が反旗を起こす可能性はないのか。
◾️折り合うか戦闘
もし、新たなシリアが単一政府になれば、シリアがテロ組織を排除し、単一のシリア軍でなければならない。譲歩してはいけない。新たなシリアでPKK-YPGに居場所はない。非武装化するか、排除されるかだ。つまり、折り合うのか戦うのか、ということだ。
◾️カレンダー
ここで、一点気になる点がある。カレンダーが議題だ。このため、3月1日に暫定政権が樹立されてからだと述べたのだ。
3月1日に暫定政権が樹立される。新シリア政権は国際社会から承認されるだろう。憲法制定のために制憲議会が設立されるだろう。3月1日以降、PKK-YPGの非武装化プロセスが開始される。
「最大の勝利は戦わないで得られた勝利だ」という。さらに「敵が撤退しているら、彼のために金の橋を架けよ。」という言葉もある。
◾️戦わない勝利
トルコは現在、最大の勝利を得るために金の橋を架けようとしているところだ。
シリアで行われるPKK-YPGの非武装化の仕組みは、少しの違いはあれどトルコでもPKKに対して適用可能なのか?
この問いは重要で、プロセスは喫緊だ。
◾️PKKの排除
トルコはテロ組織PKKを排除するため、片足がシリアで、他方の足がトルコにある大きな取り組みを進めている。
新たな時代を注意深く見る価値がある。
(本記事はアブドゥルカディール・セルヴィ氏のコラムである)
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( 翻訳者:大屋千寛 )
( 記事ID:59315 )