■給与は上昇するも、労働者の暮らしは改善したのか…購買力とサービスの改善をどう評価するか、専門家がシリア経済の現状を分析
【ダマスカス:本紙】
長年にわたる経済のひずみを経た国では、給与の価値を数字だけで測ることはできない。より重要な基準となるのは、その給与によって実際にどれだけの商品やサービスを購入できるのか、また、国民が支払った金額に見合う実質的かつ安定したサービスを受けられているかという点である。現在の段階ではさらに、生活費が上昇を続けるなか、給与引き上げが購買力の実質的な改善につながったのかという、より複雑な問いも浮上している。
ハマー大学経済学部で金融・銀行論を教えるアブドゥッラフマーン・ムハンマド博士は本紙に対し、現実のデータに基づいて経済を前向きに評価するのであれば、現在の状況を、旧体制下でシリア国民が経験した以前の段階と切り離して考えることはできないと説明した。当時は名目所得がほとんど価値を失い、基本的なサービスも存在しないか、行政腐敗や日常的な搾取の対象となっていたという。国民は、補助対象とされていた電気、水、パンを手に入れるために、財布より先に尊厳を代償として払っていたと述べた。
同氏は、現在もさまざまな課題が残っているものの、国家と国民の関係をより透明な基盤の上に再構築しようとする経済的な動きがあると指摘した。サービスの料金は以前より高くなったものの、実際に提供されるようになり、国民は空約束ではなく、受け取るサービスに対して実際の料金を支払うようになったという。同氏は、これ自体が、公平な経済評価を行ううえで注目すべき根本的な変化だとみている。
国民の所得は本当に改善したのか
国民の所得は実際に改善したのか、それとも給与の引き上げは数字の上だけにとどまっているのかとの問いについて、ムハンマド氏は、旧体制時代との単純な比較でも、国民の所得は実質的な価値と、それを自由に使える余地という点で改善したといえると述べた。ただし、なお期待される水準には達していないという。
以前は、そもそも手に入らない商品に給与を費やしたり、その大半を賄賂や、国家が提供できないサービスの代金として支払ったりしていた。一方、現在は物価が上昇しているものの、給与は国民が実際に受け取ることのできる必要なものに使われるようになった。電気が家庭に供給される時間は長くなり、通信サービスも仲介者を必要とせず利用できるようになり、パンも価格は上がったものの、安定的に供給されるようになったと説明した。
この意味で同氏は、給与引き上げはもはや紙の上の数字だけではなく、生活の目に見える安定に反映されるようになったとみている。ただし、その姿が理想的な形で完成したわけではないとも付け加えた。
購買力とインフレ
現在のシリアで給与の実質購買力をどのように測るべきか、また、単に給与の上昇率を見るのではなく、国民が必要とする労働時間や、購入できる商品・サービスの量を基準とすべきではないかとの問いについて、ムハンマド氏は、現在のシリアの状況では、インフレ率だけに依存しない複合的な比較が最も公平だと述べた。
そのためにはまず、給与によって実際に入手できる商品やサービスの数を見る必要があるという。以前は商品が闇市場でしか入手できず、価格も何倍にも跳ね上がっていたが、現在は正規の形で誰でも購入できるようになっている。
また、電気や通信といった基本サービスを得るために必要な労働時間も考慮すべきだとした。以前は追加の発電機アンペア契約や通信回線を手に入れるため、何日分もの労働に相当する費用や、通常の何倍もの金額を支払う必要があったが、現在では正式なサービスとして、明示された統一料金で提供されるようになったという。
さらに、以前の大混乱と比べた為替レートの相対的な安定も比較に含める必要があり、それによって各家庭が月単位で生活設計を立てることが可能になったと指摘した。
このためムハンマド氏は、現在の購買力は、旧体制末期の経済崩壊時を基準に比較すれば改善しているとみている。当時は給与の価値を購入できる商品の数ではなく、パン屋や発電機、ガソリンスタンドで何時間待たなければならないかによって測らざるを得なかったという。
生活改善か、それとも給与の再配分か
基本サービス料金の上昇が賃上げの効果に与える影響について、それが生活水準の改善を意味するのか、それとも給与の支出項目が組み替えられただけなのか、また国民が購買力の実質的な改善を感じるためには最低限どの程度の引き上げが必要なのかとの問いに対し、ムハンマド氏は、比較の観点からみれば、現在起きているのは単なる給与の再配分ではなく、生活水準の段階的な改善だと述べた。
同氏によると、国民は以前も同じサービスに対して現在よりはるかに多くを支払っていたが、それは自家発電機、飲料水の購入、高額な通信費など、非公式な経路を通じたものだった。現在は支払った料金が利益を得る者の懐ではなく国庫に入るため、理論上はインフラやサービスの改善に還元されることになる。その効果は直ちには現れないものの、中期的には表れるという。
また、移行期経済には、改革当初の痛みが崩壊時の痛みと同程度になることもあるという基本的な考え方があると説明した。ただし、前者は最終的に回復へ向かうのに対し、後者はさらなる崩壊へとつながっていた点が異なると述べた。
国民が実質的な改善を感じるために必要な最低限の水準について、ムハンマド氏は、現時点では、基本サービス費の上昇分をすべて補い、さらにその5~10%程度の余裕を確保できる賃上げであれば十分だと説明した。ただし、電気、通信、交通サービスの供給と安定性が継続的に改善することが条件になるという。
また、現在の段階で改善を実感する要因は、給与額だけではなく、混乱、無秩序、搾取の時代が終わることにもあり、複数の地域ですでに国民がその変化を感じ始めていると指摘した。
ムハンマド氏は最後に、経済学的な観点から、シリア経済はいま、旧体制時代のような崩壊危機ではなく、移行期の回復段階にあると述べた。生活上の負担がなお大きく、給与も十分な水準には達していないことは事実だが、全体的な方向性は、混乱と不足の経済から、正規のサービスが提供される経済へと向かっているという。
さらに、本当の改善を示す指標は給与額だけではなく、国民が、自らが支払ったものに対して目に見えるものを受け取っていると感じ始めたことにあると述べた。かつて闇のなかで売買される希少な商品だったサービスが、現在では明示された料金を支払うことで受けられる権利へと変わりつつあるという。同氏は、これ自体が国家と国民の関係における歴史的な変化であり、慎重な楽観のもとで発展させる価値があるとした。そのうえで、この流れをすべての人にとってより良い生活実態へと転換するため、財政・サービス改革を継続する必要があると述べた。
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( 翻訳者:国際メディア情報センター )
( 記事ID:62216 )