【アッバース・サーベティー・ラード】多くの考古学者よれば数千年の文明の揺籃の地であったとされる古代の川のほとりに、今日の人々の生活のためであるとして巨大ダムの建設が始まっていた。このダムは、我々の古代遺産を大量の水によって水没させ、我々をさらなる忘却へといざなうものであった。日本の考古学者たちが、我々が何年も前に忘れてしまっていた遺跡を粘り強く調査していたのは、まさにこのようなときだった。

　そして、いまだスィーヴァンド・ダムが完成していなかったころ、6千年前の人類に関する貴重な遺跡が見つかったとの一大ニュースが伝えられたのである。

　この報が伝えられたのに続き、ドイツ人考古学者たちも数体の人骨を発見した。この人骨は原始的な方法で埋葬されており、この川の周辺に文明が眠っていることを表すものであった。

　当初この出来事に対しては、いかなる声も上がらず、言及すらなかった。ほどなくして、この話題は報道関係者に取り上げられるようになり、それをめぐる報道やコラム、論説が数多く書かれ、まるでこの出来事を取り上げることだけが報道関係者の全責務であるかのような雰囲気となった。

　スィーヴァンド・ダムへの給水のニュースが報じられてまもなく、〔ダムにほど近い場所にある〕ボラーギー峡谷が、歴史の奥底より姿を現した。それは我々にとって、新しい遺跡であった。ダムは確かに、発展のためには重要なものであったかもしれない。それは確かに、我々が通ったことのない道を通るには必要な方法であったかもしれない。

　時には銃弾によってヒンドゥークシュ山脈の真ん中にある仏像を破壊することも、またダイナマイトによって古代遺跡や古代の名残を今に伝える遺物を破壊することもできる。この二つにどんな違いがあるというのだろうか。

　ガージャール朝の無知な王たちがしたように、いつも空っぽな国庫を満たしてもらうために、古代の遺産を〔欧米の〕強国に売り渡してしまうことさえもできる。時には発展のため、《新世界》に肩を並べるため、近代的な生活のため、と称してダムを建設し、一年に一人の旅行者も通ることのない場所を壊すことも可能だ。我々は時に、無慈悲な気持ちで造り、慈愛に満ちた気持ちで壊してしまうことがあるのである。

注）スィーヴァンドはシーラーズの北を流れる川の名称。この川にダムを建設することで付近の洞窟遺跡が数多く水没すると危惧されている。