■ 3人死亡、26人負傷 新たな爆破事件の標的は米大使館車両と米政府調査団
■ カランティーナで爆破事件:「レバノンは地域的・国際的メッセージが投函される郵便局となった」
■ 本日、多数派勢力は対話の代表者を決定するため、アラブ連盟事務局長に反対派勢力の意向を照会
2008年1月16日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
大統領選出をめぐる危機と地域レベルの危機が互いにますます影響を深める中で昨日、カランティーナで爆破テロ事件が発生し、多方面へメッセージを発した。最も注目されるのは、爆破事件が起きたのがアラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長が今日ベイルートを再び訪れる直前であったことであり、ムーサー事務局長がアラブ連盟提案を携えて到着する直前の今月8日にUNIFILを狙ったルマイラでの爆破事件が起きたことと相似している。
爆破事件の意味について様々な解釈がなされる中で観測筋は、今回主要な標的となったアメリカ大使館の外交用車両に代表されるように、アメリカが標的となった点に着目した。アメリカを標的とした意図は、ジョージ・ブッシュ米大統領の中東歴訪やそれに付随する事柄、特にアラブ首長国連邦での(ブッシュ大統領が表明した)イラン、シリア、ヒズブッラーに敵対する姿勢への反発である。
ある外交筋は本紙に対し、「2004年の秋以降のレバノンにおける出来事の流れの中でアメリカのプレゼンスが標的とされるのは今回が初めてであり、このことは、1975年のレバノンでの出来事の最初の段階で起きたように、外国やアラブの使節団が相次いで標的とされる道が開かれたのではないかという恐れを喚起するものだ」と述べた。また、昨日カランティーナで起きたことは「郵便箱に変わってしまったレバノンに投じられた地域的・国際的なメッセージ」である、と指摘した。
■ アラブ連盟提案
しかし、カランティーナでの爆破事件で巻き上がった塵芥によっても、今日からベイルートで始まるムーサー事務局長の協議の第2ラウンドに対する政府高官や政治家の注目が削がれることはなかった。
ある多数派勢力の関係者が本紙に話したところによれば、同勢力は反対派勢力との交渉スケジュールを知るために今回の訪問をつぶさに見守る予定であり、反対派勢力が今尚アラブ連盟提案に賛成しているのかどうかを把握する意向だという。と言うのも、「変化と改革ブロック」代表のミシェル・アウン議員の最近の発言では、直接国民投票による共和国大統領の選出や、移行政府を組閣して議会選挙を前倒し実施することを求めるなど、提案とは何の関係もない事柄に優先順位が置かれていたからだという。
この多数派勢力関係者は、「ムーサー事務局長が反対派勢力との協議で得た結論に基づいて、多数派勢力は反対派勢力との対話において代表となる人物を決定する予定であり、今回は必ずしも『ムスタクバル・ブロック』代表のサアド・アル=ハリーリー議員とは限らない」と説明した。
反対派勢力側の関係者は、「今月27日より前に行動を激化させたり、街頭行動に出たりすることはない」と述べた。27日にはアラブ諸国外相会議が開催され、アラブ連盟提案を実施するためにムーサー事務局長が行っている努力の結果を検証する予定である。この反対派勢力関係者は、3月にダマスカスで予定されているアラブ首脳会議までは大統領も内閣も決まらず、こうした遅滞状況は、治安の安定や現政府による最低限の残務処理を保証するような「現状」についての相互理解が存在する中で、おそらく次期国会選挙まで続くのではないか、との見解を示した。
■ 政府の主張
ある内閣筋はこうした見方に対して反論し、今日からの協議においてアラブ連盟事務局長が耳にすることになるのは、アラブ連盟提案を「ミシェル・スレイマーン国軍司令官を直ちに[大統領に]選出、次いで同司令官の主導のもとで組閣、それから新しい選挙法を準備」という順序で実施するべきだという立場である、と強調した。
一方、反対派勢力が利用しようとしている日常生活の危機に関しては、この内閣筋は「政府の決定は、もしそのために密輸業者が小麦をレバノン国外へ流出させる可能性が出るとしても、レバノンを小麦で溢れさせることである」と述べた。また、「ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長が首相になれば、世界の原油価格を下げることができるとでもいうのだろうか」と述べ、「レバノンは、イランを含めて世界の多くの国よりもよく燃料への支援を行っており、それゆえ、こうした圧力によって政府が脅かされることはない」と明言した。
(後略)
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翻訳者:森本詩子
記事ID:12987