人間の虐待を受けた希少種マヌルネコ、獣医の懸命の治療で一命を取りとめる

2009年05月14日付 E'temad-e Melli 紙

野生動物に対する残酷な虐待・密猟が、イランでここ最近増加の一途を辿っており、イランの多くの希少種の命を奪っている。

 〔イラン南東部〕ケルマーンでは、毒物を口にしたことで死亡したと思われるチーターの死体が二頭並んで発見された。それ自体、イランの野生生物にとって大いなる悲劇であるといっていいこの事件から2ヶ月弱で、密猟や地元住民による動物虐待がエスカレートしていることを物語るニュースが次々と報じられるようになっている。

 例えば、〔イラン南西部〕ロレスターンでは、妊娠期に入ったばかりの雌のヒョウ一頭が密猟に遭っている。密猟者の逮捕に向かった環境保護の係官たちはその数日後、密猟者の逮捕に成功したが、そこからは三頭のヒョウの子供の死体が麻袋に入った状態で発見されている。また〔テヘランの北西にある〕ガズヴィーンでも先週、妊娠中のヒョウが密猟者たちの銃弾を受け、命を落としている。

 そして〔テヘラン州北東部に位置する〕フィールーズクーフでは、一頭のマヌルネコが地元住民から虐待を受け、ケガをした状態で発見されている。このマヌルネコは、地域の環境保護官らの努力と、獣医たちの適切な処置のお陰で一命を取りとめとめ、「イランでもっとも幸運なネコ」との別名まで頂戴している。

 マヌルネコは、イランにいるネコ科の動物の中でももっとも希少なネコの一つで、最近ではフィールーズクーフや〔テヘラン東部の〕ハジール国立公園といったテヘラン州の一部地域で数回目撃されている。近年、テヘラン州自然環境局はこの希少種の一部生息地域を保護区として登録しようと努力している。

 環境保護官たちがケガをしたマヌルネコをフィールーズクーフ近郊で発見したのは、先週末のことだった。この雄のマヌルネコの子供は生後11ヶ月で、前足二本が骨折していた。このマヌルネコは、一縷の望みを託して外科チームに委ねられた。

 外科チーム長を務めたフーマン・モルークプール博士は、エッテマーデ・メッリー紙とのインタビューの中で、この件に関し次のように述べている。
テヘラン州環境保護総局がこのネコを私たちのクリニックに連れてきたのは、先週木曜日のことでした。このネコはとても痛がっており、神経質になっていましたが、意識は通常の1割程度にまで下がっていました。私たちはこのような状態で、治療を行ったのです。

頭部、上半身、及び下半身の〔エックス線〕写真を撮ってみると、このネコの前足二本が折れていることが分かりました。骨の折れ方が鋭く、一方向から傷を受けていたことから、このネコは右利きの人間によって強い打撃を受けたものと思われます。

他方、胃の中身が完全に空っぽであったことから、最低でも1週間、何も食べていないことが分かりました。そのため、点滴と薬を投与して、まずは手術に耐えられるだけの状態にしようと考えました。そして、土曜日の午後2時、〔‥‥〕ネコの手術が行われました。4時間に及ぶ手術は、無事成功しました。

〔中略〕

 モルークプール博士によると、現在この希少ネコの一般的な状態は良好だが、しかし体力が落ちているため、依然として観察・治療が行われているという。このネコが再び野生生活に帰る可能性は低いものと思われる。


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翻訳者:斉藤正道
記事ID:16470