【社会部:マルヤム・ハッバーズ】ある法案の可決を3年間も待ち続けている。この3年間という月日は、決して短いものではない。しかもその法案というのが、「犯罪発生防止法」のような重要法案の場合は特に、である。
1384年メフル月2日〔2005年9月24日〕、第7期国会の司法委員会の委員らははこの法案の総則を初めて提出し、その1年後、その他の議員らとともに、同法案を国会の公開本会議で可決した。この時、この法案がその後、棚晒し状態になると考えた人はごく少数だったに違いない。
国会調査センターが最近になって提言を行い、その中で同センターの専門家らが同法案の6ヶ月間の審議停止を主張したが、この提言が現実のものとなれば、この法案の棚晒しはさらに長期化することになるだろう。このような提言が出されたこと自体、犯罪の発生を防止するための環境が整っていないということを、暗に物語っている。
犯罪発生防止法案は、憲法第156条第5項の記述に命を吹き込むことを目的として提出されたものである。同項には、犯罪の発生を防止し、犯罪者たちを更正させるための政策の実行は、司法権の本来的な責務の一部であることが明記されている。
同法案の起草者らは、犯罪の発生防止とは「犯罪の発生の危険を予測・特定・評価し、その撲滅ないしは減少に努力すること」に他ならないとして、その実現のためには「犯罪予防高等評議会」の設置が必須条件だと考えてきた。しかしこのことが、護憲評議会や一部国会議員、司法の専門家たちの批判を招いてきた。
この法案の第2条には、司法権長官、第一副大統領、検事総長、国営放送総裁、治安維持軍総司令官、刑務所庁長官、イスラーム宣伝庁長官、バスィージ抵抗部隊総司令官、その他関係者数名が一致してこの評議会を立ち上げ、犯罪の発生防止に協力することが規定されている。
法案の問題点
可決されたこの法案は全体で10の条項と7の詳細な補足から成るが、しかし同法案が〔国会で可決された法案の承認権を握る〕護憲評議会に送られる前から、同評議会から問題点を指摘され、国会に差し戻されるのではないかと予測する専門家も多かった。
果たして実際その通りとなり、護憲評議会は多くの問題点を指摘して、同法案は国会に差し戻されてしまった。護憲評議会が主に問題としたのは、「犯罪発生予防高等評議会」の設置とその委員の構成が、〔行政・立法・司法の〕国の三権がそれぞれもつ権限・義務・独立性という点で、憲法の多くの条項に反する、という指摘に還元される。
専門家らは、護憲評議会の問題の指摘はもっともだが、国会議員、特に司法委員会の委員らはそのことをあまり認識していないようだと、口を揃える。
それだけではない。モハンマド・サーラールキヤー首都次席検事は、同法案が犯罪発生の予防のための委員会の設置を強調していることを問題視し、次のように指摘する。すなわち、この委員会には法律の施行に伴う責務が定められているが、しかしその一方で犯罪の発生予防のための実際の措置は、司法権の管轄下にある。そのため、こうした〔犯罪予防の〕任務を〔司法権から〕別の機関に移すことは混乱を招きかねない、というのである。
さらに、国会司法委員会のモスタファー・タバータバーイーネジャード委員も、「もし法案で名前の挙がった全当局者が犯罪の防止に関わる責務をきちんと負うのであれば、確かに表面上は有意義なものになりうるが、しかし各機関間の調整はどのような仕組みによって担保されるのか、いまだ明確になっていないのが現状だ」と述べている。
他方、同じ国会司法委員会のニーレ・アフヴァーン委員は、「もし犯罪防止法案によって、家族の基盤強化と、親のいない貧困家庭や社会悪の危険に晒されている人々への支援に向けた措置が講じられるのであれば、もはや従来までの福祉・社会保障制度は必要なくなるのではないか。同じような法律を繰り返すことになるのではないか」と指摘している。
法律を専門とするアッバース・シャビーリー教授も、ISCAニューズとのインタビューの中で同じような批判を強調している。同氏は、さまざまな法律の「インフレ」によって、国の司法体系の健全性は大きく損なわれていると批判して、「法律が可決されるたびに、新たな機関が設立されるが、それによって新たな機関と在来の機関との間の境界や責任が互いに干渉し合い、業務を複雑化させる事態を生んでいる」と語る。
なんでもあって、なんにもない
この法案の憲法上の問題点は脇に置き、〔護憲評議会から指摘のあった法案の〕欠点を認めようとしない国会の姿勢を受け入れ、同法案をめぐる膠着状態の最終的な打開を公益判別評議会に委ねるとしても、統一的な法律が不在のままで、犯罪の発生予防にとって効果的な政策を推し進めることは可能だなどという考えを受け入れることは困難だ。
たとえ我が国での各種犯罪の発生数について、正確かつ明瞭な統計が得られないとしても、非公式の統計を見れば、犯罪、特に暴力犯罪や社会的困難が原因で起こる再犯の数が上昇傾向にあるのは間違いないだろう。
こうした問題と並行して、犯罪予防のための法律が数多く存在し、さまざまな機関が活動を行っている。にもかかわらず、これらを調整するための包括的な法律がまったく存在しないのだ。問題を深刻に捉えることの重要性がこれまで以上に高まっているのは、こうした状況においてなのである。
「われわれは《点》として行動しているにすぎない」
犯罪発生予防担当のアフマド・ラフィーイー・テヘラン次席検事も、このことを認めている。犯罪発生予防法案の〔最終的な〕可決が延び延びとなっている現状とその結果について、同氏に質したところ、同氏は「我が国にはシステマティックに仕事をする文化が欠けている」とした上で、次のように指摘している。「我が国では立法制度が基本となって、国の運営が行われているが、しかしいまだ、立法をめぐっては問題を抱えている。犯罪発生の予防と再犯防止に向けて一貫した法律を制定し、統一的な行政を行うことができずにいるのだ」。
「われわれは今、バラバラに行動している。誰もが自分の個人的な考えに沿って、問題に取り組もうとしている。とはいえ、それはそれでしょうがないことだ。われわれには〔統一的に行動するための〕手段も仕組みもないのだから」。
同氏は次のように続ける。「現在の状況では、もしわれわれが犯罪の発生を予防しようとどこかの機関や役所に掛け合っても、問題にぶち当たってしまう。つまり彼らは、『この問題はあなた方の管轄じゃないですか』とか『私たちがあなた方の命令に従わなければならない法律が、どこにあるというのですか』などと言われてしまうのだ。どの機関も〔犯罪の〕予防で《点》として行動し、他の機関と協調した措置を取ることができず、多くの費用をかけても、一向に望ましい結果が得られないのは、こうしたことが原因なのである」。
その一方で同氏は、〔犯罪発生予防〕法の可決がすべての問題の解決を意味するわけではないとクギを刺す。「法律の制定は、〔問題解決のための〕道半ばにすぎない。というのも、法律を施行する意志というものも必要だからだ。〔法律の施行責任者に〕選ばれる人の士気にも左右される場合もあれば、自らの責務を果たそうとしているかどうかを監督する当局〔の姿勢〕にも左右されるだろう」。
同氏はこう述べた上で、結論として「重要なのは、予防へ向けた行動を速やかに開始することである。現在の状況を整理し、犯罪に局所的に対応するだけで満足してはならない」と指摘する。
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翻訳者:斎藤正道
記事ID:18784