【マフブーベ・バーバーイー】

（前略）

　尊属殺人という表現は一般的な表現、つまり近縁の姻戚関係で結ばれた家族のなかで発生するような殺人、例えば家族内のある成員が他の成員を殺害する、といった殺人のことを総体として指す表現である。

　こうした殺人で多く見られるのは、父親による子供の殺害、もしくは子供による母親の殺害、夫による妻の殺害、その逆の妻による夫の殺害、そして兄弟同士の殺害である。

　今回私がこの記事の執筆を決断したのは、こうした問題が社会の不安要素として人々の話題にのぼる一方で、この問題が将来に対して重大な意味をもつためである。

主要な動機は「道徳」をめぐるいざこざ

　毎日のように、我々は新聞の事件面で、次のような記事を目にしている。

「男が妻と息子を殺害」
「息子が家族2人を殺害した後に自殺」
「不貞行為の末の殺人」
「第二夫人が家庭内の凶行の原因」
「被疑者の若い男、姉（妹）殺しを自供」
「兄（弟）殺しの容疑で、男に有罪判決」
「父親、鍬で息子を殺害」

……など、この種の気の滅入るようなニュースが無数に、新聞の見出しを飾っている。

　凶行に及んだ加害者の言い分も、似たようなものばかりだ。

「倫理的に堕落していたのだ！」
「家族の名誉＝女性の貞節を守るために彼（彼女）を殺したのです！」〔※〕
「離婚後、妻に他の男と結婚してほしくなかった！」
「他の若い男と関係を持っていると思っていた！」

……など、道徳をめぐるいざこざが、犯人の口から述べられる動機の最たるものである。

　もちろん、相続問題や麻薬中毒、貧困、復讐、未解決の長年の諍いなどの理由で犯される尊属殺人もみられる。

　社会問題の専門家や心理学者たちは、この種の犯罪の増加に懸念を示しており、統計的にも増加傾向にあることが認められている。

〔中略〕

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※訳注：「家族の名誉＝女性の貞節（ナームース）を守るための殺人」、つまり「名誉殺人」とは、家族の不名誉をすすぐために犯される殺人のことで、しばしば妻や姉妹、娘など女性の貞節が犯されたことへの、犯した側に対する報復殺人という形をとる。家族の不名誉をすすぐために、貞節の犯された女性を殺害することもある。例えばこの記事。