コーランの節やイスラームの伝承からジンについて考察してみると、ジンは実在する存在者であることが分かる。その存在はコーランにも指摘されている。
ジンに関する話題は人々が関心を寄せるものの1つであり、大変な好奇心を集めている。ジンとはどういった存在なのか、いったいどこに生息しているのか、果たして人間に危害を加えるのか、などの疑問を自問したことのない人はほとんどいないであろう。以下では、これらの問題の一部について、お答えしようと思う。
ジャーメ・ジャム紙とのインタビューの中で巷にあふれるこれらの多くの疑問に答えてくれるのは、宗教学の専門家であり、教員養成大学の学術委員会の委員を務める、ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン〔※アーヤトッラーよりもワンランク下の宗教指導者への敬称〕のモハンマド・ルーヒー博士である。
ジンは物質的な存在なのでしょうか。つまり、人間は彼らを見ることが出来るのでしょうか?
ジンは物質的存在である。彼らはとらえどころのない極めて繊細な存在であり、また光さえ凌ぐほど動きの速い存在である。例えば、ジンがイエメンからパレスチナまで往復したという出来事については、誰もが耳にしたことがあるだろう。その出来事では、ジンたちはスライマーン閣下〔※〕に対し、「我々はあなたが地面から起き上がる間にイエメンからパレスチナまで移動すること出来る」と言った。しかし、人間には彼らの存在をほんの少しですら肉眼で見ることは出来ないし、最先端の装置をもってしても彼らの姿をとらえることは不可能なのである。
※訳注:スライマーンは旧約聖書のソロモンのことで、コーランではジンを操る超人的な存在として言及されている、預言者の一人。
しかし、これまで彼らを肉眼で見たと主張する者もいますが?
そのようなことは起こりえない。というのは、ジンが人間の眼に〔映像として〕入ってくることはないからだ。ただ、彼らの境界的姿が、時に人間の目に映ることがあるのである。
「境界的姿」とはどういうものですか?
「境界的姿」は、人間の眼には霊として現れる。しかし、そこには客観的真実はない。つまり人々が時に「これこそジンの姿だ」と主張するジンの形象は、ジンの境界的姿にすぎず、彼らの真の姿は人間の目には見えないのである。
この世の特別な人や善良な人も、ジンを見ることは出来ないのですか?
彼らですらジンを見ることは出来ない。しかし特別な人なら、ジンの境界的姿を見ることが出来るし、彼らの像を意識の中に記録することが出来る。
ジンはどこに生息しているのでしょうか。
イスラームの伝承や宗教研究によると、ジンは砂漠などの人気のないところや、大変汚いところに生息しているということが明らかになっている。
つまりジンは地球上に生息しているということでしょうか?
その通り。彼らは確かに地球上に生息している。
ジンたちも人間のように飲食をするのでしょうか。
コーランの〔第55章〕「慈悲あまねく御方」章によると、神は人間とジンに「神の恵みを否定するのはどちらか」と話しかけている。そしてこの恵みとして、食べること、飲むこと、結婚することなどが言及されている。これはジンも人間のように飲食をし、社会的関係を持ち、装飾品すら使用することを示している。
ジンにも預言者はいるのでしょうか?つまり彼らの種のなかから、これまで神に預言者としてつかわされた者はいるのでしょうか?
いや、ジンは理性の面で完璧ではないが、肉体的な面では山を揺らすことさえ出来る。それゆえ、ジンは知的に完璧ではないがために、彼らの中から神に預言者としてつかわされた者はいない。
ジンは人間に危害を加えうるのでしょうか?
然り。ジンは人間に危害を加えることが出来る。しかし彼らはすべての人間に危害を加える訳ではない。
どのような人間がジンによる危害にさらされるのでしょうか?
ジンは二種類の人々に危害を加える。一つは知能が低く信仰心に欠ける人々で、もう一つはジンに嫌がらせをし、彼らを支配しようとする人たちである。こうした人々がジンの脅威の対象となる。
つまり、人間はジンを支配することができるということですか?
その通り。人間にはジンを支配する能力がある。というのも、彼らは人間より知的レベルが低いからだ。ただし、こういうことをすることは聖法上、正しいこととは言えない。
どのようにしたら、人間はジンを支配することができるのでしょうか?
一連の内的禁欲〔※原文では「無効な(バーテル)禁欲」とあったが、「内面的な」(バーテン)の誤りと判断〕によって可能である。しかし神のために行われるのではないような禁欲、たとえばインドの苦行者らが行うような禁欲は無効であり、ハラーム(イスラーム法上の禁止)である。
ジンを操る能力というのは本当にあるのでしょうか?というのも多くの人が、ジンを人体から追い出すことができると信じており、ジン使いたちはこれによってなかなかの収入を手にしているからです。
ジンを操る能力を主張している者が千人いれば、そのうちにたったの一人だけが本当のことを言っている。しかしジンから遠ざかりたいがために、こうした人物のもとに通うことはお勧めできない。
では、ジンの潜在的な危険を避けるためには、なにをすればいいのですか?
〔第6代〕イマーム・サーデクの勧めは、コーランの4つの「コル」〔※〕を読むこと、無謬なる者たち〔=預言者ムハンマドの一族の者〕に助けを乞うこと、そして一人でいないことが、ジンの危険から逃れられる術である。
※訳注:「コル」(qol)とはアラビア語で「言え」の意で、qol(言え、告げよ)から始まっているコーランの第109章、112章、113章、および114章のこと。
悪魔信仰も、一種のジン支配なのでしょうか?
悪魔もある種のジンであり、コーランの〔18章〕「洞窟」章の第50節には、このことが完璧に言及されている〔※〕。悪魔は人間より古くから存在しており、ジンの一種である。人間が生まれると、そのたびに悪魔は人間を惑わすために、二匹のジンが生まれるよう命ずる、と言われている。悪魔には超自然的な力があるが、この力も神から得られたものである。一部の人間は悪魔を征服することで、この力を悪用しようとしているのである。
※訳注:この節には次のようにある。「われが天使たちに向かって、「アーダムにサジダ(跪拝)しなさい」と言った時を思え。かれらはイブリースを除いてサジダした。かれはジンの仲間で、主の命令に背いた。」
ということは、人間は自らの目標を推し進めるために、ジンの力を利用できるということですか?
その通り。一部の人々は聖法に背いて、ジンを自らの支配下に置き、それを未来予知や天空飛行などの異常なことに利用しようとしているのである。
人間とジンの結婚はありうるのでしょうか?
人間とジンの結婚は物理的には存在しない。というのも、人間とジンは物理的に性質がまったく異なるからだ。しかしコーランの章句や伝承によると、ジンたちの中にも性別があり、結婚をし、生殖するとされる。彼らも最後の審判の日には、それまでの行いに関して審判を受けるのである。