イラン人国境警備兵襲撃事件への関与を認めたテロ組織「ジェイショル・アドル」のフェイスブック上のページは、いまだ活動を続けている。このページは、一国の領土の一体性を守り、麻薬密輸を取り締まるという任務に就いている兵士らを襲ったテロリストの攻撃が、その他の側面と共に、メディア的側面も有しているということを示しており、この点を看過すべきではない。
【モハンマド・メフディー・ジャリーリー】フェイスブックはバーチャルなソーシャル・ネットワークの一つである。このネットワークを構成しているのは一般の人々であり、彼らはこの仮想空間の中で自らや友人たちの現況を書き、それを情報の流れの中に置いている。こうした情報は、公的なメディアが伝える情報のように重々しく真面目で、味気ないものではなく、一般的に個人的な側面を有したものである。
もちろん注意しておかねばならないのは、一般人だけでなく、アーティストやスポーツ選手、政治家、その他多くの特別な人々も、この仮想のソーシャル・ネットワークのメンバーになっているということである。しかし見過ごしてはならないのは、こうしたソーシャル・ネットワークに名うてのテロ組織もメンバーとなっているということだ。それも武装闘争を実行し、民兵組織に加わる子供たちをそのために訓練していることを公言しているような組織が、である。
メディアとテロリズムの関係
公的なメディア上でテロ活動を宣伝したり、人種主義や性的差別を宣伝することは、国際機関一般の合意する、禁止された活動の一つである。国連の規約によれば、この種のことを公的なメディア上で宣伝することは禁じられており、こうした活動を取り締まるために、各国政府は最大限の努力を行うことが求められている。ところがこうした禁止を実行に移す段になると、多くの場合、その適用範囲をめぐる意見の相違が原因で、困難に直面することがある。テロ組織ジェイショル・アドルの活動がフェイスブック上で続けられていることに、こうした困難の一例を見ることができよう。
研究によると、テロ組織は現代世界において、メディアとスマートな関係を確立しているという。それによると、テロ組織は自らのメッセージをターゲットとなる集団に伝えるための道具として、メディアを利用している。こうしたテロ組織は、メディアを情報提供という側面からだけでなく、(マス・メディアを直接的・間接的に活用することで展開される闘争の一手法である)心理戦を煽るための道具としても利用している。そしてこうした利用方法の完璧な例を、テロ組織ジェイショル・アドルのフェイスブックのページの中に見ることができるのである。ジェイショル・アドルのフェイスブックのページには、テロ組織が心理戦をどのように展開し、また組織のメンバーとのつながりを保つためにメディアをどのように利用しているのかの実例を見ることができる。
ジェイショル・アドルのテロリストたちと、自由に行われる武装闘争の宣伝
テロ組織ジェイショル・アドルの〔フェイスブック上の〕ページを基本的に構成しているのは、国境警備兵を襲撃している映像や、武装闘争に向けて青少年らを訓練している様子を映した映像、さまざまな写真、一国の指導者たちに対する罵詈雑言に満ちた声明文、そして一般大衆の憎悪を煽る呼びかけ、などである。名と信頼を得た〔フェイスブックという〕メディアに置かれた仮想空間の中のページが、戦争と憎悪とテロリズムを宣伝しているのである。
テロ組織ジェイショル・アドルに対処する際に直面する基本的な問題として、こうした組織を取り締まる明確な国際法が存在しないことが挙げられる。こうした組織はテロ行為を働きながら、メディアを運営する責任者たち(彼らはそうした犯罪行為から何キロも離れたところに住んでいる)の見解の相違が原因で、依然として自らのテロ目的を推進するために、〔ソーシャル・ネットワークという〕新たなメディアのサービスを利用し続けているのである。
無為無策の子供の人権活動家ら
実に残念なのは、スィースターン・バルーチェスターン地方の青少年や児童・生徒らもメンバーの一員であるということが、このテロ組織のフェイスブック上のページで宣伝されていることである。青少年らは学校で学び、家族と共に生活する代わりに、砂漠や山岳地帯を放浪し、麻薬密輸を生業とする者たちの下で洗脳され、今後の悪用〔=テロ行為への動員〕のために訓練を受けているのだ。
ジェイショル・アドルのテロリストらは、子供たちがこの組織に参加し、武装闘争に向けた訓練を受けていることを公然と認めており、またメディアという手段を用いて、その他の青少年の勧誘を行っている。こうした勧誘はあらゆる国際法で禁止されており、各メディアもこうした宣伝活動を防ぐ義務がある。残念なのは、国際機関、特に子供の人権保護に取り組んでいる組織がこうした邪悪かつ危険な現象に対して沈黙していることである。こうした現象は、青少年を騙すのにソーシャル・メディアの能力が利用される端緒となり得るだろう。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。