【メフディー・ファザーエリー】ウクライナで起きている最近の出来事は、教訓に満ちている。われわれは国内で、そのことをしっかりと研究し、その分析結果を、特に西洋との向き合い方において活かさねばならない。しかし、国内の一部はこれらの教訓にあまり注意を払わず、故意によるものか、単なるナイーブさによるものか、あるいはそれを見過ごし、あるいはウクライナでの出来事に対して偏った態度を示している。
このコラムは、ウクライナで起きている出来事の本質に立ち入ったり、あるいは黒海の東西沿岸にまたがるヨーロッパで二番目に大きな国であるウクライナ、EUがロシアから輸入する天然ガスの80%、原油の75%が通過する経由地でもあるウクライナの地政学的位置付け、ブレジンスキーが言うところの「EU拡大後の地域政策の帰結」について検討するものではない。ウクライナを域内・域外の大国の利益が交わる場所たらしめ、ここ最近、危機的状況を惹起し、分解の一歩手前にまで追い詰めている、この地政学的位置付けについては扱わない。
むしろこのコラムは国内問題という観点から、ウクライナと、この国の情勢がわれわれに対して有するであろう教訓について、注目するものである。
まず最初に、ウクライナ危機の根本的原因を突き詰めると、私たちは次の事実に行き着く。すなわち、解任された大統領ヤヌコビッチをはじめ、この国を運営する人たちは、権力の内部構造に注意を払うことなく、外部の資金的・政治的支援に頼ることに、同国の国政の基礎を置いていたということである。彼らはいつも、EUや国際的な基金、その類のものに支援を要請していた。そしてEUなどもこうした支援の条件として、政治的変化や、いわゆる政治改革を要求していた。ウクライナがロシアに奪われつつあるとみて、西洋諸国が〔ウクライナをめぐるロシアとの〕戦いに足を踏み入れたのは、150億ドルに及ぶ支援をちらつかせたロシアの誘惑的な提案をヤヌコビッチが受け入れたことがきっかけだった。
第二に注目すべきは、抗議運動の過程である。〔ヤヌコビッチ政権に対する〕抗議や反対運動は、EUへの接近に対する支持として始まり、徐々にその要求のレベルを憲法改正にまで引き上げて、ついにはヤヌコビッチの解任に至った。恐らくここまでは、抗議運動を起こしていた人たちも運動をコントロールすることができただろうし、運動は成功だと見なすこともできるだろう。しかし情勢の変化の中で、危機のあらゆる面をコントロールすることは、否応なく不可能なものとなっている。ウクライナで私たちが目にしているのも、危機がより一層高まり、深化している様子であり、同国が東西に分裂する可能性も出ている。こうした事態が現実のものとなった場合、それが〔当初ヤヌコビッチ政権に〕抗議・反対運動を展開していた人たちの利益に適うものなのかどうか、またロシアの防壁まで勢力圏を延ばそうとするNATOの拡大戦略とは別に、このことがロシアの利益になるのかどうかも明らかではない。
第三に、西洋の全体主義について指摘しておかねばならない。アメリカであれ、ヨーロッパであれ、ウクライナでの出来事における西洋の行動を分析して再確認させられるのは、西洋が他の国ないし運動と同一歩調を取るのか否かの唯一の基準は、それが西洋の全体主義的な利益に適うかどうかであり、それ以外の規準は存在しないということである。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。