【ジャーメ・ジャム・オンライン】スパルタ人らがイラン軍からテルモピュレを防衛する物語を描いた漫画チックな映画『300』の続編が、今『300:ある帝国の出現』と題して、世界の映画館で上映されようとしている。
ケンブリッジ大学のギリシア文化・歴史の
ポール・カートリッジ教授は、この映画がいかに史実から乖離しているかについて、次のように述べている。
1.最初の問題は映画のタイトルである。ここで出現しつつある「帝国」とは、どの帝国のことだろうか。アテナイ帝国?この帝国は、この映画で描かれている出来事、つまりアルテミシオンの海戦とサラミスの海戦(いずれも、紀元前480年に起きた出来事だ)から、少なくとも2年が経たないと出現しない。
2.この映画は、異様なほど非歴史的な矢の描写とともに始まっている。この矢はアテナイの英雄テミストクレスがアテネ近くのマラトンでの戦いで、紀元前490年に放ったもので、ダーリユーシュ(ダレイオス)1世を、息子で後継者のハシャーヤール(クセルクセス)の横に立っていたまさにそのときに、亡き者にした〔と、映画では描写されている〕。しかし、ダレイオスはマラトンで終結したイランの大攻勢を始めた当の本人ではあったものの、彼自身、そしてクセルクセスも戦場にはいなかった、というのが事実なのである。
3.マラトンの戦いでのイラン軍の敗北(歴史的観点から言えば、これがクセルクセスによるその後の復讐的な攻撃の主な原因となった)の場面から10年、映画はイラン海軍の艦隊を描いている。この艦隊はエヴァ・グリーン演じるギリシア人女性、ハリカルナッソスの人アルテミシア女王の指揮下にある。私たちはアルテミシアと同時代に生きた歴史家で、イラン=ギリシア戦争の物語をものしたヘロドトスの歴史叙述から、アルテミシアが実在の人物であることを知っている。彼女は確かに、サラミスでイラン軍に味方して戦ったギリシア人女王である。しかし彼女は決して、海軍の総司令官ではなかった。〔ペルシア軍が有していた〕艦艇約600隻のうち、彼女が用意したのは、たかだか数隻に過ぎなかった。
4.映画制作者たちは、互いに敵同士であった〔アテナイの軍人〕テミストクレスとアルテミシアの間に〔性的な〕「関係」を創り上げている。それもアルテミシオンの戦い(映画ではギリシア軍の敗北として描かれているが、実際は引き分けに終わった)とサラミスの戦いの戦間期に、である。もちろん、これらはすべて外交の名の下で行われているのだが。
5.そして最後に、この映画の最大にして最も馬鹿げた歴史的誤りは、テミストクレスと彼が率いるアテナイ軍はサラミスの戦いで勝利を得るために、スパルタの巨大な海軍力による援助を必要としていた、と想定しているところである。〔映画では〕スパルタ軍はちょうどいいときに〔戦場に〕到着している。そしてそれを指揮していたのは、誰あろう、レナ・ヘディ演じる別のギリシア人女王ゴルゴー(彼女は映画『300』の英雄レオニダスの未亡人である)となっている。しかし実際には、この戦役でアテナイ側についた艦艇400隻のうち、スパルタ軍が用意したのは16隻に過ぎなかった。アルテミシア女王が〔ペルシア軍に用意した〕船の数とちょうど同じく、この程度の数の艦艇がアテナイ軍の絶対的勝利に終わったこの戦いに影響を及ぼすようなことは、まったくなかったのである。(メフル通信)
訳注:なお、この記事は
BBCのウェブサイトに掲載された英語の
記事を、ペルシア語に翻訳したものである。