国民的抒情詩人スィーミーン・ベフバハーニーが逝去

2014年08月19日付 Hamshahri 紙

【ハムシャフリー・オンライン】《イランのガザル婦人》[※イランを代表する女性抒情詩人の意]の名を冠されるスィーミーン・ベフバハーニーがモルダード月28日火曜日[8月19日]、この《無常の家》[現世]に別れを告げた。

IRNA(イラン国営通信)によれば、詩人であり抒情詩の名手であったスィーミーン・ベフバハーニーは、火曜日の未明、テヘランのパールス病院で死去した。

スィーミーン・ベフバハーニー逝去の報は、テヘランのパールス病院の担当主治医によって発表された。同主治医は、同詩人の死亡を認め、こう述べた。

ベフバハーニーは、しばらく前から心臓疾患と呼吸困難のために入院し、モルダード月15日[8月6日]に危篤状態に陥っていた。

ISNAは、子息のアリー・バフバハーニー氏(翻訳家で作家)による報告として、スィーミーン・ベフバハーニー逝去の報を発表した。

ハムシャフリー・オンラインは、スィーミーン・ベフバハーニーの逝去に際し、イランの文化・文学界に哀悼の意を表する。



訳者注:スィーミーン・ベフバハーニー(1927年生)は、抒情詩人として長く文学活動を継続。詩集『アルジャン(アーモンド)の平原』(1983年)は高い評価を受けたが、政府から発禁とされた。その後も当局の検閲による作品の削除等を経験しながら、90年には選集および7冊の詩集を発表。国外のイラン人コミュニティー等での文化講演は100回以上に及んだほか、Human Rights Watch や国連人権連盟からも受賞した。
なお、2008年には大阪大学「語り手と女:ジェンダーを巡るイランの文学的言説の研究」プロジェクトの招聘により来日・講演し、『すばる』(2008年12月号)にはインタビューが掲載された。

過去の数世紀続く圧政は
お前の骨の髄にまで浸みているので
この腫れ物を 時代のメスで
刺すくらいでは取り除けない

ジプシーよ! 膨れ上がった病の春は
   お前の魂の平原にテントを張った
憎しみの垢以外に何があるのだ
   あらゆる芽についた腫れ物の中に
[…]
ジプシーよ! 真実はどこかと お前の友に問い 友は言った
   「その真実の答えとは
    “永遠の沈黙”である」と

スィーミーン・ベフバハーニー「ジプシーの如く」(14)より
【出典】鈴木珠里ほか共訳『現代イラン詩集』(新・世界現代詩文庫8)土曜美術社出版販売 (2009)


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翻訳者:幽寂閑雅
記事ID:35191