Murat Yetkinコラム:PKKとの戦いは、終わろうとしている
2015年04月10日付 Radikal 紙
4万人もの命が犠牲になった戦争を30年間続けたゲリラ組織の重要人物が「もう戦争は望んでいない。もう十分だ」と言っているのなら、平和に向けて後戻りすることのない段階に至ったということだ。この発表はHDP(人民の民主主義党)の選挙に対するモチベーションを高めうるものだ。
アブドゥッラー・オジャラン氏と共にPKK創立メンバーの一人であるジェミル・バユクがドイツの放送局WDRに対して発表したことを、ドイツメディアは当然のように「PKKはドイツに謝罪した」と報じた。彼らの関心はそこにあった。
トルコの一部メディアもこれをドイツメディアの視点でとらえた。
一方バユクはそこでPKKはトルコとの「戦争は望んでいない」と語っており、PKKが1984年に始め、今日まで4万人以上もの人々の死をもたらした武装闘争が何ら結果をもたらさなかったと言っていた。トルコの関心はそこにあった。
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しかし彼がドイツについて語ったことが重要でないわけではなかった。
PKKは、多くがトルコにルーツを持つ何十万人ものクルド人が住むドイツを、トルコに次ぐ戦闘の場にした。
その活動は、抗議の焼身自殺から、トルコ人やドイツ人を標的にした爆破や破壊まで、PKKの山岳ゲリラに参加させるための「徴兵」活動から、クルド人とトルコ人の労働者や事業者からの活動資金集めまで、幅広かった。
ドイツはPKKをテロ組織のリストに加えた。
バユクが今「PKKを代表してドイツ国民にお詫びします」と言って、「このような行為は二度としません」と約束したことで、ドイツはPKKをそのリストから外すだろうか。我々は注視していくことになる。
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トルコが大いに関心をよせる発言を見てみよう。
次の通りだ。「PKKはもはや独立したクルド国家を建設するという目的を追い求めてはいない。政治的な解決に至るために努力している。もはやトルコと戦争をすることは望んでいない。もう十分だと言っているのだ。戦争をしても、私たちもトルコ国家も目的を達成できなかった」
この発言がPKKの重要人物の一人として知られるバユクの口から出たのだから、トルコやトルコの人々を蝕んでいたこの30年間の戦争が本当に終わることに希望が持てる。
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バユクの言葉は、まるでオジャランが1999年からこれまで収監されてきたイムラル島の刑務所から3月21日のノールーズの日にPKKに対して行った呼びかけに対する返答のようだ。
エルドアン大統領はそこでPKKに対し、会議を招集して「武装闘争」を放棄するため、既に合意がなされている停戦の宣言をするよう求めていた。
PKKがこの会議を招集したかどうかは公になっていないが、30年以上も戦争を続けたゲリラ組織のリーダーが「もう十分だ」と言っているなら、平和に向けて後戻りすることのない段階に至ったということだろう。
実際、振り返ってみるとタイイプ・エルドアン大統領が首相だった時代に、まず(オスロで失敗した)2010年とその後の2012年の取り組みのもと、イルケル・バシュブー氏が2008年に陸軍総司令官から参謀総長に昇格した際に行った、PKK問題に関する発表、すなわち「軍事手段だけでは、対処できない」という発表を見いだすことができる。
もしくは、当時のMİT(国家諜報機構)の顧問エムレ・タネル氏は、既に2005〜2006年の段階で(イラクのクルド人のリーダー、メスード・バルザーニー氏を仲介者として)対話の実現ために、AKP(公正発展党)政府からゴーサインを得ていたが、軍人たちがMGK(国家安全保障協議会)でブレーキをかけたことで、一歩を踏み出せなかった。(その一歩は2012年のMİTの顧問、ハカン・フィダン氏を通して、オジャランと直接面会することで踏み出された。)
つまり、トルコ側で、解決に向かう道筋を軍が(一度はふさいだがすぐに受け入れたように)、PKKの側でも武装勢力が、オジャランがこのところしばらく頭に描いていた政治的解決を最終的に受け入れたようだ。
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バユクの発表はタイミングにおいても重要だ。
PKKが「さもなければ(武装闘争を)再開する」という脅迫の主張から、戦争の代わりに政治的対話を望むという主張に移行したことは、不公平な10%の最低得票率を越えようと努力しているHDPに、選挙に対するモチベーションを高めさせることになる。
なぜならばHDPはクルド関連の政策だけでなく、民主主義・権利・自由の分野にも目を向けることで、10%の最低得票率を越えると公言することが可能となった。
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6月7日の選挙でHDP支持を考えているトルコの社会主義者や民主主義者、リベラリストの多くは、PKKが再び行動を起せば考えを変える可能性がある。
バユクは、特にドイツを証人として、「私たちはもうしない」と言質を与え、「誰かが行動を起こしても、私たちだと思わないでください」と言いたいのだ。ドイツを「第三者の目」にしているのだ。
選挙でHDPの議席が増えることはPKKの影響力が低下することを意味する。しかしPKKはこれを敗北ではなく、管理下での変革として受け入れる準備をしているような印象を受ける。
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翻訳者:南澤沙織
記事ID:37283