Oral Calisirコラム:静かな有権者と、興奮するリーダーたち、
2015年06月02日付 Radikal 紙
リーダーたちは得票率を増やすため、そして、有権者を説得するため、言葉が日に日に一段一段、激しくなる。遠方からみてみると、選挙集会場は、[喧しく]完全に埃の煙の中に佇んでいる。一般的な有権者は、(選挙の)進展をより静かな場所から俯瞰しているようにみる。
ディヤルバクルにおける三日間の旅で印象的であったもののひとつは、市内の静寂さだ。最近、多数の緊張、大事件、そして衝突が起きているこの街の(特に、選挙までほんの僅かな時間しか残されていない時)穏やかな雰囲気が印象的であった。とりわけ、人民の民主主義党(HDP)が選挙に政党として参加するとの条件の下、街が和やかな雰囲気となったことは興味深い。
この街に関する私の観察は、三日間に出会い、語り、長い長いお喋りをしたディヤルバクルの住人に限定されるものではない。私は、取材した二つの集会(HÜDA-PAR⦅自由ダウア党⦆/ AKP⦅公正発展党⦆)でも静かな雰囲気を感じた。
AKPによるイスタンブルのマルテペでの大きな集会も取材したが、そこの人びとも緊張がなかった。参加者の一部が演壇の周りでシュプレヒコールをあげる一方、かなりの数の人びとが緑の芝生の上で、ピクニックの雰囲気の中で演説を見ていた。集会に参加したジャーナリストたちと話したが、彼らも私と同じような印象をもっていた。
そう、テレビ画面上で政党のリーダーの動向を追う中、ある種緊張感を感じることができる。しかし、同じような雰囲気を街角でみることは、ふつう不可能だ。
(政党の)リーダーたちは選挙集会場では、「私たちは大変重要な選挙に向かっている。トルコの未来はこの選挙の結果によって決まる」というような意味の演説をおこなっている。これは、普通のことである。有権者をこのような形で動機づけ、自分に有利となるよう投票箱へ向かわせようとしている。
リーダーたちは得票率を増やすため、そして、有権者を説得するために、言葉は日に日に一段一段激しくなる。これに様々な陣営のメディアも含めると、状況は大いに混乱する。遠くからみてみると、選挙集会場は、[喧しく]完全に埃の煙の中に佇んでいます。
13年間、トルコを統べるようプログラムされ、それに慣れた与党がある。この政党は初めてダウトオール政権で選挙に臨む。長い時を経て、初めて政党として選挙に参加するHDPがある。これらを考慮すれば、混乱が生じるのは理解できる。
HDPは、10%の足切り得票率を乗り越えるであろうか?AKPはエルドアン大統領の動機付けをもって着手した「大統領制」[実現]を担保する、国会で望む議席数を手にできるのだろうか?これとこれに似た不明確さが、各政党、政党執行部及び「戦闘部隊」を緊張状態に持ち込んでいる。
■有権者は
多くの有権者のグループにとって(非常に政治化された人たちは一方に置くとして)、かれらは、この種の不安の向こう側で、(選挙の)進展をより静かな場所から見ているように思われる。
過去の多くの選挙(特にこの6~7年の間)では、[政治に対する]軍や官僚の後見体制が、選挙結果を定める役割を果たした。また、最近の2回の選挙(2014年3月30 日の統一地方選挙、2014年8月10日の大統領選挙)でさえ、「危機的な」な状況が存在した。「影の国家組織」が揺さぶる政治環境は、多くの不確実性に導いた。前回の二つの選挙は、この理由により、「有権者の動向への干渉」という点から杞憂をはらんでいた。しかし、今回は、有権者の心理は異なる。
■正常化
残り一週間以下となった総選挙の予想結果という文脈で、多くの有権者のグループは不安を感じない。共和人民党 (CHP)や民族主義者行動党(MHP)を支持する有権者は、自らが支持する政党について、あまり大きな変化を予想していないといえる。特に、 MHPが静かなことは顕著である。こういった静かな雰囲気にはAKP、あるいはHDPを支持する有権者が続く。
ディヤルバクルやイスタンブルの雰囲気をみてみると、HDPを支持する有権者は、その他の政党と比べると少し熱狂しているようにみられる。しかし、彼らも緊張はしていない。そう、AKPを支持する有権者については、少し無関心で、少し疲労しているといえのるか?あるいは、与党慣れしたことが創りだす怠慢さがあるのか?
おそらく、同様の観察をおこなっているAKPのスタッフは、この静かな大衆を動員するために努力している状態にある。大統領もそのひとり。
有権者の静けさは、この国の政治情勢の点からはよいことである。遅ればせながら、正常化...。このような状態は、単にトルコだけのものではない。発展途上国の大半では、政治はもはや昔ほど「熱狂的」ではない。
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翻訳者:岸田圭司
記事ID:37701