Murat Yetkinコラム:バイカル・エルドアン会談―AKP/CHP大連合は生まれるのか?
2015年06月11日付 Radikal 紙
ダヴトオール公正発展党党首も、クルチダルオール共和人民党党首もお互いに連立政権を発足させようとは思っていない。しかし現在の状況はそうせざるを得なくするかも知れない。バイカル氏が議長候補となれば、その兆しと考えられる。
タイイプ・エルドアン大統領のもっとも重要な特徴は、決して何をするのか予想できないということになり始めた。
つい一日前大統領府から「すぐに解散総選挙」という風が吹いていたというのに、その日の夕方には、予想しない所から、デニズ・バイカル氏を通じて和解をしようとするなんて、誰が予想できただろうか。
しかもダヴトオール首相が6月9日の夕方前、辞職の意を伝えたすぐ後にバイカル氏との和解にやる気を見せるなんて。
確かにエルドアン大統領とバイカル氏は昔から協力しあってきたといういきさつがある。2002年の選挙で公正発展党が勝利したにも関わらず、政治活動禁止故にエルドアン氏は首相になれなかった。その際憲法改正によってエルドアン現大統領が首相になるのを助け、政治の流れを変えたのは他ならぬバイカル氏であった。エルドアン大統領とバイカル氏が当時2人で会合をしていたことに関して、当時多くのことが書かれ、囁かれた。そして2003年から2005年の間にはEU改革の枠内において9つの憲法改正と、3つの基本法改正は、両者の会合のあとに AKPとCHPの協力をもって可能になった。
今、長い時を経て、第二回エルドアン・バイカル会合は政治の流れを変えられるのか。エルドアン大統領はどうしてバイカル氏との会合が必要だと考えたのか。そして何について話し合ったのか。浮かび上がる疑問はこのようなものだ。
[大統領でありながら]政治介入をあきらめないということを、今バイカル氏を通してエルドアン大統領が示したかったのかという問いはもっともである。
アフメト・ダヴトオール元首相が組閣をおこなおうとする前に先手を行ったのがエルドアン大統領であったことは問われなければならない事だ。
しかしこのような事実もある。エルドアン大統領はバイカル氏を招いた。バイカル氏はこれを受け、ケマル・クルチダルオール氏に相談しアンタリヤから飛行機に飛び乗り(共和人民党が認可していないベシュテペにある大統領宮殿ではなく、チャンカヤにあるエルドアン大統領が使用する)外務省公邸へと向かった。
2時間以上続いた会談の後、バイカル氏は重要なことを述べた。「エルドアン大統領に連立政権を作る可能性があるとみた。」彼は、その後クルチダルオール代表のもとへ行き、会合した。その会合ののち ― 朝のセンセーショナルなニュースを出る前の確認の電話の後 ― 私はバイカル氏と二度目の電話をした。
バイカル氏の声は浮き浮きとしていた。周知の高速ギアに入っており、会合は期待以上にうまくいったようだ。
バイカル氏本人が「もっとも経歴の長い議員」という資格で国会開会をするために、議会の構図について両者は話をしたようだ。エルドアン大統領に「法律の許す範囲内に留まることの重要性について」述べた。
しかしクルチダルオール代表に対するメッセージはなかった。そもそもこれは公式の会談ではなかった。バイカル氏はクルチダルオール代表に会合の印象を伝えるにとどまった。
バイカル氏の印象によると、解散総選挙への圧力をかける前に、連立政権としてありえるすべての可能性を試すということに関して、両者とも「合意できる」との考えであった。
ではこの会合において公正発展党・共和人民党連立政権について話し合われたのだろうか。バイカル氏はこれを否定し、それは党首たちの仕事だ、と答えた。
では公正発展党・共和人民党連立政権に関する会合を示唆するような、バイカル氏の議長候補といったことが話し合われたのだろうか。
バイカル氏はこれも否定。「候補とならないのですが、それとも単に話さなかったのですか」と聞いたが、ただ笑って「話さなかった」と答えただけだった。
この会合は公正発展党、共和人民党双方の党本部にとって小さな嵐の原因となった。
まず公正発展党である。
ダヴトオール首相にとって最初の選択は、公正発展党が少数与党として他党に支持してもらうということだ。しかしどこの党も公正発展党を支持してくれそうにはない。
公正発展党にとって第二の選択は民族主義者行動党と連立政権を組むことである。しかし民族主義者行動党にとっては、エルドアン大統領が憲法の枠内で行動し、クルド人問題解決プロセスが(しかもデヴレト=バフチェリ氏はこれに「解決されるプロセス」と名を付けたようだ)すぐにストップすること等の条件がある。
人民民主主義党が民族主義者行動党と同じような議席数をもって議会入りする中、公正発展党はクルド人問題解決プロセスをどのように停止させるのか。それはまた別の問題だ。しかし民族主義者行動党勢力には「私たちにオジャラン氏を処刑させなかった。今、無罪放免というわけか」との杞憂は大きく、 強い。
ダヴトオール首相は人民民主主義党との連立政権を考えていない。共和人民党はというと、最悪の選択だ。長年、党の基盤を機会を見ては反CHPに仕向けてきた、いずれにせよ。
共和人民党にとって最初の選択は民族主義者行動党との連立政権だ。もちろん議会において公正発展党が41%という数字をもって未だに第一党である。これに対し共和人民党は25%だ。民族主義者行動党または人民民主主義党が、共和人民党政権を閣外支援して少数与党となることが可能と夢見る者もいる。
しかし選挙においてクルチダルオール代表が「私たちに投票を。公正発展党を与党の座から引きずり下ろそう」というスローガンを使ったように、代表にとって最優先事項は公正発展党が与党の座を降りること、そして人民民主主義党の支持を得て、民族主義者行動党と連立政権を発足させることをもってこれを実現することだ。
人民民主主義党はこれを支持しうる。しかし民族主義者行動党のクルド人問題解決プロセスの条件は、共和人民党に対しても有効だ。特に共和人民党は公正発展党と競って、人民民主主義党の支持を受けて政権に留まっているというふうに見られたくない。
民族主義者行動党の態度を軟化させることは共和人民党にとって重要だ。しかしまだそのような兆候はない。共和人民党の「2年後の選挙」という公式は、実はエルドアン大統領の「ではすぐに選挙をやりなおそう」というテーゼを支持するものとなる。クルチダルオール代表がもっとも恐れる選択肢は公正発展党との連立政権だ。しかしまだ6月7日の汗が引かないままの状況で解散総選挙もしたくはない。
共和人民党内において重要なグループは、ドイツやギリシアにおいて社会民主主義党が保守政党との大連立政権のもとにいかに溶解していったかを例として示し、連立政権を組むことによって、25%の得票率がもっと下がると述べている。
さらに共和人民党党本部は、公正発展党との以前の和解の試みはいつも残念な結果に終わっていたと述べ、禁錮刑となった国会議員の釈放に関する協定書の拒否を、この例として示している。
一方選挙目標を下回ったクルチダルオール代表には、そもそも与党として生き残ることを最優先としている公正発展党との密な駆け引きを行い、選挙民に約束した公約の一部を諦めるという選択肢もある。
これにはエルドアン大統領が政府に干渉しないことの他に2つの重要事項がある。一つ目は不正行為との闘い。クルチダルオール代表が公正発展党と連立政権を発足させるならば、少なくとも4人の元大臣について捜査の再開といった問題で進展を求める。
二つ目は最低賃金から退職金、農業従事者に対する燃料の支援にまでいたる経済面のマニフェストだ。これらの実施を進めることはもしかしたらクルチダルオール代表にとってもっと簡単かもしれない。
簡単に言うと、状況は容易に打破できそうにない。
では、バイカル氏を議長とすれば、公正発展党・共和人民党連立政権を発足させるための会合を、もちろんそれが行われるのであれば、連立は容易になるだろうか。これはありうる。なんといっても議長だ。大統領の代理であり、不在の際は彼を代行する。エルドアン大統領はバイカル議長をもって国会のバランスを取りうる。
そして最後に、今後の展開によってはエルドアン大統領・バイカル氏の会合は続きうる。
そして若き新聞記者に、特に政治記者の方々に対し一つ言っておきたい。
新国会をもってもたらされる新しい力のバランスは、記者という仕事を逆戻りさせた。記者発表を追う新聞記者業といった怠惰で安きに流れることが止むをえなかった時代の代わりに再びニュースを追う時代になった。明日議会が開かれれば政治はより一層熱を増し、どこもかしこもニュースで一杯になる。人々はこれを知りたがるだろう。張り切って自身の力を見せてほしい。
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翻訳者:渡辺夏奈
記事ID:37794