Mehmet Direkliコラム:トルコとEUの関係はなぜ悪い方向にいっているのか 

2015年06月04日付 Zaman 紙
2015年の総選挙でトルコ大国民議会(TBMM)で議席をとる可能性のある4つの政党の選挙マニフェストにはEUとトルコの関係に重要性が置かれなかった。確かにここにトルコ内部から出てくる並外れたプロセスの影響は大きい。しかし今日トルコの政治的めぐり合わせを外から傍観する人物が、この国が完全にEU加盟国になろうとする目標でもって討論する候補者であることを信じるのは極めて難しい。

2002年の議会選挙の前はEU加盟に対して確実に受け身であり、2005年にEUと交渉する政府というステータスを獲得したAKP政府が2015年になったときにEUをその議題(議事・予定)から外したことの主な要因のうちの一つは「制限を受けた権力と権威が取り除かれることを欲しない」ためである。ご存じの通り、EUは4つの基本的な柱の上に建てられたシステムである。この4つの足は、人、物、資本そしてサービスの自由な流れからなっている。このシステムの欠陥に損失を与えず、そして自由を守るために加盟諸国は法の優越性を気にせず無条件で認めており、権限の大部分を欧州委員会に委ねている。超国家的な組織であるEUはというとこの権力の流れから生じる力を連合の市民らの繁栄と発展のために行使している。(EUは)実行している政策も、本部をルクセンブルクに持つ欧州裁判所によって保証している。この諸々の理由からEU加盟国における傾向はいつも透明だ。新聞記者を別にすれば、いかなるEU市民も独断で逮捕されることはありえない。さらに、連合の境界線の中で人々は国際法によって認められている範疇内で彼らの自由を容易に享受できことができ、再生可能エネルギーの使用が優先され、有機農業が推進され、動物の権利は確保され、環境政策のルールが極めて厳しく適用されており、EUの市民らは生産地と生産過程が明確に示されている食品を消費し、遺伝子組み換え製品の輸入が禁止されており、独占が絶対に禁止され、加盟国の教育システムも同じであることが保証されている。例を挙げるときりがないが、しかしどういう風の吹き回しか13年間のAKP政権もそれ以前のトルコ共和国の政府も含め、この件に関係した政治家ら及び官僚らは市民らにEUのこのような優越性を説明する代わりにこの話題をシェンゲンに繋げ、EUの境界線が開かれることをまるでトルコにとって最重要の利益として提示してきた。これとともに通常の立法過程における地位や拒否権を除いてトルコの決定は比較的繋がりのない州議会の報告を世論の議題に頻繁に上げ、そしてためにトルコ国民がEUに興味を示さなくしたのだ。EUの意味は単なる移動の自由という意味ではない。EUはただ欧州議会からできているのではない。EUには評議会、委員会、そして最も重要なことには、加盟国が裁判所の優越性を無条件に認めているところの裁判所があるのだ。

一方でトルコがEUに加盟できないことにおける他の重要な支障はイスラム教の国であるということではない。本質的な恐れは、トルコがその強大性ゆえに決定を下すメカニズムにおいて重要な場所を占めるであろうということだ。ただトルコが交渉において宿題を完璧にこなすことができれば、コペンハーゲンの基準に確実に沿い、安定して制度化された民主主義を得ることができれば、法律の優越性及び人権を尊重し、マイノリティの権利を守ることができれば、そしてトルコ経済を脆さから守り、インフレを程よいレベルにまで落とすことができれば、EU加盟国になりうる。オーストリアあるいはフランスの議会はトルコが加盟交渉に功裏に完了することができれば、加盟問題を国民投票に持ち込むことについて与えた決定はというと当然政治的問題であり、変える可能性がある。

ご存じの通り本当のトルコとEUの関係は停止点に来ている。今日、社会の大部分が驚きでもって遭遇した決定、そして政策がEUに絶対に加盟できないであろうというのは明白だ。高等教育機構を廃止すことをすら想像せず、総選挙で10%の得票率制限(足切り条項)を権力保持のメカニズムとして見ている政府がEU加盟国になることを望んでいるとは当然考えられない。EUは人権と自由からなっている法律の連合だ。それ故、法律の優越性は加盟国にとって神聖なものである。連合が適応している全ての規制、指令および決定は個々人の利益に適用され、恣意的な処置によって変えさせることは出来ない。EU加盟国になりたい政府は無関心で無条件に主権及び権限の重要な一部をブリュッセルに渡す必要がある。今日トルコはこの条件のごくわずかを、 それどころか1つも認めていないだろう。何故なら、法律の優越性、人権、透明性及び包括的な政治の理解について述べることは今日の政府にとって不可能だからだ。力を手に入れた後これを共有することを望まない権力者(与党)はトルコのEU加盟の前に立ちはだかる最重要の障害となるだろう。


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翻訳者:満生紗希子
記事ID:38252