Oral Calislarコラム:プーチン、エルドアン、クルド人の将来
2015年11月27日付 Radikal 紙
「トルコ・ロシア対立」として現れている現在の危機は、実は、非常に多面的で混乱した対立関係を、我々の目の前に提示する。今こそ、データを慎重に検討し、正しい評価をすることが重要な時である。
トルコがロシアの戦闘機を撃墜したことは、シリア危機を一段と緊張させた。この危機が、二国間の戦略的な衝突の産物であることはいうまでもないが、それをはるかに超えた側面の存在も無視することはできない。
墜落の直後に記者会見で質問に答えたオバマとオランドは、トルコへの支援を表明した。「トルコは国境を守る権利を有する」と。この表明に、NATOの事務総長も同じトーンでの発表をするに至ると、この危機が「ロシアと西側ブロックの間の危機」であることがはっきりとした。
オバマは、「ロシアは、その兵力をISに向ける方がよい。しかし彼らは、むしろトルコや西側が支援している反政府穏健派勢力を標的にしている」とのべ、その態度を明確にした。
アサド問題討議のための会議が開催される前に、シリア政権が、猛攻撃をかけトルコ国境に近い地域を奪還しようとしていた計画が明らかになった。ロシアの爆撃をそれを援護するためのものであることは明らかである。
■クルド人はどうする?
この衝突の別の側面には、(PKKにつながる)PYD派クルド人がいる。近頃、アサドがモスクワを訪問したころ、PYDのアスヤ・アブドゥッラー共同議長と同行者らもモスクワにいた。この(アサド・プーチン)会見が、ロシアを仲介とした「アサド-PYD連合」のためのものであったとの観測がなされている。
ボアジチ大学のアッバース・ヴァリ教授は、バスハベル紙に載せた発言でこの展開を次のように論評した。
「PYDは、ロシアのシリアへの介入を歓迎している。PYDとロシアの連合は、避けられない。ロシアが、地上にいるラディカル・イスラムグループを爆撃したことは、PYDの軍事行動に影響を与える。ロシアの介入は、地上戦におけるPYDの戦力を強化することになる。」
■トルコのシリア対応
PKKが、2015年6月7日の選挙ののち、この地域で実施した「自治」宣言や、衝突の激化を、この共同戦線の一部と考える見方も増えている。
トルコとロシアの間の危機が深まったことが、この地域における「連合」がどのようなものであるかを、徐々にはっきりさせたといえよう。アメリカとNATOは、アサドの退陣を求めているが、イランは、バグダードを支配するシーア派の背後に、ロシアはアサドの背後にいる。ロシアの態度は、徐々により明確な軍事支援へとかわりつつある。ヨーロッパのメディアでは、「緊張の緩和」に力点がおかれつつある。
では、クルド人に何ができ、どの陣営に加わることができるのかをみてみよう。
まず、イランが、北イラクのクルディスタン地域で、反バルザーニ派の、タラバーニ・ゴラン勢力と協力していることは、もはや、明らかだ。
イラクのクルド人は、二つの陣営の間で分裂している。今なお支配権をにぎっているのはバルザーニ―で西側勢力の側にたっているが、対立する勢力は、もう一方の側に立っている。
PKKと、そのシリアにおける分派であるPYDの態度はどうなるだろうか。コバーニでの抵抗の時には、西側のシンパシーを獲得し、アメリカや同盟軍からの空爆により支援をえたPYDであったが、2陣営の対立が明確化していくにつれ、態度を決めざるをえなくなりそうだ。
先月(2015年10月23日)にソチでの会議で演説したプーチンは、空爆の目標とクルド人に対する意図を次のように表明していた。
「テロリストたちを、穏健派テロリスト、非穏健派テロリストと分けられないだろう。シリアにいるテログループを破ることはすべての問題を解決することにはならないが、しかし政治的解決に必要な条件を整備することにはなる。シリアで政府軍とクルド軍は、テロとの戦いで、力を合わせるべきだ。シリアにおける空爆はそのために貢献する。」
■アサドを守ること
ロシアは、西側とともに解決策を論じるテーブルにつく準備をする一方で、手にするカードをより強いものにしようと努めている。
今言えることは、プーチンは、アサドを強くし、西側のいう「反体制穏健派」を壊滅させ、彼らを交渉のテーブルにつくことを阻止しようとしている。PYDのクルド人らをアサド体制内に組み込みつつ。イランはというと、バグダードとレバノンのヒズボラ戦線の強化を意図している。これにより、新たな中東地図のなかで、より大きな勢力となることを目指している。
■シリアとクルド人
PYDがシリアのアサド政権と連合するかどうかに関しては、様々な見方がある。バスハベル紙で状況分析をした、中東専門家のカワ・バベクハーニーは、ロシアは単に力の誇示のための中東に介入したわけではなく、ロシアは、イランとRojavaのクルド人の力を借りてアサド政権強化を目指している、と述べている。バベクハーニーによればアサド政権の強力化は、クルド人にとっては脅威であるという。Rojavaのクルド人は別の戦略をとるべきだと論じた。
「トルコ・ロシア対立」として現れている現在の危機は、実は、非常に多面的で混乱した対立関係を、我々の目の前に提示する。今こそ、データを慎重に検討し、正しい評価をすることが重要な時である。
この記事の原文はこちら
翻訳者:トルコ語メディア翻訳班
記事ID:39250