Murat Yetkinコラム:トルコの戦略的袋小路
2016年01月08日付 Radikal 紙
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下のアナトリア通信の写真ではヘリコプターで窓から見る第3イスタンブルボスフォラス橋(ヤヴズ・セリム橋)についてビナリ・ユルドゥルム交通運輸相に尋ねるアフメト・ダヴトオール首相を見ることができる。
首相は数分後にヘリコプターから降り、車と鉄道で繋がる世界最大級の橋が夏に開通することを国民に伝えることになる。
ダヴトオール首相が建設現場を視察して情報を得た数分後、まだ完成していない第3橋の下を通ってロシアの最重要戦艦の一つが黒海に入る。
ロシア黒海艦隊の旗艦、ミサイル巡洋艦「モスクワ」は(写真を撮って記録するアマチュア軍事評論家のヨルク・ウシュクの計算によると)105日前にも黒海からマルマラ海へ、そこからチャナッカレ・ボスフォラスを通ってエーゲ海へ渡り、地中海向かっていた。
任務はシリアのタルトゥース海軍基地を強化し、パッシャール・アサド体制を支持するためにラタキヤに駐屯するロシアの航空隊を保護をすることだった。
トルコのF-16がロシアのS-24ジェット機をシリア国境を侵略したとして撃墜した時も、モスクワはシリア領海にいた。その後ロシアのヴラジーミ ル・プーチン大統領が必要があればシリア上空に入るトルコの飛行機を墜落させるためにS-400ミサイルをシリアに送った時もだ。
トルコは1936年のモントルー条約により、ロシアのシリア作戦を止めたくても、ボスフォラス海峡からの供給網を築くことに対して対策をとることができな い。(モントルーが変更されるべきと信じているためこのことは言わないが、反対に、触れられないことがトルコの戦略的利益になっているのだ。勝手な想像だが。)
まさにこの「モスクワ」が第3橋建設の下を通って黒海の基地に戻る数分前にダヴトオール首相は記者たちのイラクのバシカでの衝突に関する質問に答えていた。
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朝方、イラクとアメリカからの強い「撤退」要請にもかかわらずバシカに残ったトルコ部隊はイスラム国の戦闘員たちの攻撃に遭い、衝突によってタイイプ・エルドアン大統領が発表した通り18人の戦闘員が殺された。
エルドアン大統領同様、ダヴトオール首相も、つい2日前には、イラクのハイダル・アル・アバーディ首相との電話会談で、「許可を持たない」トルコ兵士をイラクから撤退させるよう発言したことをメディアに公表したアメリカのバラク・オバマ大統領に回答するかように、この事件はなぜトルコ兵士がそこに残らなければならないかを示していると述べた。
ダヴトオール首相はモースルが今後イスラム国から「救われた」後は、もはやそこに残る必要がないと述べた。本来の目的はイスラム国とPKK(クルド労働者党;非合法)の攻撃に対してイラクの土地の一体性を守ることだったのだ。
上はアメリカとイラクの反発により一部の部隊がバシカから撤退する際に撮られた写真である。
アメリカとEUはこの地域でイスラム国しか見えていない。ロシアはこの地域でイスラム国だけでなく、アサドを守る必要性を感じている。イランも同様だ。 サウジアラビアはアサドとイランを気にしているが、アメリカや、一時的にイスラム国をも気にしているように見せかけている。トルコは、この地域でアサド、 イスラム国、PKKを気にしている。
戦略的行き詰まりを見せているのは、地域の主要アクターの中でのこの見方の違いによる。
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例えばエルドアン大統領がサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドゥルアズィズ国王と高等戦略協力会議を設立する決定をとった3日後にスンナ派世界の代表であるサウジアラビアとシーア派世界の代表であるイランの間で深刻な関係悪化が始まった。
ダヴトオール首相は政府が今のところこの関係悪化とは関わらないように努めているが、問題はこれでは終わらない。
国内ではPKKがますますアンカラの頭を痛めている。
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作戦が長引くほど、民間人の犠牲者が増えるほど、人権侵害の主張が増えるほど、ダヴトオール首相はこの問題のEUとの関係の側面をも考え始めた。
シリア難民を止める必要性から再び出て来たEUとの接近の可能性は、今再びテロの側面で加熱しているクルド問題により、接近開始前から雲行きが怪しくなっている。
その上トルコ・EU関係においてはキプロス問題も当然ある。
政府はEU派遣団との会談の開始が予定されている3月より前にこの問題を終わらせようとしているが、全て予定通りには行かない、全地域が問題百出の状態では。
上のAFP通信の写真はインジルリキ基地から飛び立つドイツトーネードジェット機である。昨日初めてシリア上空で飛び始めたと明らかにされた。
その写真はトルコがイスラム国からイラクまで重要な件でアメリカとEUの同盟国と対立したにもかかわらずなぜ主要アクターであり続けるのかという質問への答えの一つだ。
事態の展開について各自がこれほど違う見方をしている一方、トルコを排除して、トルコを無視して結果を得ることができないことは自明だ。
正直簡単な状況ではない。
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翻訳者:南澤沙織
記事ID:39600