現政権は、単独与党になってまだ3カ月もたっていない。しかし、外交では破綻し、内政においても治安・安全政策が破綻している。
トルコは、現政権の受け入れがたい誤った政策の結果、シリア政策でクルド民主統一党(PYD)と「象徴的な」PYDの軍事部門とされているクルド人民防衛隊(YPG)に敗北を喫している。
PYDとYPGとの戦闘は、本来、アメリカ政府向けられたものだった。「わたしか、あるいは、彼か」といった形で、「外交政策の舞台」で進められた。そして、その舞台でアメリカ政府に負けた。
大統領、首相、外相は、しばしアメリカ政府に対し、「PYD、YPGはPKK(クロディスタン労働者党;非合法)である。テロリストである。私かあるいは彼か」と言った。アメリカ政府はというと、国務省報道官を通じた「私たちはそのように考えていない。シリアでの同盟者である。支援を継続する」との発表を通してアンカラ政府に異議を唱えた。
アメリカ政府とPYDとYPGに関して続いている議論は、アンカラで最近起こった大きなテロ攻撃により無責任に利用されようとした。事件現場で立ち上る煙がまだ消えない前に、アフメト・ダウトオール首相は、世界で最も未熟な首相から予想されない性急さによって、ひどく信憑性のうすさを露呈し、「犯人はYPGである」と会見をした。
事態の深刻さと失われた生命の痛みを伴って行われた厳粛な会見と全く関係のない、アメリカ政府に向けた「さあ、彼なのか私なのか」という意味の、未熟で、「プロパガンダの戦争」という性格を帯びた会見を行った。
大統領はというと、「誰かが何と言おうと、YGPである」と口を挟ませない語り口で、「信憑性のうすさ」を強めた。
アメリカ側は、まずは国家安全保障問題担当副補佐官が、次に外交官ジョン・カービーが、次に別の報道官であるマーク・トネルが、ダウトオール首相の発表した「情報」を「信用できない」、「YPGへの態度は変わらない」と発表し、アンカラ政府の立場を共有できないと明らかにしている。
最後にホワイトハウスは、一昨晩実現したオバマ・エルドアン電話会談に関する「メモ」を、トルコが発表していない内容を発表した。オバマ大統領がシリアでのイスラム国との交戦について特に述べた「メモ」が、アンカラ政府によって省略されており、それは次のとおりである。
「オバマ大統領は、YPGがこの地域(アレッポ北部)において条件を利用して新たな領土を拡大しないことはしないと強調する一方、トルコもこれを受けて節度を示し、砲撃を終えるよう求める。」
もちろんこの「メモ」がホワイトハウスのサイトで公表されたときに、YPGが、ラッカ・モースル間にあるシェダデという名の、対イスラム国の軍事作戦の点から価値のある都市を、アメリカの支援で奪取したことが伝えられたことも書き加えておこう。
この間に海外メディアは、アンカラでのテロ攻撃に関する外務次官フェリドゥン・スィニルリオールが西側の大使に提供した「事件の裏にはYPGがいるというのを証明しようとした」文書でYPGの関する具体的な証拠を提示しなかったことを、スィニルリオールと会談した大使からの情報で公表した。
管理されたトルコメディアに、攻撃の背景に関して与えられ公表された「情報」は、すべて「勇敢さを求める一方...」という呈である。何日もかけて準備された攻撃を防げなかった「組織」は、アンカラの中心部で28人がバラバラにされた後に、攻撃の「背景」に関して、「瞬時にして詳細な情報」を提供した。実行者に関するほぼすべての「個人情報」を含めて。
まさに「治安・安全策の弱点の露呈」しただけである。
さらに致命的なのは、このように「治安・安全策の弱点」の責任者たちが、テロリ ストの攻撃を利用して、今後似たような攻撃に対してこの国を無防備にさらしているように見えることだ。
この国の野党が何もできないならば、首相と内相に「質問主意書」を提出することはできるだろう。
おかしなことは、政権が「犯人」として宣言した「YPG」とその「政治的な代表者」として知られるPYDは、事件への関与を否定しているだけにとどまらないことである。アメリカは、「彼らが犯人であるとい信じられる証拠はない。彼らへの協力関係を続けていく」と述べている。またこの間に名前の挙がった「犯人」の家族がいるロジャヴァのアムデという町から来た情報では、その名前の家族メンバーはおらず、その名前の人物は一人だけいたが、彼も60歳で他の都市に暮らしているとという。
さらにクルディスタン解放の鷹(TAK)も出てきた。名前とニックネームと写真を公開して(写真はフォトショップによるものという噂もある)、テロ攻撃の実行犯を公開した。本当なのか。TAKがテロを起こしたのか。可能性はある。
これらの他に、アンカラでのテロ攻撃の背後には、-場所、時間、対象などから- ロシアあるいは他国の諜報機関が存在すると想定しうるのだろうか。
もちろん可能性はある。そこらあたりの若者の仕業とは思えない。ダウトオールが主張するように、実行犯が身元に関して疑いのある24歳のシリア出身のクルド人サリフ・ネジャルであっても、あるいは、TAKが主張するジナル・ラペリンというコードネームのヴァン出身のアブドゥルバーキー・ソンメズであったとしても、あるいは、そのほか誰かであったとしても、テロ攻撃の決定と計画がある国家権力によって行われたと考えるのは理にかなっている。
アンカラでのテロ攻撃がシリアでの内戦の展開とアンカラ政府の政策とそれぞれ関連があることについては誰も疑いはないはずである。
この問題について、サヴァシュ・ゲンチ教授の示唆に富む意見がある。
「どこから見てもトルコ軍を標的とした、直接シリア問題に関連のあるテロであることは明白である。しかしテロ攻撃の張本人は、諜報機関と治安維持機関である。テロリストが外国からやってきたとしても、問題はトルコの内部にある...。これほど大きな治安維持上の弱点に対して、だれも辞任せず、責任の所在を明らかにしないで、トルコ軍をシリアに大胆にも派遣しようとする考えは、この国にとって有益なのか。トルコ軍に対して世論の圧力をかけようとする政権寄りのメディアの記者たちの意図は私に大きな疑問を抱かせ、爆発からまだ数時間しか経過していないのに軍をシリアに派遣することが必要だと訴えるのは、国に名を借りた冷血な意思の表明と記憶された。アンカラ政府に復讐しようと計画し、トルコが地域的な勢力であることを恒久的に葬りたい演者たちはシリアで戦争に入ったトルコに瞬時に仕返ししようと努めるだろう。
つまり、11月24日にロシア戦闘機の撃墜は、実際はトルコに仕掛けられた「罠」であったように、2月17日のテロもトルコを「軍事的にシリアの泥沼にはめるために作られた罠」でありえるのか。
シリア内戦に介入することはトルコを荒廃させると、恐らくこの意思を持つ者たちは考えていない。「私の後はいかなる災いが起ころうと勝手」という意識の持ち主は、まさに専制君主が孕むウィルスである。
数カ月のうちにロシアと「敵対関係」、イランと「不仲」になった。
ロシアとシリアでの戦争に挑めない一方、戦争に突入するため俗な熱意を抱いているのは逆説的である。
この間にも内戦に介入しないで採られている今日の政策に、国連のシリア代表スタッファン・ドゥ・ミストゥラは耐えられずに「トルコはシリア介入しようと努めている」と言って批判した。NATOは、トルコとロシアが衝突した場合、支援しないことを明確に感じさせている。現政権が単独政権となって3月もたっていない。外交は破綻している。内政では治安・安全政策が破綻している。これ以上何が残っている。
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翻訳者:新井慧
記事ID:39894