手記:「注射センター」実施に向けた準備
パルヴィーズ・アフシャール(麻薬対策本部報道官 兼 次長(麻薬需要抑制・市民参加拡大担当))
革命最高指導者が発表した「全面的麻薬対策総合政策」にもとづき、麻薬対策本部は主要な優先課題として、いくつかの政策を検討してまいりました。私たちが最も重要と考える課題は、まず第一に麻薬へのアクセスを減らすために供給をブロックすることです。
次に麻薬対策本部が課題としているのは、麻薬常習者の治療です。〔麻薬常習者の完璧な〕治療が容易でない場合は、麻薬常習者が抱える問題を軽減させるためのハーム・リダクション・プログラムが検討されます。そして治療後、改善の見られた麻薬中毒患者に対してリハビリや就業〔支援〕、および社会的サポートが行われます。
これらの対策は総じて、病気の再発を防ぐためのものであり、そのためにハーム・リダクションに向けて一連の施策が検討されています。これらの施策では、ブプレノルフィンやアヘンチンキ、メサドンを使った維持療法〔※オピオイド依存症にかかった患者に対して、メサドンなどのより危険性の少ないオピオイド薬を長期的に使用して、依存症の軽減を目指す治療法〕から、路上にたむろする麻薬常習者に対する傷の手当てや相談、教育、注射器や注射針の配布などのサービスの提供、そして麻薬常習者向けの「一時的ハーム・リダクション・センター」(DIC(ドロップ・イン・センター))の設置まで、さまざまなサービスが提供されることになります。
ハーム・リダクション・センターを設置する目的は、〔‥‥〕実のところ、麻薬常習者の危険な行動が本人、そして彼の周辺の人たちに深刻な被害をもたらすことがないようにするためです。つまり、麻薬常習者が注射を通じてHIVや〔C型〕肝炎ウィルスにかからないようにし、また彼がこの病気を他の常習者にうつさないようにするためなのです。
〔麻薬常習などを抑制・軽減する〕ハーム・リダクション・プログラムは79年から90年〔西暦2000/1年から2011/2年〕にかけて、国内で拡大され、注射使用の麻薬常習者に占めるエイズ患者の数はイラン国内では劇的に減少しました。
83年〔西暦2004/5年〕には、エイズに罹患していることが判明した患者のうち、約65%は使い回しの注射を通じてHIVに感染していましたが、現在では確認されているエイズ患者のうち、HIVへの主な感染原因が注射を通じた麻薬常習だったのは40%以下です。そしてこの数字は、ハーム・リダクション・プログラムが効果を発揮したことを示しているのです。
つづく