Unal Cevikozコラム:モースル作戦に参加すること、しないこと

2016年10月20日付 Hurriyet 紙
モースル作戦に加わること、加わらないこと、本質的な問題はなにか。

大規模なモースル作戦がついに始まったが、トルコは満足していない。

作戦が始まったからではなく、その中に参加していないがために、一つの不幸という波が、国を襲っている。

トルコにおいて人々の幸福を図る係数が日に日に落ちている昨今、「戦争ができないから不幸だ」と思わせる状況が、どうして、この欲求不満な気持ちを私たちにいだかせるのかを明らかにすることは意味があるだろう。

有志連合軍はシリアにおいて、ISと戦っている。シリアで、その名を後に「シリア征服」と変えた「アル・ヌスラ」テロ組織もIS同様に標的である。国連安全保障理事会の2254番目の決定は、シリアでの停戦を確保したが、ISとアル・ヌスラというテロ組織は停戦の枠外に取り残された。このため、シリアにおいてISとアル・ヌスラと戦っている全ての当事者には、合法的で、正当な根拠がある。

トルコにとって、このことを認めることはとても時間を要したが、ついに今年の8月24日以降トルコは「ユーフラテスの盾」という作戦を始め、有志連合のシリアでのテロとの戦いに実質的な貢献を陸上から行うことを始めた。

一方で、ISとの戦いは、ただシリア国内だけでなく、イラクとシリアの国境が曖昧な地域においても行われている。イラク政府は、この戦いを自国軍だけでもって続けることを2年以上にわたって計画している。この問題に関して、アメリカとも緊密な協議が続いている。

このため、2つの別々の国で続けられているISとの戦いは、2つの異なる法的、政治的、そして、軍事的枠組みに依拠している。

この戦争の一般的な軍事戦略について述べると、これも長い間考えられていた計画は、イラクにおいて、「大モースル作戦」の開始とともに、ISを西へ向かってシリア領内に撤退をさせることを強いるというものである。シリアで、彼らと強力に戦うような勢力を作り出すこと、その勢力を助けること、このように、ISを包囲して消滅させることである。

しかし、シリア政府は、有志連合を、このような意図を持っていること、そして、シリアへ逃げるために、ISに回廊を開いていると批判し、そして、モースルから逃げてくるIS勢力がシリアへ来ることに激しく反対することを今から述べている。シリア政権もISと戦っている当事者のうちの1つであるため、この対応に対して抗議することは不可能である。

しかし、ただこの態度だけでも、ISがシリア・イラク間の基盤において作った混沌が短期間では終わらないこと、そして、モースルにおいて始まる作戦が長く続き、地域紛争へと化すであろうということ兆候を示している。

トルコ共和国は、しっかりと根の張った、国家の伝統が強固な一つの歴史的遺産の上に建国され、国境ははっきり決められている。創立者達によっても、隣国に対して、いかなる拡張主義的な欲求をしないこと、そして、彼らの土地に目をつけるような国家ではないという保証が与えられた。

それにも関わらず、トルコが旧オスマン領において、軍を駐屯させること、そして、軍を作戦に加えることは、常に隣国において、疑い深さを持って対応されていた。この疑いは、トルコが外交政策において、中東における秩序形成の意欲が前面にでてくると、さらに、増加した。

トルコの「ユーフラテスの盾」作戦に対して、シリア政府が声を高めなかったとしたならば、それに関しては、トルコの正しさを示す正当性を、ロシアがシリアに上手く説明をしてくれたという点で重要な役割を果たした。

イラクにおいてはというと、トルコが求めている正当性をイラク政府にはっきりと説明するような同盟者を見つけられないことが分かってきた。バグダードにある政府がモースル作戦に誰が参加するかということに関して決定する自由に対して、国際社会はいかなる異論もしないように見える。状況がこうであると、トルコがモースルにおいて戦争できない理由も現れてくる。

トルコはこのため、失望している。「戦場において、軍として存在できないことは、平和交渉のテーブルにつけないという道につながる。」という心配が、失望の代表的な原因とを作り出している。

しかし実際には、モスク作戦後の状況に関し、政治的な検討を行うパリ会議には、トルコは招待されている。アメリカ国防大臣もトルコを訪れ、モースル作戦が、もともとどれだけ複雑で、そこから抜け出しがたいバランスの産物であるかを説明することになっている。

重要なのは、トルコが、なぜこれほど憂慮するのかを、アメリカや、トルコの隣国、さらには、国際社会に明確に説明できるかどうかである。このために、シリアの奥深くへ戦闘しながら入り込む必要はない。イラクで、モスク作戦に加わる必要も、だ。ただただ、トルコが、イラクとシリアの国境線にそって、自国の安全を脅かす展開だと思うような出来事を認めることはできないとさえ、説明さえすれば十分だ。これが、もっとも力強く説明される言語は、トルコで、昨今、次第に使われなくなっている「外交」という言語である。

世界は、次のことを知らねばならない。すなわち、トルコはこの地域の国境を接する隣人との問題を、国際的な条約により、すでに終わらせている。その条約を作り出した秩序を、トルコの国境の外、しかし、国境のすぐそばで、改めて作り出そうとする行為は、トルコに直接に係わってくる。これには、トルコは反発する。

トルコが隣国に輸出することのできるもっとも重要な宝は、戦い、そして問題を軍事的方法で解決することではない。その宝とは、世俗主義的で、民主的な、社会的法治国家モデルである。これを与える力を持っていることを示すことができ、また、トルコ国内の平和と安定をこの価値のもとに組み立てることができたなら、トルコは、イラクでも、シリアでも、また、中東中でも、「望まれない国」として見られることがなくなる。

必要な時がきたなら、モースル作戦後に用意されるテーブルに、トルコが最も重要な貢献をする国であることが、明らかに理解されるだろう。それは、トルコが自分の立場をどれだけ、うまく説明できたかによるのだが・・・・。


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翻訳者:岩渕麗奈
記事ID:41447