Verda Ozerコラム:モースルで、トルコは何を求めているのか
2016年10月22日付 Hurriyet 紙
ヴィクトル・ユーゴーの有名な言葉がある:「世界中のどの軍隊も時に適った考えにはかなわない。」時が来れば何者もそれを止められない。トルコにとってのモースル問題もまさにその通りだ。
トルコは、モースルに関して国際法に基づき、拘束されている権利がある。これまで使ってこなかったこの権利を使うべき時が来た。しかしここで言っているのは軍事力を行使することでも、土地の奪い合いをすることでもない。
まず簡単にこれまでの経緯を説明しよう。モースル問題がローザンヌで解決できず、当時の国連である国際連盟が報告書を発表した。報告書はモースルはイラクに残すとした。しかしここに住む人たちの文化的権利・私的所有権を守るという条件で、だ。そしてトルコとイギリスの間で「係争地域」と宣言されて、だ。
これは「モースル地域は地理的、また人口的観点からトルコの方が近い」ということを根拠にしたものだった。事実、今北イラクであるモースルは主にアラブ人ではなく、クルド人とトルクメン人から成っていた。
イラクは1932年に独立を宣言した際、この条件に従うことを表明した。独立文書の9条と11条ではトルクメン人とクルド人に母語教育を受ける権利を与えることを保証していた。また、彼らが多数を占める地域ではトルコ語またはクルド語が分かる役人を置くことも、だ。さらに、これらの地域の統治者たちをトルクメン人またはクルド人にすることも、だ。
この通り、トルコとイギリスはこの「係争地域」の関係者としてある程度の権利がある。つまりトルコはこの件に関して発言権をもつ方法がいくつかあるのだ。
まず一つ目は、テーブルにつくことだ。モースル作戦は、数週間、あるいは数ヶ月間続くだろう。しかし実際はその後の方が重要だ。現時点でメディアに載る報道によると、モースルは8つの異なる地域に分けられる。では、この地域や統治方法は誰が決めるのだろうか。
トルコも国連の資料にもある権利に基づいて決定を下す交渉の席につく必要がある。
■国民投票
トルコ政府の2枚目のカードは、モースルに住むトルクメン人とクルド人の文化的権利の問題だ。国際法によるとこの権利を保護する責任があるのはイラクだ。しかしトルコは、もしこの権利が反故にされるとする決定に至れば、このことを国連で議論に持ち込むこともできる。
モースルに関してトルコに発言権をもたらしうる3つ目の問題は、私的所有権だ。特にサダム時代にモースルに住んでいたトルクメン人とクルド人の財産が差し押さえられたのは明らかだ。トルコ政府はこれが返還されるよう再び国連に申請をすることができる。
国際法に基づくトルコのもうひとつの権利が国民投票だ。
ムラト・ソフオール氏は、2007年以降モースル問題を扱っている法律家だ。過程調査センターの責任者でもある。ソフオール氏は「イラクの不安定さが増せば、 もしくは分裂のリスクが明確になれば、トルコは国連にモースルの地位について国民投票を行うよう要請することができる」と言う。
つまり、モースルの人々に「イラクに属したいですか、トルコに属したいですか。もしくは独立したいですか」と問うことができる。ただ、ことはそんなに簡単ではない。ソフオール氏は「今の条件でモースルの人々はトルコに属したいと思わない」と言う。なぜならそもそもそこに住むクルド人、アラブ人、ヤズディー教徒はトルコ語を話すことを望まないかもしれないからだ。このため大きな衝突が起きる可能性がある。
ソフオール氏は「このためその過程に移ろうとするならば、モースルの人々に別の枠組みを提案する必要がある。トルコのシステムを変え、連邦制に移行する必要がある」と言う。これはトルコ政府の選択肢にないため、国民投票は今のところ行われる予定がない。
■モースル州システム
それではトルコが使える最後のカードの話に移ろう。つまりモースルもトルコも中東で歴史的な地位につける機会の話だ。その名は「モースル州システム」だ。つまりオスマン時代に適用された統治モデルだ。
政治経済学の創始者、タルク・チェレンキ氏は、2007年からモースル問題に取り組む社会活動家だ。チェレンキ氏が主張するこのシステムによると、モースルはそこに住む全ての民族と宗派を代表するいくつかの地域に分けられる。そしてそれぞれの地域内で生活や統治の形を決めることができる。これは、イラク、シリア、 レバノンといったばらばらになってしまった国の解決モデルとなりえる。
トルコはオスマン政府が適用したこのモデルを国連の議題に持ち込むことができる。こうしてモースルのスンナ派やトルクメン人以外のグループの代表には柔軟な力を使ったことになる。こうすることで「スンナ派とトルクメン人だけの保護者」と見られるのを防ぐことができる。また、地域のクルド人への前向きなアプローチとなる。さらに、トルコ政府に反対するシーア派反体制派を少しでも挫くことに繋がる。
しかしこれら全てを行うためには私たちの悩みを世界に、特にモースルに影響力を持つ国々に説明する必要がある。つまりアメリカやイラクを始め、地域の関係諸国に、だ。地域では戦闘がますます激しくなっている中、交渉で解決することが条件だ。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
翻訳者:南澤沙織
記事ID:41469