Abdulkadir Selviコラム:死刑と大統領制に関する新たな局面
2016年11月08日付 Hurriyet 紙
エルドアン大統領とMHP(民族主義者行動党)のバフチェリ党首の会談後、大統領制と死刑制は新たな局面を迎えた。
「死刑を規定する法案あるいは提案がトルコ大国民議会(TBMM)に提出された場合、MHPはそれに応じる」というバフチェリ党首の主張は、死刑制に関する議論の方向を転換した。死刑導入の可能性が高まった。
死刑は誰のために導入されるのだろうか?
1- フェトフッラー・ギュレンとクーデター参画者
2- オジャランとクルディスタン労働者党(PKK)所属のテロリスト
MHPはオジャランについての考えを当初から明確にしている。バフチェリ党首が、フェトフッラー・ギュレンとオジャランを、また、7月15日のクーデター計画とPKKのテロ攻撃を別物と見ていないことは知られている。
しかし、さらにバフチェリ党首は警告も行っている。
彼は政府に死刑廃止の国際的潮流を考慮するよう求めている。
死刑制に関して公正発展党では見方が2つに割れている。
1- 7月15日(のクーデター未遂)は1つのプロセスである。連携する犯罪としてギュレンとオジャランには死刑判決が下る。
2- 死刑が導入されたとしても過去の犯罪に遡って適用することは出来ない。
■死刑を導入しても執行はできないし、EUからもNATOからも排除される
どちらの意見においても真剣な議論が行われている。10月31日に大統領が議長となって開かれた閣議でこの問題が取り上げられた。内閣はエルドアン大統領と方向性を同じくしている。しかし異なる見方からの議論がないわけでもない。
「死刑が導入されたとしてもオジャランもギュレンも処刑することはできない。なぜなら死刑は過去に遡ることができないからだ。死刑を導入したところで執行はできない。さらに我が国のイメージも崩れる。私たちは欧州議会からもNATOからも排除されてしまうだろう。」
この意見に関し、大統領は、「どうやって我々をNATOから排除しようというのか?アメリカ合衆国には死刑があるではないか」と反論する。アメリカの法制度では当初から死刑が保持されているが、トルコが支持するEUの法律には死刑が存在しないという議論がある。
何か決定されるだろうか?死刑に関して未だ下された決定はひとつもない。また、公正発展党の一部の法律家たちは、オジャランには死刑が適用されうるがギュレンには適用されないという意見をもっている。さらにこれと真逆の見解の者もいる。ギュレンに死刑が適用されると主張する者たちは、7月15日クーデターに関するプロセスは間断することなく続いているという見解だ。オジャランにのみ適用されると言う者たちは、過去の罪に対し死刑を適用することはできないという認識である。PKKの新たな活動においてオジャランの指示が確認された場合にオジャランは再び審理されるだろうと言われている。ご覧のように、解決が難しい問題である。
オジャランに死刑判決が下された当時、MHPは連立政権の一翼を担っていた。その後、エジェヴィト元首相を議長として開かれた7時間半におよぶ会議で、崇高な国益を理由に、バフチェリ党首は政権の意見(訳注:平和時の死刑廃止のこと)に従った。政治的な埋め合わせをしたものの慎重にふるまっていた。
公正発展党の一部党員らは、ある疑問を抱えている。オジャランに死刑判決が下された時、MHPは連合のパートナーだった。あのときバフチェリ党首はオジャランを処刑しなかったのに、なぜ今これを提起したのか?
■MHP党員の期待に応えるリーダーシップ
死刑に関するプロセスといえば、私は次のような印象を抱いている。
急展開はないだろう。実際、エルドアン-バフチェリ会談以後、死刑制問題は優先的な議題から外れているようだ。このまま関心が薄れていくかもしれない。
大統領制については、バフチェリ党首との会談以後エルドアン大統領はまだ見通しを発表していない。エルドアン大統領とビナリ・ユルドゥルム首相が相談してスケジュールを決めることだろう。今週中にはこの件も決着をみるだろうと見込まれている。広い枠組みの変更というよりはむしろ「最も速い形で出される」制度となるだろう。
ここ最近、与党の行動とMHPの政治的見解は一致している。
PKKとの闘い、HDP(民主主義党)党員の逮捕、HDP支持の自治体への代理統治人の派遣、ユーフラテスの盾作戦(=ジェラーブルス作戦)と]モースル作戦… エルドアン大統領はこれらに関して、MHP党員の期待にも応えるリーダーシップを執っている。
さらに、エルドアン大統領とバフチェリ党首は、我が国が直面している状況を「継続的な問題」として見ている。
しかし公正発展党党員のなかにはこう疑問を抱く者もいる。「大統領制は二院制を基本としている。バフチェリ党首が首相になることはあり得ない。MHPには害となるこのシステムにバフチェリ党首がどうして肯んずるだろうか?」と。
懐疑は重要だ。しかしプロセスはもっと重要なのだ。
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翻訳者:金戸 渉
記事ID:41565