【イラン紙17面:事件部:マルジャーン・ホマーユーニー】「よいっしょ、よいっしょ」。ある男が大きな声で叫ぶ。雪原では赤い柄の付いたシャベルが目立つ。数名の男たちが雪を掘っている。その深さはすでに50センチを越えようとしている。雪の下から手が出てくる。他の手が、助けに向かう。雪がどけられ、若い「クーレバル」の遺体が掘り起こされる。その遺体にはいまだ、荷物を背負うためのロープが肩にかかっていた。
どの辞書を見ても、「クーレバル」という語にお目にかかることはない。国境付近の街の住民でもない限り、「クーレバル」という語を知ることはないだろう。しかしこの未知なる語「クーレバル」が行っている仕事は、おそらく国境付近に住む人々が稼ぎを得ることのできる、限られた手段の一つなのである。
※訳注:「クール(kul)」とは「肩」の意で、肩に背負う大きな荷物のことを「クーレ」、それらを運ぶ人たちのことを「クーレバル」(「バル」は「運ぶ」の意)と言い、彼らは地続きの国境を越える密貿易に従事している。
冷蔵庫、テレビ、何ガロンものガソリン〔※1ガロン=3.7〜4.6リットル〕、軽油などなど、〔クーレバルたちにとって〕違いはない。何であれ、それはこれらの男たちの背中に自らの居場所を見つける。そして男たちは食い扶持を得るために、道を進むのである。
有刺鉄線や〔イラン・イラク戦争の時に埋められた〕地雷原を乗り越え、ぬかるんだ地面を進み、進むのも困難な難所を登り、山を越えて道を下り、国境警備官たちの目を盗む。荷物を背負うためのロープが首に巻き付き、窒息しそうになることもある。これらはクーレバルたちが付き合わねばならない危険の一部である。地元民らが言うには、彼らは自らの命を手のひらに載せるがごとく、命がけの仕事をしている。しかしこれらすべての危険に直面して得られるのは、たったの5万〜10万トマーン〔※日本円で約1600円〜3300円〕にすぎない。そしてこの稼ぎで、彼らは自身と家族の生活をまかなうのである。
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つづく