Murat Yetkin コラム:訪米で直面する、エルドアンの重要な選択
2017年05月12日付 Hurriyet 紙
タイイプ・エルドアン共和国大統領は、5月12日、中国訪問に出発する際の発表で、中国よりもアメリカを重要視した。
なぜなら、本当の問題はアメリカとの間にあるからである。
エルドアンは、中国から直接飛行機で移動し、5月16日にアメリカ大統領ドナルド・トランプ氏と面会する予定だ。
この会談決定はそんなに簡単ではなかった。
トランプ氏が2016年11月に選挙で勝利した際、初めてのお祝いのメッセージを送った首脳たちの1人であったエルドアン大統領だが、それから何の反応もない期間が続いた。
トランプ氏は、1月20日から公式に職務を始める前後に多くの首脳陣と会談し、何人かを招待した。エルドアン大統領とも最初の電話会談を2月8日に行った。前々からエルドアン大統領は、世論に向けてトランプ氏との会談を望んでいることを公に述べていた。
会談で取り上げたい2つの基本的な議題があったが、その後、3つ目が加えられた。
1つ目の議題は、シリアのラッカ街をISから奪還する作戦でアメリカがPKKの部隊であるYPD/YPGと共にではなく、トルコと共に参加することである。
2つ目は、2016年7月15日に、流血もたらしたクーデター未遂事件の裏側にいたフェットフッラ―・ギュレンとその秘密組織に対して、受け渡し、もしくは最低でも法的措置を始めることである。
そして加えられた議題は、レザ・ザッラーブ氏である。エルドアンは、ザッラーブ氏がトルコ国民であることを主張し、アメリカからの帰還を求めている。
これまでにこの3つの議題は前進していない。
交渉とは別に、トランプ氏は、エルドアン大統領とベヤズサライ(大統領宮殿)で会談することを公式に発表する前日に、YPGにより多く、重火器を与えることを決定した。エルドアンは、YPGを離れるようにトランプ氏を説得するよう決めたように見えるが、会談があるまで、もしくはそれと並行して軍事行動が開始される可能性がある。
共和国大統領は、中国を訪れる前に、トランプ氏との会談が、“一つの区切りではなく、ピリオドの段階にある”と位置付け、道しるべになり得ることを述べた。
これは、エルドアン大統領の要求が受け入れられなかった場合、アメリカとの戦略的関係が切られるということなのだろうか?
いずれにしても、トランプ氏とその背後にいるアメリカの外交官は、トルコ政府がこれに対する反応として、インジルリッキ基地、そして同時にディヤルバクルやバトマンの飛行場の使用を閉鎖するだろうことを計算しているかもしれない。
この意味は、インジルリッキ基地が―まるで1975年にあったような一時的な期間―閉鎖されることが、アメリカの観点ではラッカ作戦が一刻も早く始められることほど緊急で重要でないということである。
トルコの手中にある戦略カードは、残念ながら現状で使える戦術の材料に変わってしまったようである。
エルドアン大統領の中国滞在中、中国の首席習近平氏とロシア大統領ウラジミル・プーチン氏と行う3者会談は、トルコが西側から離脱し、または上海協力機構に参加するかもしれないという懸念をトランプ氏に抱かせるだろうか?
トランプ氏がこのような不安に駆りたてられているという情報は私たちにはない。
なぜなら、戦略計画において、トルコが共和国になるよりさらに前からその経済や社会システムは、西洋諸国と結びついているからである。つまり、アメリカとだけではなく、それよりもヨーロッパと結びついているのである。
戦略計画では、ISに対して陸軍としてYPG/PKKを使うことについてロシアもアメリカのように考えており、また中国もロシアを支持している。
また、エルドアン大統領も、例えば、インジルリッキの閉鎖が「トルコがISに対する戦いから退き、停止した」という方向でのネガティブキャンペーンを引き起こしうると考えているだろう。
エルドアン大統領はその経験上、政治において、トルコを西欧から離脱させることが、国や人々、政府に重大な経済的・政治的ダメージをもたらすことを予測しているであろうと考えられている。
このために、アメリカは、トルコの手中にはアメリカを揺さぶる要素がないと予測し、それよりもエルドアン大統領が来る前にYPGに歩みったとの結論にたどり着くことができる。
エルドアン大統領はトランプ氏との会談後にザッラーブ氏の問題について具体的な結果が得られるかもしれないが、この結果が、トルコにどのような利益をもたらすのかについては常に議論の対象となるだろう。
共和国大統領は、アメリカからどのようなかたちで戻ったとしても、5月21日のAKPの臨時総会で党首に選ばれ、党を新しくしようとし始めるように見える。つまりそこでも、一連の急進的な選択を行うことが問題となるだろう。
このように党は、与党が議会の過半数を取れるグループになり、政府の中で単独政権という状態を確立することにおいて重要な一歩を踏み出すだろう。
これは、エルドアン大統領の権力を増大させるが、一方で決定や選択の全ての責任をも彼に与えることになるのである。
今後は、5月25日にブリュッセルでNATOのサミットが、それに続いてEU関係者たちと行う会談がある。
次の2週間でエルドアン大統領は、一連の内外の決定をする。ほとんどを単独で決める決定は、トルコがこれからこのように進んでいくであろうといくこと、さらにはそれに関する強い示唆となるだろう。
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翻訳者:佐藤彩乃
記事ID:42651