Sedat Erginコラム:米土対立、なぜ、今回は違うのか?
2018年08月04日付 Hurriyet 紙
ついこの前、3週間前の7月11日にブリュッセルで開催されたNATO首脳会議の際に撮影された写真では、廊下でかなり親密な様子の米土両国指導者の姿が写っており、写真を見た者はトルコと米国の指導者の関係性は水も漏らさぬ緊密なものであると確信したものであった。
写真ではドナルド・トランプ米国大統領とレジェプ・タイイプ・エルドアン大統領が大親友しかしないようなやり方で双方の手を固く握り振っている様子が写っている。
この写真をくれたトランプ大統領は約2週間後、イズミールで拘留中の米国人アンドリュー・ブランソン牧師が裁判で釈放されなかったことに憤慨し、「米国はトルコに対し対抗措置を取る」ことを発表した。
トランプ大統領の言葉が脅しでなかったことは、先週水曜日にホワイトハウスと米国財務省は、ブランソン氏の逮捕に責任があるという主張によりスレイマン・ソイル内務大臣とアブドゥルハミト・ギュル法務大臣に対抗措置を下したと発表したことではっきりした。
エルドアン大統領の手を取り友人のポーズを取り、その後報復を行うと脅すこと、またさらには2名の閣僚に対し対抗措置の決定を承認したことから、米国大統領が逮捕について深刻に揺さぶりをかけていることを示唆している。
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先日の決定後に関係者はトルコ・米国間関係において亀裂をもたらした深刻な危機がどれほど深刻なレベルなのかを図ることに忙殺されている。
このため、以前起こった危機との比較を行っている。
過去の危機、例えば1964年のジョンソン書簡、1975年の米国議会が実施した武器禁輸措置、2003年3月1日付書簡事件、そして同年にスレイマニイェで起きた「袋」スキャンダル(注:2003年7月4日にスレイマニイェで米国により11名のトルコ軍人が拘束され、手錠と頭に「袋」をかぶせられて送致された事件。翌日にはグアンタナモに送致されるテロリストと同様のオレンジの囚人服と「袋」をかぶった状態で輸送された。)と今回のトランプの決定を比較しているのだ。
疑いなく、上記のどれもトルコ政府と米国政府の間で起きた大きな危機であったが、結果については過去のものと全く異なる次元が存在する。
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一つ目は、過去の危機のほとんどは単体の事件が原因となっていたことだ。
それに比べ今回の危機は多くの問題、不理解、非難がからまりあって複雑でコントロールできない状況が原因となっているのだ。
ロシアからS−400ミサイルを購入したこと、このため米国議会では次々に輸出禁止を含む決定がくだされたこと、フェトフッラー・ギュレンを引き渡ししないこと、ブランソン牧師の拘束、2名の閣僚への報復、シリアにおけるYPGへの支援、イラン禁輸措置、これらは問題の長いリストの一部でしかない。
二国間関係はこれらの問題の重みにより、つぶされている。
二つ目として、過去の危機と異なる点として今回の危機は明らかに米国政権がトルコに敵対する姿勢を示していることである。
過去の二国間関係においては米国側の問題の主なところは議会に起因するものであり、政権は常にトルコ側の立場に添っていた。
そして今回はトルコに対し、政権及び議会が一緒になって対峙している。
米国政権はこれまでブレーキ機能を発揮してきた「どうあってもトルコを敵に回すことはやめよう」といった形の(立ち入り禁止区域を示す)線引きを解除してしまった。
3つ目として、政権はさらに先へと進み、トルコを罰するという選択肢へ向かっていることだ。
トランプ政権は政治的・経済的切り札と圧力というカードを使い、トルコを追いつめ、望み通りの場所へ引きずろうと試みている。
同時にトルコ経済の脆弱性をも利用しながらトルコを屈服させようと考えている。
四つ目にこの政策を実行する際、米国側は自らの利益をも害することを理解しているようにみえる。
おそらくだが、危機のリスクが高まることにより彼らが手にする利益が、損害を相殺するだろうという目論みで米国政権は動いているのだろう。
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この危機はコントロールできないところに出てしまっているが、もし異なる陣営に分かれた二国の間で起こっているだけであるならば、ある程度のところで和解することができるだろう。
しかしこの分断は、同じ同盟関係の中にあり、最近まで相互に「戦略的同盟」と位置づけていたものの、実際はお互いに根本的に結びついた利益でつながった二国の間で起きているのだ。
このように全てを考察した場合、二国間関係は史上類を見ない危機の中にあるということだ。
また、この危機がどのように決着がつくか見通しがつく状況ではない。
見通しがついているのは、二国間関係が一定期間さらなる揺れにさらされ、両国ともが損害を受け続けるだろうということだ。
米国政権が意識的に差し向けた、この懲罰的政策を認めることは出来ない。
米国による報復の決定はトルコ世論において元々問題があった対米意識をさらに悪化させ、両国の距離をお互いにひどく遠ざけることになった。
これと同時にー両国においてー措置がどんな結果をもたらしたか、どんな計算違いをしてしまったのかについて現実的な評価を開始することが、この乱気流からの出口を見つけ今後さらなる大きな損害を阻止するために不可欠である。
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翻訳者:山口 南
記事ID:45185